カルネアデス3
Karneades3
  原作:虎之助様
続編:Tira
 

ランジェリーショップで

京子(藤堂)「なにしてんだよ、早く来いよ。」
藤堂(尾崎)「ま、待てよっ!」

オレは振り向いて、ボーっと見ていた藤堂(尾崎)に声をかけた。
顔にしなやかな髪の毛がさらさらとかぶさる。
オレはその髪を右手でかきあげた。

藤堂(尾崎)「おおっ!いいじゃないかその仕草。もう一回やってくれよ。」
京子(藤堂)「いいから。そんな事より早く行こうぜ。もうそこに見えてるじゃないか。」
藤堂(尾崎)「なあ、頼むよ。あと1回だけさ。すごくセクシーだったぜ。」
京子(藤堂)「ったく・・・仕方ないなあ。」

オレはわざと頭を下に向け、髪の毛が顔の周りに落ちてきた後、顔を斜めに上げながら
片手で髪の毛をすくい上げ、後ろに戻した。

京子(藤堂)「これでいい?」
藤堂(尾崎)「あ、ああ。何度見てもいいよ。その仕草。」
京子(藤堂)「そおかぁ。オレも後で鏡で見てみよっと。」

そんな事を言いながら、オレたちは横に並んで歩き出した。
目の前にランジェリーショップが現れる。
ガラス張りの店には、セクシーな下着が綺麗にディスプレイされている。
その奥には、何人もの若い女性が下着を選んでいる姿が見えた。

京子(藤堂)「・・・なんか入るの恥ずかしいなあ。」
藤堂(尾崎)「・・・ああ。」
京子(藤堂)「でも、今は京子の体だから別に入ってもおかしくないよな。」
藤堂(尾崎)「そりゃそうだけど。オレは男のカッコだしなぁ・・・とは言ってもやっぱり入りたいよな。」
京子(藤堂)「思い切って二人で入ろうか。カップルだったらそれほど怪しまれないだろうし。」
藤堂(尾崎)「ちょっとだけ待ってくれよ。心の準備が必要だよ。」
京子(藤堂)「それならオレは先に入ってるから後から来てくれ。」

そう言うと、オレはスタスタとガラスのドアを開けて中に入った。

藤堂(尾崎)「お、おい!先に入るなよっ!」

藤堂(尾崎)は、慌ててオレの後をついて店の中に入ってきた。
 
 

店の中を、心地よい女性の香りと柔らかい照明が包み込んでいる。
やさしい音楽が流れていて、なんともいえない気持ちよさが伝わってくる。
その雰囲気にはとても似合わない人物が荒々しく飛び込んできた。

藤堂(尾崎)「待てって言ってるだろっ。」

その低い男の声に、まわりの女性が振り向く。
尾崎を見つめるその視線はとても冷ややかなものだった。

藤堂(尾崎)「あ、いや。ま、待ってくれよ京子。一緒に選ぼうじゃないか。」

どこのおっさんか分からないような言葉を使いながら藤堂(尾崎)が近づいてきた。

京子(藤堂)「何やってんだよお前。そんな大声出したら変に思われるじゃないか。」

オレは小声で藤堂(尾崎)に話した。

藤堂(尾崎)「し、仕方ないだろ。お前が勝手に先に入っちゃうんだから。」
京子(藤堂)「考えてる時間なんて無いだろ。」
藤堂(尾崎)「そ、そりゃそうだけど。」
京子(藤堂)「だったら何も言わずにオレの後をついて来いよ。それにあんまりキョロキョロするなよ。
                  変態だと思われるからな。」
藤堂(尾崎)「わ、分かってるって。そうでなくても周りの視線が気になるんだから。」

