妹の彼氏に憑依するつもりだったブラコンの兄が 間違って妹に憑依するお話 作:皆月ななな |
とうとう、この日が来てしまった。 「お兄ちゃん、紹介するね?航平くんです」 「はじめまして。悠香の彼氏の航平です」 大学1年生になった妹の悠香が俺の前に初めて連れてきた彼氏。航平、という男は悠香をちらりと見たあと、俺に軽く挨拶した。 いかにもそいつはモテそうな雰囲気を醸し出したイケメンで、表情一つ変えないクールな表情とそっけない挨拶もなんとなく似合ってしまうのが腹立たしい。 それにしても、可愛い俺の妹を呼び捨てか。いい度胸してるなお前。 「よろしく、航平くん。兄の直人です」 俺は内心はらわたが煮えくり返るような感情を感じながら、表面上は冷静に笑顔を作った。 悠香も少し困ったような笑顔で小さく笑うと、その男の方をちらりと見ながら、恥ずかしそうに言った。 「じゃ、じゃあ航平……航平くん。私の部屋にあがろうか……」 「おう」 普段はお互い名前を呼び捨てにしていることが窺える悠香の態度に、またもどかしいものを感じた。 俺と悠香は結構年の離れた兄妹で、俺も悠香も小さい頃に両親は他界してしまった。 その後は祖父母に育てられた俺と悠香だったが、俺はその頃から悠香のことを守ってきた。 俺が兄という立場から特別な目で見てしまう、というのを差し引いても、悠香は可愛い。 くりくりとした大きな目。艷やかな黒髪。綺麗な肌。外見だけではない。真面目で素直で優しい性格。 それに加えて、最近は兄の俺からみてもその……身体つきが女らしくなってきたと思っていた。 客観的に見て、悠香はかなりモテると思う。 だからこそ、俺がこれまで「悪い虫」がつかないように守ってきたというのに……。 中高は女子校だった悠香が共学の大学に行ってからしばらくは彼氏ができず、安心していたのもつかの間。 気がつけばこの航平という男が現れ、俺の悠香をかっさらっていったのだ。 しかも、悠香から告白したという。 ……そんな事があり得るわけがない。 明らかに、悠香はこの航平とかいうイケメンに騙されているのだ。 悠香を盗られてたまるか! 階段を上がっていく二人の後ろ姿を睨みつけながら、俺は決意を新たにした。 「そういう時のために用意したのが、これなんだよな……」 自分の部屋に戻った俺は厳重に部屋に鍵をかけ、つぶやいた。 怪しげな通販サイトで見つけた「憑依薬」。1時間だけ他人に憑依することができるというものだ。 最初は半信半疑だったが、ダメ元ということもある。俺も噂だけは知っていたので、もしかすると本当かもしれない。 結構な値段がしたが、そこは社会人パワー。悠香のためを思えば金など取るに足らないことだ。 俺の計画はこうだ。この憑依薬を使い、悠香と一緒にいる航平に憑依する。 そして、航平の身体を使って悠香に嫌われるようなことをしまくってやるのだ。 例えば……二股、いや三股していると悠香に向かって言うとか……悠香を傷つけるかもしれないが、こっぴどく悠香を振るとか…… 航平の身体で、わざとおもらしして泣くとかもいいかもしれない……。 俺はほくそ笑みながら、ドリンク剤のような外見をした憑依薬を一気に飲み干した。ドロっとした甘いヨーグルトのような味が口の中に広がった。 気がつくと、俺は空中から俺の事を見下ろしていた。おそらく、今俺は俺の身体から抜け出し、魂だけになっているのだろう。手を見てみようとしたが、自分の身体が見えることはない。そこに確かに自分の身体があるような「感覚」だけがそこにあった。 (やっぱり、本物だったのか……)と俺は呟いたが、その声が俺の耳に入ることはなかった。 自分では声を発しているつもりなのだが、霊体?幽体?ではその声が空気を震わせることはない、ということなのだろう。 