俺と奏の入れ替わり
 作: もしかして:取鳥


俺は諸見里浩人、ある芸能プロダクションに務めているプロデューサーだ。
俺がいるプロダクションでは多くのアイドルが在籍しており俺と同じプロデューサーがそれぞれ何人かを担当している、一人でも大変なアイドルを複数人担当するというのは大変だがそれなりに楽しさもある。
「仕事に戻るか。」
俺はそう呟くとさっきまで吸っていた煙草を吸い殻捨てに押し当てて火を消したうえで捨て、休憩所を後にしようとした。
その時だった。
「プロデューサーさーん!危なーい!」
階段の上の方から声がした、何だと思い見上げてみるとそこには俺に向かって速水奏が。
俺は慌てて奏を受け止めようとした、しかし俺は自分が運動オンチである事を最悪な事に忘れていた。
ゴッ!
そんな痛い音とともに俺の視界は真っ暗になり、そのまま俺は意識を失った。

「う、うぅ・・・。」
それからどれ位経っただろう、痛む頭を押さえながら起き上がると俺は信じられないものを目撃した。
それは俺だった、他でもない俺だった。
これは一体どうなってるんだ、そう思い混乱していると傍にコンパクトが落ちていた。
拾い上げてそれに俺の顔を映してみる、だがそこに写っていたのは俺の顔ではなく・・・・・奏の顔だった。
驚いて身体を見てみると身体にはさっきまで奏が着ていた服が着せられており、胸の所はムクッと膨らんでいる。
「う、嘘だろ・・・俺・・・奏と入れ替わっちまったのか・・・?んな馬鹿な・・・転○生じゃあるまいし・・・。」
そう言い何度も確かめるが俺は完全に奏になってしまってる。
俺が奏になっている、という事は・・・・・奏は俺になっているという事だ。
とりあえずまずは起こしてやるのが先決だろう、奏が俺を見て慌てふためくだろうがなんとかして落ち着かせないとな。
そう思い俺の身体に手を伸ばした時、こっちに向かってくる足音が聞こえてきた。
まずい、この状況をうまく説明できる気がしない。
そう考えた俺は奏に心の中で謝りながら、慌ててその場を後にした。


「・・・・・・・。」
それから少しして、俺はとんでもない状況に置かれていた。
あの後どうすればいいのか分からず事務所内を歩き回っていた俺は、俺が担当しているユニット『プロジェクトクローネ』のメンバーの一人・塩見周子に声をかけられた。
「奏、何ウロウロしてるの?これからダンスレッスンがあるんだからしっかりしてよ。」
周子は奏の中身が俺だとは知らずにそう話しかけ、俺の手を握るとそのままアイドル用の更衣室へと連れていかれ現在に至る。
怪しまれない様にゆっくりながらも着替えていく俺、しかしそんな俺の目の前では周子たちプロジェクトクローネのメンバーがワイワイと話をしながら着替えている。
プリップリの胸やお尻が直に視界に入ってきて目のやり場に困る、かといって視線を下に下げても今は自分の物となっている奏の胸とお尻が見えてしまう。
まずい、奏が実は俺だってことがバレたら非常にヤバい事になることは間違いない。
「・・・で・・・奏!聞いてるの!?」
周子に声をかけられハッとし、俺は咄嗟に奏のふりをする。
「ご、ごめん。ボーっとしてたわ、どうかしたの?」
「もー、ちゃんと聞いててよ。プロデューサーさんが倒れてたんだって言ったんだよ。」
「え、プロデューサーさんが?」
「うん。でも大事には至ってないらしくて今は事務室の奥のベッドで休んでるそうだよ。」
「そ、そうなの。」
奏はどうやら無事みたいだ、俺はホッと心の中で安堵した。
周子は「プロデューサーさんも大変だね」みたいな事を言いながら着替えを続けていっていた、しかし俺の耳にはとても届かなかった。
フルフル揺れる胸とお尻たち、それらが目に入ってなんとか鎮めようとしている興奮が今にも爆発しそうだ。
必死になって堪えようとするが遂には我慢が出来なくなった、俺は周子の胸を後ろからガシッと揉んでしまった。
「きゃっ!?ちょっと何するの!?」
当然驚く周子。
「何って単なるコミュニケーションよ、気にしないでね。」
我慢が限界を迎えた俺はあっけらかんとそう言い、他のメンバーの胸やお尻を揉んだりした。
全員が全員奏が普段しそうもない行為に驚いていたが、少しすると興が湧いたのか互いに胸やお尻を揉んだりしだした。
(あぁ、極楽はここにあったのか・・・。)
俺は正面から揉む事のないアイドルの胸を揉んでは悦に入り、ニヤニヤと顔をほころばせた。


「奏ちゃん、またミスをしているわよ。」
「す、すいません・・・。」
振付師に注意され謝る俺、現在俺はライブのためのダンスの練習をしていた。
しかし俺は運動オンチ、どれだけやってもミスばっかりやってしまう。
周子たちは俺を見てはどうも様子がおかしいと言っている・・・・・まずい、このままじゃすべてバレてしまう。
そう思い焦っていると・・・
「奏、ちょっといいかな?」
聞き覚えのある声が聞こえてきた。
声がした方を見てみるとそこには・・・・・俺がいた。
「はい、なんでしょうかプロデューサーさん?」
ビックリしつつも奏のふりをしながら俺に近づく俺、もう一人の俺は俺の手を掴むとダンススタジオから離れ俺と見合った。
「プロデューサーさん・・・ですよね?」
「あ、ああ。奏か?」
「ええ。これは一体どういう事なのか説明してもらえます?」
「お、俺だって分かんないさ。意識を取り戻したら奏になってたんだ。」
「そうですか。仕方ないですね、皆さんに正直に話しましょうか。」
「えっ!?」
「いつまでも私のふりをしていたら気力がもちませんよ。それともなんですか、プロデューサーさんは私の身体で何かいけない事でもしたんですか?」
「え・・・いや・・・その・・・。」
「プロデューサーさん、正直に言ってください。」
そう言って顔を近づける奏、俺の顔なのに妙な迫力がある。
それに押された俺は白状した、更衣室での事を。
「はぁ・・・・・全く何をしてるんですか。」
「ご、ごめん・・・。」
「謝らなくていいですよ、みんなには私から便宜を図っておきますから。その代わりお詫びとして映画のチケット・・・・・お願いしますね。」
「あ、ああ・・・分かった・・・。」

その後、俺は奏と一緒に事の全てを説明した。
奏が一緒に説明してくれたおかげで周子たちは俺を怒ったりしなかったが、口止め料として元に戻ったらご飯を奢るよう言ってきた。
辛いが俺がした事を他に知られないためには仕方がない、俺は涙を飲んでそれを了解した。
だがそれから数週間が経過した今も俺と奏は元の姿を取り戻していない、俺は今も奏として頑張り続けている。
そして俺の姿になった奏は、俺として頑張っている。






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