藤堂(尾崎)は恐る恐る辺りを見回した。
どうやらカップルで来ている事が分かったらしく、ほかの女性は自分の下着を選んでいる。

藤堂(尾崎)「ほっ・・・助かった。」

「今日は初めてですよね。」

その声に、オレたちは一瞬ドキッとして後ろを振り向いた。
そこには、ニコニコしながらオレたちの方を見ている綺麗な女性がいた。この店の店員さんだ。

店員「今日は二人で来たんですか?」
京子(藤堂)「え、あ、はい。そうです。」

オレはとっさに京子の真似をして答えた。なかなかさまになっている・・・様な気がする。

店員「彼氏からのプレゼントかな?」

店員さんは藤堂(尾崎)の目を見つめながら話し掛ける。

藤堂(尾崎)「あ、いや・・・その・・・・」
京子(藤堂)「そうなの。今日はわたしの誕生日だからって、彼が好きな下着買ってくれるんです。」

無茶苦茶な事を言い出すオレ。

藤堂(尾崎)「何言い出すんだよ。オレそんな事一言も言ってないじゃないか。」
京子(藤堂)「そんなに照れなくてもいいから。」

オレは藤堂(尾崎)に、ニコッと微笑みかけた。

藤堂(尾崎)「・・・・そ、そう言うことです。」

単純なやつだ。
オレたちは店員さんに勧められるまま、いろいろな下着を見て回った。
藤堂(尾崎)も最初は緊張していたようだが、だんだん慣れてきたようで、
そのうち下着を手に持って、

藤堂(尾崎)「これなんかどうだ?」

などと言う始末。

京子(藤堂)「違うよ。わたしのほしいのはこういうの。」

オレはマネキンが着けていた黒いランジェリーを手に取った。
胸の上と股のところにはひらひらとしたレースが付いていて、
お腹から股にかけてはほとんど透けて見える。
ハイレグのワンピース水着を下着用に加工し、思い切りセクシーにした感じがする。

店員「そのランジェリー、すごくセクシーよ。一度試着してみる?」
京子(藤堂)「ええ。ねえ藤堂君。試着室の前で待っててよ。」
藤堂(尾崎)「ん?ああ。」

藤堂(尾崎)は、試着を見たそうな顔をしていたが、この状況では無理だと判断したらしい。
オレの言う事をおとなしく聞いて、カーテンの外で待っている。
店員さんに同じ物を用意してもらい、試着室に持って入る。

京子(藤堂)「こ、こんなのをオレが着るのか・・・」

オレは、初めての体験に少し興奮気味だ。
とりあえずオレは、着ていたTシャツを脱いで籠の中に放り込んだ。
そして、ジーパンと靴下を脱ぎ、下着姿になる。
目の前に映る京子の下着姿は相変わらずセクシーでかわいらしかった。

京子(藤堂)「やっぱり下着も取らないとな。」

後でホックを付けられるか分からなかったので、とりあえずホックが締まった状態で、
Tシャツを脱ぐようにして頭から脱いだ。

京子(藤堂)「こうやってホックを閉めたまま付け外ししたら楽じゃないか。」

ちょっと得意げになりながらパンティを脱いだ。
そして、いよいよこの黒いランジェリーを身に付けることにした。
両手で持って、片足ずつ通してみる。
そのままスッと太もも辺りまで上げたあと、股のところまで一気に上げた。
オレの太ももの周りを柔らかいレースの生地が包み込む。

京子(藤堂)「・・・・」

オレは何も言わないまま、すっぽりとお尻を包み込んだ。
キュッと締め付けられる感覚がする。
その後、お腹の辺りから胸にかけて、ゆっくりとランジェリーを引っ張り上げた。
とても薄い生地なので、お腹と背中の辺りがスースーする。
肩紐がないので、胸でかろうじてずり落ちないようになっていた。
胸のレースが柔らかく皮膚をさすって、くすぐったい感じがする。