おっと、そんなことを考えている暇はない。早く悠香の部屋に行かなければ。あいつに悠香を奪われる前に! 確か泳ぐような感じで空気中を進んでいくんだったよな。 俺は憑依薬についていた説明書に書いてあったとおり、平泳ぎのようにしながら二回まで上っていった。 あとは、あいつの――航平の身体に幽体ごと入り込めば憑依ができるはずだ。 悠香の部屋に入ると、悠香とあいつは悠香のベッドに並んで腰掛けていた。 悠香は真っ赤になってうつむいていて、一言も発しない。 航平はといえば、そんな悠香のことをちらりとも見ず、遠くの方を眺めるような目つきをしている。 (この調子だと、まだ何もしてないな) 俺は少しホッとした。 しばらく黙りこくったあと、悠香がやっとのことで口を開いた。 「ご、ごめんね航平!そういえば飲み物とか飲むよね?」 「そういえば、少し喉乾いたかも」 「お茶、私の冷蔵庫にあるから……」 そう言いながら、悠香は立ち上がって部屋用の小さな冷蔵庫を開ける。 「あっ……」 小さく悠香が声をあげる。 「ごめん航平……ペットボトル、1本しか無くて……飲んでいいからこれ!私は大丈夫……」 そういうとペットボトルに入ったお茶を差し出す悠香。 本当にいい子だな悠香は……という気持ちと、そんな奴に優しくするな!という気持ちが複雑に絡み合う俺。 そんな俺の気持ちも知らずに、 「ああ」 というと、あいつはお茶のペットボトルを開けると、少し飲んだ後、悠香にペットボトルを渡した。 「あとは飲んでいい」 「え!?」(え!?) 悠香と俺は同時に声をあげた。まあ、悠香には俺の声は聞こえていないのだが。 (それじゃ、間接キスになっちゃうじゃんか!悠香、よせ!) 俺は悠香に聞こえないのも、幽体になっているのも忘れてまじまじとペットボトルを見つめる悠香のほうに突進したのだが…… 俺は勢い余って、魂ごと悠香にぶつかってしまったのだった。 「悠香、おい悠香……起きろよ、どうした?」 俺が目を覚ますと、あいつが俺を心配そうに軽く揺さぶっているところだった。 そうだ、そういえば悠香は!? そう思い俺がガバッと身を起こすと、髪の毛がふわっ、と俺の耳元を柔らかくくすぐった。 「あれ?ひゃぁっ!?」 ![]() 髪の毛が長い。その違和感に思わず声を出したが、その声もまた女みたいな高い声が出て、俺は驚いてまた変な声を出した。 「悠香、大丈夫か?」 そう言うあいつの方を見ると、目線が俺より高い。確か俺のほうが少し身長が高かったはずなのだが……って、俺が縮んでる? 「まさか……」 俺はまた女のような声を出しながら顔面蒼白になった。 手を見る。 霊体ではない。 かといって俺の手でもない。 白くて細い……柔らかい肉付きの手のひらをした……女の子の手だ。爪には薄いマニキュアが塗られていた。 自分の身体を見る。白くてふわふわとしたニットを押し上げる胸に隠れて、下半身が見づらい…… が、さっき妹が履いていたはずのロングスカートを俺が履いているのがわかった。 もしかしなくても、これは。 俺、悠香になっちゃったのか……? 声に出さずに察すると、俺は恐る恐るあいつの方を見た。 あいつは見るからに怪訝そうな顔をしているが、まさか悠香の実の兄が中に入っているなんて絶対気づくはずがない。 こいつの身体に乗り移って悠香に嫌われるつもりだったが、こうなってはしょうがない。 そう冷静になった俺は、計画を変更することにした。 悠香の身体を使って……悠香に成りすまして、こいつが二度と悠香の前に現れないぐらい、こっぴどく振ってやるしかない。 「なっ、なんでもないよ、航平くん♪」 俺は精一杯女に見えるようにしなを作りながら言った。 「航平くんって……悠香、本当に大丈夫か?」 