京子(藤堂)「うわぁ・・・すごいな。」

黒いセクシーランジェリーに身を包んだ京子の体。
後ろ向きになって背中を覗き込むと、お尻まで透けて見えている。

京子(藤堂)「何てセクシーなんだ・・・」

オレはしばらくその姿に見とれてしまった。

店員「どうですか?サイズとか大丈夫?」

店員の言葉に、ハッと我に返った。

京子(藤堂)「は、はい。」
店員「ちょっと見てみましょうか?」
京子(藤堂)「あ、はい。」

オレは店員の言葉に、何気なく返事をした。

店員「失礼します。」

周りから見られないようにすばやくカーテンを開けて、中に入ってきた店員。

店員「まあ、なかなかお似合いじゃないですか。」
京子(藤堂)「あ、ありがとうございます。」
店員「でも、ちょっと体型を直したほうがいいですよ。」

そう言うと、オレのお尻を掴んで、ギュッとランジェリーの中にしまいこんだ。

京子(藤堂)「あんっ!」

オレは思わず声を出してしまった。

店員「かわいらしい声ね。」

店員は、矯正したオレのお尻を鏡に映して見せた。

店員「どう?お尻がキュッと締まって綺麗でしょ。」

京子(藤堂)「ほ、ほんとだ・・・」

確かにさっきよりもお尻が締まって綺麗に見える。

店員「胸ももう少し寄せた方がいいですよ。」

京子(藤堂)「ああっ・・」

店員はオレの後ろからランジェリーの中に手を入れ、脇の下にある脂肪を
胸のほうに集め始めた。
別に店員が意識的に揉んでいるわけではないのだが、鏡に映るその仕草を見ていると、
どうしてもオレの胸を意識的に揉んでいるように見えて仕方が無い。
それに胸を寄せるたびに乳首がランジェリーの生地に擦れて快感へと変化してゆく。

京子(藤堂)「あっ・・・あっ・・・ちょっと・・」

オレは思わず店員の手を掴んで、その動きを止めた。

店員「どうしたんですか?」

京子(藤堂)「あ、な・・何でもないんです。」

オレはどう言ったらいいのか分からず、この言葉を返すのがやっとだった。
とりあえず胸も寄せられたようで、オレの胸はランジェリーからはみ出しそうなくらい
大きく見えていた。

店員「胸も大きいし。この姿で彼の前に現れたらすごく喜ぶでしょうね。」

オレはなぜか顔を赤らめ、うつむいてしまった。

店員「どうしますか?このランジェリー購入されます?」
京子(藤堂)「は、はい。」
店員「そのまま着けて帰りますか?下着は紙袋に入れて差し上げますけど。」
京子(藤堂)「・・・そうだな・・・あの、そうして下さい。」
店員「はい、かしこまりました。」

店員は、着ているランジェリーに付いていた値札を、持っていたハサミで
切ったあと、さっきまでオレが身に付けていた下着を綺麗に小さく丸めた。

店員「紙袋に入れておきますので、お支払いの時にお渡ししますね。」

オレは、店員が試着室を出たあと、改めて鏡に映る京子の体を眺めた。
胸とお尻が強調され、なんともいやらしい雰囲気を漂わせている。

京子(藤堂)「う〜ん、この姿を早くあいつに見せてやりたいっ!」

そう思いながら、靴下を穿いたあと、Tシャツとジーンズを身につけた。

京子(藤堂)「おまたせ!」
藤堂(尾崎)「遅かったじゃないか。」
京子(藤堂)「まあまあ、そう言うなって。お前だって絶対に喜ぶから。」
藤堂(尾崎)「ほんとかよ。」
京子(藤堂)「ああ、何たってこの体にあのランジェリーだぜ。お前が見たらもう無茶苦茶にされそうだよ。
                  とりあえずさ、金払ってくれよ。」
藤堂(尾崎)「何だよ。お前が払えよ。オレの買い物じゃないんだからさ。」
京子(藤堂)「いいじゃないか。さっき払ってくれるって言っただろ。男に二言は無いはずだぜ。」
藤堂(尾崎)「ちぇっ・・・ん!待てよ。あ、そうか。どっちみちお前の体だもんな。オレが払うわけじゃないから別にいいや。」
京子(藤堂)「うっ・・・そうだった。まあ別にいいか・・・下着くらい安いもんさ。」
 

オレと藤堂(尾崎)は、店員のいるカウンターまで行った。
 

店員「15800円になります。」
京子(藤堂)「えっ!」

オレはあまりの値段の高さに、一瞬ひるんでしまった。
しかし、藤堂(尾崎)は何も言わず、オレの財布からなけなしの2万円をポンと支払った。

店員「お釣りが4200円になります。ありがとうございました。」

店員は、お釣りと一緒にオレが履いていた下着を入れたかわいい紙袋を差し出した。
それを受け取り、ランジェリーショップを出るオレたち。
雲を色づける真っ赤な太陽がやけに綺麗に見える。

京子(藤堂)「はぁ・・・なんて高いんだよ。女の下着って。」
藤堂(尾崎)「オレに言うなよ。オレだってそんな事全然知らないんだから。」
京子(藤堂)「そうだよなぁ。参ったよ。これが15800円なんて。」

オレはTシャツの襟元を引っ張り、中を覗き込んだ。
そこには、レースのひらひらが付いているセクシーなランジェリーに隠れている
大きな二つの胸が見えた。

藤堂(尾崎)「そう言えばお前、店に入る前より胸が大きくなってないか?」
京子(藤堂)「そりゃあランジェリー着ているからな。店員さんに胸が大きく見えるように
                  寄せてもらったし。」
藤堂(尾崎)「そうなのか!なあ、オレにも少し見せてくれよ。」
京子(藤堂)「ダメダメ、家に戻ってからな。」
藤堂(尾崎)「ちぇっ、冷たいやつだな。」
京子(藤堂)「そう言わないでよ。帰ったらじっくり見せてあげるからね!」

オレは藤堂(尾崎)の前で胸を張って、強調して見せた。
自分で言うのもなんだが、とても胸が張り出して見える。
やっぱり京子の体は最高さ。

藤堂(尾崎)「よし!早く京子の家に戻ろうぜ。」
京子(藤堂)「ああ。あんまり時間も無いしな。」

そう言って、オレたちは京子の家に戻る事にした。
すでにあたりは暗くなり、店の明かりが街路樹を照らし始めていた・・・
 
 
 
 
 

京子の部屋で
 

京子の部屋に戻ったオレたちは、まず時間を確認した。

京子(藤堂)「えっと・・・京子の魂がこの体から抜け出して・・もう10時間くらい経ってるな。」
藤堂(尾崎)「そうだな。あと4時間くらいしかないし。ヤバイかな。ちょっと心配になってきたよ。」
京子(藤堂)「でも、オレを裏切った女だからな。別にこのまま戻ってこなくてもいいしさ。」
藤堂(尾崎)「そう言ってもなあ。やっぱり元はオレのせいだからこのままって訳にもいかないし。」
京子(藤堂)「じゃあどうする?お前がオレの体から出ていかない限り、京子はこの体に戻って来れないんだぜ。」
藤堂(尾崎)「・・・そうなんだけど。どのみち2つの体に3つの魂があることがおかしいんだから・・・うん、分かってる。
                  分かってるんだけど・・・でも、もう少しだけ。時間ぎりぎりまでこの世にいさせてほしいんだ。」

藤堂(尾崎)は悲しそうな表情でオレに話し掛けてくる。

京子(藤堂)「そ、そんな顔すんなよ。わ、分かってるって。そんな事。オレたち親友じゃないか。」

オレは藤堂(尾崎)の両肩に手を置き、慰めるように体を引き寄せた。
トレーナーの膨らみに藤堂(尾崎)の顔がうずくまる。

藤堂(尾崎)「オレはこの世にいるべきじゃないんだ。お前達にも迷惑をかけているのは分かってる。
                  でも、最後に・・・最後に1度だけ。女の快感を味あわせてくれないか。」

顔を上げてオレの目を見つめる藤堂(尾崎)。
それは、これまでに無い真剣な眼差しだった。

京子(藤堂)「・・・ああ、分かったよ。お前の好きなようにすればいいさ。」
 
 
 

尾崎の望みどおり、体を入れ替えてやる。
そして、オレは自分の体に戻った・・・
 
 

藤堂「なあ、鏡の前に行って見てみろよ。俺が選んだランジェリーを身につけてるんだぜ。」
京子(尾崎)「ああ。」

京子(尾崎)が前身の映る鏡の前に移動する。
オレもその後をついていった。

鏡の前には、少しさびしげな顔をした京子の顔が映っている。

藤堂「トレーナーとジーンズを脱いで見ろよ。」

オレの言葉に、京子(尾崎)は無言で脱ぎ始めた。
トレーナーの前で腕をクロスにし、裾を掴んで上にあげ、頭をくぐらせたあと床に脱ぎ捨てた。
鏡の前に黒いランジェリーに包まれた上半身が現れる。
次にジーンズのボタンを外してファスナーを下ろし、前かがみになりながら
足首まで下ろし、両足を抜いた。
その姿はどことなくさびしげだったが、後ろから見ていたオレにとってはとても
魅力的な仕草だった。