しまった。悠香はこいつのこと、呼び捨てしてるんだった。 「こ、航平!航平航平!うん、全然大丈夫!な、なんか喉乾いちゃったな……」 そうあいつの名前を連呼して言い直すと、誤魔化しついでにちょうど手元にあったペットボトルのお茶の蓋を開けると、口をつけ一気にお茶を流し込み、そしてこれがさっき俺が悠香に憑依してまで全力で航平との間接キスを止めたお茶であったことを思い出した。 「ぶふぁっ!?」 一気にお茶を噴き出す俺。その拍子にペットボトルに入っていたお茶も取り落とす。 「あっ」 一瞬の静寂のあと、残ったのはニットとスカートをお茶ですっかりグショグショに濡らして呆然とする俺と、同じく呆然と俺を見つめる航平だった。 「ふふっ……」 しばらく目を見合わせた後、航平が堪らないと言うようにクールな顔を歪ませて笑う。 「な、何がおかしいんだよ!!」 馬鹿にされたような気がして、思わず俺は言う。 「すまん。いや、悠香って結構天然なんだなって思ってさ。真面目なだけかと思ってたけど、イメージちょっと変わったかも」 「い、いや!普段の悠香はこうじゃないから!」 俺はとっさに反論してからしまったと思う。 「わ、私は普段はこんな感じじゃない……のよ?」 「はは、普段とは違う感じで可愛いじゃん」 「え」 いかん。 これ、ちょっといい感じになっちゃってないか? それはまずい。計画通りにやらなくては。 「こ、航平なんか嫌いだから!嫌い嫌い嫌い!!」 俺はムキになって嫌いと連呼する。これは本心だ。 航平は笑いながら言った。 「照れてんのか?そういうところも可愛い」 「なっ……」 何なのこいつ。俺の悠香に向かって……可愛いのは事実だけど……。 「そう言う航平だって、クールかと思ってたらそうやってからかって……イケメンだからって全てが許されると思うなよ!」 怒りで航平のほうを睨みつける。 「……ふーん、俺のことそういう風に見てたんだ」 航平も俺の方をじっと見てくる。 何だ?こいつ俺とやる気か?そう思った俺は、航平から目をそらすことなくじっと見返してやった。 航平の顔がだんだん近づいてくる。近づいて??? 気づいたときには俺は悠香の身体で航平にキスされていた。 「――――ッ!?」 声にならない声を出して抵抗する俺だったが、ことのほかがっしりと頭を後ろで掴まれていて、悠香の身体ではほとんど抵抗になっていない。 悠香の口に舌が入ってきたところで俺はやっとのことで航平の身体を両手で押しのける。 「ば、馬鹿!?何してんの!?」 俺は口を拭きながら言う。 って、さっき間接キスも恥ずかしがってたし、これ、悠香のファーストキスだったんじゃ……。 「……だって、そういう雰囲気だったじゃん、今」 「違う!俺は睨んでたの!本当に嫌いなの!くちゅん」 俺は我を忘れて否定しながらくしゃみをしてしまう。 うう、さっきお茶で全身びしょ濡れになって、ちょっと冷えたような……悠香の身体に風邪を引かせたら大変だし、ここは…… 「大丈夫か?風邪引くから一回着替えたらいいんじゃないか?」 「う、うるさいなあ!わかってる!」 先に言われてしまった。 「俺、部屋出て待ってるからさ。着替えたら声かけてよ」 「当たり前だ!出てけ!覗くなよ!」 「ははは、はいはい。本当、今日の悠香は面白いな」 「うう」 俺は下着姿で姿見の前に立ち、うめく。 まさか俺が、妹として着替えをすることになるとは……悠香、すまん。 「ブラジャーまで濡れてるよ……これ、どうやって取るんだ?手が……」 と呟きながら、手を後ろに、鏡を見ながらブラのホックに手をかける俺。 俺の身体と違い、予想外に身体が柔らかく、結構簡単に手が届いてしまう。 「んっ……これを外すのか」 妹の声で呟きながら、俺は妙な背徳感に悩まされながら自分の、悠香のブラを外す。 