京子(尾崎)「・・・すごいな。このランジェリー。」

黒くてセクシーなランジェリーによって引き締められたお尻、くびれたウェスト、矯正されて形の整った胸・・・
どこをとっても完璧な肉体。

京子(尾崎)「京子・・・」

京子(尾崎)はひらひらとしたレースの付いている胸を両手でやさしく包み込んだ。

京子(尾崎)「あっ・・・」

悲しくも切ない声が京子(尾崎)の口から漏れる。

藤堂「すごいだろ。そのランジェリー。」
京子(尾崎)「ああ。京子の体がさらにセクシーに見えるよ。」

オレは後ろから京子(尾崎)の体を抱きしめた。
柔らかい女性の体を全身に感じる。

藤堂「そのまま立っていろよ。」
京子(尾崎)「・・うん。」

抱きしめたオレの手が、京子(尾崎)の胸をそっと撫で始める。

京子(尾崎)「ああ・・・」

目の前の綺麗な髪から漂うシャンプーの香りに浸る。
オレはランジェリーの上から体のいろいろなところをやさしく擦った。
京子(尾崎)は時折、切ない声を漏らしながらオレの手の動きを体中で感じているようだった。

京子(尾崎)「ん・・・・なんかお前のやさしさに包まれているって感じがするよ。」

鏡の中の京子(尾崎)がオレを見つめている。

藤堂「そっか。」

その眼差しの遥か奥には何が見えているんだろうか・・・
オレは柄にもなくそんな事を考えていた。

魂が消滅するってどんな感じなんだろう?
消滅するのって苦しいのか?
死んだら天国に行けるんだろうか。?
 
 
 

京子(尾崎)「なあ、貴之。おい、聞いているのか?」
藤堂「あ、ああ。」
京子(尾崎)「何ボーっとしてるんだよ。」
藤堂「いや、何でもないんだ。」
京子(尾崎)「なんか考え事してたんだろ。」
藤堂「べ、別にしてねえよ。」
京子(尾崎)「ふーん、そっか・・・・なあ。オレを抱いてベッドに連れて行ってくれよ。」
藤堂「・・・・ああ。」

オレは京子(尾崎)の体を抱きかかえた。
京子(尾崎)が両腕をオレの首に巻きつけてくる。
チラッと顔を見ると、京子(尾崎)の笑顔がそこにあった。

京子(尾崎)「軽いだろ。京子の体・・・」
藤堂「当たり前さ。なんたってオレの彼女だったんだから。」

そう言いながら、ゆっくりとベッドまで歩いていった・・・・
 
 
 
 
 

ベッドの上で
 

オレは、京子(尾崎)のしなやかな体をやさしくベッドの上に仰向けに寝かせた。
細くて白い両腕が、オレの首にから離れる。
両手をお腹の上に重ね、やさしい眼差しでオレを見つめる京子(尾崎)の目は
どこまでも青黒く澄んでいて、まるで神秘の深い海のようだ。

京子(尾崎)「これで・・・これで最後だから・・・」
藤堂「ああ・・・」

オレは服を脱いで裸になり、そっと京子(尾崎)の体の上に覆い被さった。
京子(尾崎)の目が潤んでいる。

京子(尾崎)「オレ、お前と親友になれて本当によかったよ。こんなにわがまま言える奴って
                  いなかったもんな。」
藤堂「なに湿っぽいこと行ってんだよ。」
京子(尾崎)「なんかさ、これでもう会えなくなるって考えたらさ。さびしいなって・・・・おも・・う・・・」

京子(尾崎)の目に涙が溢れ、頬を伝ってシーツに落ち始める。

藤堂「ば、ばかっ!今から泣くなよ。そんな顔したら・・・そんな顔したらオレまで泣けてくるだろっ。」

京子(尾崎)の頬にオレの涙がポツポツと落ちている・・・
こんなんじゃ、エッチなんて出来ない。
 
 

・・・・ちょっとあんた達、なに男同士で泣いてるのよ。気持ち悪いじゃない・・・・
 
 

藤堂「あ、あれ?今、誰かの声がしたような・・・」
京子(尾崎)「ああ、オレにも聞こえたけど。」
 
 

・・・・まったく。さっきから聞いてりゃわたしなんかいないほうがいいだの、もうこれで会えないだの、
      訳の分からない事ばかり言ってるんだから・・・
 
 

藤堂「やっぱり。京子なのか?おい京子っ!おまえ今どこにいるんだよ。」
 

「ここよっ。」
 

部屋のドアがガチャッと開き、若い女性が現れる。
あれ?どこかで見たことのある顔・・・・そ、そうだっ!

藤堂「あっ!ラ、ランジェリーショップの店員さんっ!」

オレたちはビックリしてベッドの上に起き上がった。

京子(尾崎)「ど、どうして?」
店員(京子)「私よ。京子。音羽京子。」
藤堂「まさか、店員さんの体に入ってるのか。」
店員(京子)「店員さん店員さんって失礼ね。ちゃんと小枝子(さえこ)って名前があるんだから。」

正直言ってめちゃくちゃ驚いた。
京子が別の女性の体で現れるなんて・・・

京子(尾崎)「どういうことさ。なんでその人の体に入れたんだよ。」
小枝子(京子)「あら、二人がやったのと同じようにやっただけよ。」
京子(尾崎)「違うよ。なんで店員さんがお前に体を貸してくれたんだって聞いてるんだ。あかの他人だろ。
                  それに相手の意識が薄れたときでないと入れないはずだし。」
小枝子(京子)「二人は知らないと思うけど・・・私、あのランジェリーショップの常連なんだ。
                     だから小枝子さんとはとても親しかったの。たまたま小枝子さんが休憩してたときに
                     眠気がさしてたみたいだから入れるかなって思って、思い切って飛び込んでみたの。
                     そしたらうまい具合に入れちゃってさ。」
京子(尾崎)「それで体を貸してくれるって?」
小枝子(京子)「うん。始めはビックリしてたけどね。事情を説明したらなんか面白そうって!」
藤堂「いつ店員さん・・・いや、小枝子さんの体に入ったんだよ。」
小枝子(京子)「二人がランジェリーショップに行くって分かったあと。この辺りじゃ、あの店しかないからね。
                     私、自分の体を離れてからずっと二人の近くにいたんだから。」
藤堂「という事は・・・」
小枝子(京子)「面白かったわよ。私のこと全然気付かないんだから。小枝子さんだと思って必死に
                     ごまかしてたわね。笑っちゃいそうで堪えるのに苦労したんだから。」
藤堂「試着室の中に入って来た時にはすでに京子だったのか。」
小枝子(京子)「そうよ。やっぱり私の体ってスタイルいいわよね。自分で言うのもなんだけど、
                     お尻はキュッと上がってるし、胸はおっきいし。他人の体で自分の胸に触るのも
                     結構不思議な感じだったけど。ちょっと感じてたでしょ。」
 
 

完全にやられた・・・
まさか京子がここまでやるとは・・・
オレ達は、小枝子(京子)が自慢げに話しているのを愕然と見ていた。
 
 

小枝子(京子)「ねえ、これからどうする?」
京子(尾崎)「どうするって?」
小枝子(京子)「だから私たちの事よ。藤堂君には尾崎君との事、悪い事しちゃったと思ってるけど・・・
                     いろいろ考えてみたの。でねっ、こんなのはどうかなって。」
藤堂「こんなのって?」
小枝子(京子)「三人とも生きていたいじゃない。それに二人とも私の体がいいんでしょ。
                     そしたらさ、私の体を二人の魂が共有するっていうのはどう?
                     そしたら私は藤堂君の体で生きてゆくの。」
藤堂「二人で京子の体に?」
小枝子(京子)「うん。どっちが体を支配するかはその時々で決めればいいじゃない。お互い女性の快感を
                     味わえるんだから。」
京子(尾崎)「そりゃそうだけど・・・・貴之と二人でこの体を・・・どうかなあ。」
藤堂「・・・オレは・・・・構わないよ。」
京子(尾崎)「お、おい。本気で言ってるのか?」
藤堂「ああ。おまえがこの世からいなくなるのもさみしいし。ま、気の合うお前とならなんとかやっていけるかも
        しれないじゃないか。」
京子(尾崎)「貴之・・・」
小枝子(京子)「どう?これでいい?それじゃあ藤堂君の体、私がもらっていいの?」
藤堂「いいよ。京子は本当にそれでいいのか?」
小枝子(京子)「うん。だって藤堂君の家、お金持ちなんだもん!」
藤堂「それが目当てかっ!」
小枝子(京子)「へへっ。冗談よ。私はこれでいいと思ってるんだから。尾崎君もいい?」
京子(尾崎)「・・・ごめん。こんなオレのために・・・・」
藤堂「いいんだって。オレたち親友だろ。」
京子(尾崎)「・・・・・」
小枝子(京子)「じゃあこれで決まりね。あとで体を替えましょ!」
藤堂「後でって・・・今、替えないのか?」
小枝子(京子)「目の前にきれいな女性が二人もいるのよ。三人でするのも楽しいと思うけどなぁ。
                     私も自分以外の女性の体でエッチしたことないし!」
京子(尾崎)「オ、オレも小枝子さんの体でしたいなあ。」
藤堂「オ、オレだってさ・・・・」
 
 

オレたち3人は互いに体を替えながら、快感におぼれていったんだ。
女性の体によって感じ方が違う事もよく分かったし、どうやったら気持ちいいかも理解できた。
十分に楽しんだオレたちは、小枝子さんに体を返したあと、先ほど話したように体を
替えることにしたんだ。
 

藤堂(京子)「これでいいんだよね。」
京子(藤堂&尾崎)「うん。なんとかなるだろ。」
藤堂(京子)「喧嘩しないでよね。端から見てると異様なんだから。」
京子(藤堂&尾崎)「分かってるって。オレはおとなしくしてるよ。普段は貴之が体を使っていればいいさ。」
京子(藤堂&尾崎)「そんな事言ってさ。肝心なときはしゃしゃり出てくるんだろ。」
京子(藤堂&尾崎)「・・・・その時はその時さっ!仲良くやっていこうぜ、貴之っ!」
藤堂(京子)「じゃ、私は藤堂君の家に帰るから。さて、今日はステーキにしてもらおっかな。」
京子(藤堂&尾崎)「やっぱりそれが目的じゃないか!」
藤堂(京子)「へへっ、気にしない気にしない。じゃあね。」

藤堂(京子)はオレの体でうれしそうに家に帰っていった。

さて、残ったオレたちは、これからどうやって生きて行けばいいんだろう・・・
 
 
 
 
 

半年経って・・・
 

藤堂「ごめん、待った?」
京子「いや、今来たとこだから。」
藤堂「じゃあ行きましょうか。」
京子「ああ。」

オレたちは久しぶりにあのランジェリーショップに向かった。
京子はオレの体で楽しい毎日を送っているらしい。
オレの親は、急に成績が上がったのでとても喜んでいるとか。まあ、オレより京子の方がはるかに成績よかったからなあ。
 

で、オレたちは・・・
 

やっぱり二人で一つの体を使うって言うのは無理があったみたいだ。
結局どうなったかというと・・・
 

どうやら魂が融合してしまったようだ。
オレもあいつも気付いていなかったんだけど、徐々に意見が合うようになってきて
いつのまにか意見が完全に一致するようになったんだ。
だから、オレが考えている事はあいつも考えている。
オレはオレだけど、あいつもオレなんだ。
今じゃ、全くあいつの事を意識してない。
オレと同じように、あいつもオレのことを意識していないと思う。
これでよかったんだよ。
だれもつらい想いしてないんだから。
そう、すべてが丸く収まったんだ・・・・
 
 
 

ランジェリーショップに入ると、小枝子さんが近づいてくる。

小枝子「今日は何を買うの?」
京子「飛びきりセクシーな下着を買いに来たんだ。」
藤堂「またそんな事言って。」
小枝子「じゃあこれなんかどう?」

小枝子は、ほとんど紐だけで出来たパンティを手に取り、藤堂の股間に
あてがった。

藤堂「やだっ。私じゃないって。」
小枝子「あら、ごめんなさい。間違えちゃったわ。」
京子「それ、わざと間違えただろ。」
小枝子「ふふっ。だってほんとの京子ちゃんはこっちなんでしょ。」

小枝子さんだけはオレたちのことを知っている。
オレたちは冗談を言いながら新しく下着を買った。
 

京子「さあ、この下着を着けて今日も頑張るか。」
藤堂「任せてよ。メロメロにしてあげるからっ!」
 

周りの視線なんか気にならない。
オレは藤堂(京子)に抱きしめられて、とろける様なディープキスをした・・・
 
 
 
 
 

カルネアデス3・・・おわり
 
 
 
 
 

 

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