「おお……」 鏡に映るのは、まじまじと自分の身体を見つめる俺の妹、悠香。 白く、うっすらと自分の膨らんだ胸に血管が走っているのがわかる。 「俺の胸……悠香の、胸」 俺は呟きながら、そっと横から触ってみる。 柔らかく、みずみずしい感覚が手から伝わってくる。同時に小さな手で触られている感覚も伝わってくる。 どちらも男のときには味わうことのなかった感覚だ。 俺は自分の――悠香の身体の鼓動が高まるのを感じていた。 航平が待っているであろう、ドアの向こう側をちらりと見る。 「ちょ、ちょっとだけなら……」 俺はゆっくりと、今は自分のものになった悠香の乳房に触れていく。 「なんか、変な感じ……」 男のときにはなかったものをゆっくりと揉みつつ、俺はぷっくりと膨れてきた乳首にも指をかける。 「ふぅっ……!」 押し殺した悠香の声が俺の喉から発せられる。 やば、これ、気持ちいい。 両の人差し指と親指の腹で左右の乳首を軽く摘んだり弄ったりしながら、俺は興奮が次第に高まり、身体が内側から熱くなるのを感じていた。 (こ、こんなこと……妹の、悠香の身体でしてちゃダメなのにっ……) ダメなのに、止められない。 俺は上気する悠香の顔を鏡で見ながら、自分の勃起しているであろうアレをシゴくため、 乳首をいじっていた右手をショーツの中へと潜らせた。 「……?」 俺が思った位置には自分のイチモツはなく、うっすらと茂みが広がるばかりだった。そこではた、と気づく。 (あ、そうか、俺、今女だったんだ……うわっ!?) 股間をまさぐっていた指が、何かぬるっとしたものに触れる。 一瞬、気づかないうちに射精したのか?と思うが、今度はすぐに「自分はいま女だ」ということを思い出す。 (悠香のマ○コ、濡れてる……。俺が興奮して濡らしてるんだ……) ヌルヌルした分泌液を、擦り付けるように股間全体に引き伸ばしていく。 「自分が悠香になって、悠香の身体を弄って気持ちよくなっている」という背徳感が、快感を加速させていくのがわかった。 (あ、気持ちいい……かも……) 「ひうっ!?」 スリスリと股間をまさぐっていたが、俺は突然の快感に小さく息を飲む。 (これ、クリト○スだよな……気持ちいい……) 俺は今指が当たった悠香のクリ○リスを、悠香の指を使って弄りながら、倒錯的な興奮を高めていった。 弄るスピードは小刻みに、一定のリズムで快感物質を俺の脳に送り届けていく。 左手で弄っている乳首も、勃起して硬くなっているのがわかる。 (あ、ヤバ、な、なにかくるっ……!) 「ひぅっ!」 男のイくときのような、だがもっと強い快感が絶頂に達し、俺の全身を駆け巡る。俺は初めての女のイく感覚に、頭が真っ白になるのを感じた。 ショーツの中に右手を入れたままベッドに寝そべり、しばらく、ぼんやりしていた。 「はぁ……はあ……はぁ………」 俺、悠香の身体でイッちゃったんだ……。 男のオナニーとは違う意味での罪悪感を感じながら、俺はふと横を向いた。そして――固まった。 ベッドの横にはいつのまにか航平が立っていた。 「……い、いつからそこに?」 「……悠香が下着の中に手を入れだしたところぐらいから、かな」 それは、自分のオナニーのほぼ一部始終を航平に見られていたことを意味していた。 「覗くなって言ったじゃん!」 「そう言われても、遅かったしさ」 「で、でもっ……わ、忘れろ!今見たこと全部忘れろ!きゃぁっ!?」 急に航平が覆いかぶさってきて、悠香の身体になっている俺は為す術なく押し倒されてしまう。 「忘れろとか言われても困るし……そんなに欲求不満なんだったら、俺とすればいいじゃん?」 「だっ、ダメだって!それは許さない!コレは悠香のっ……うぷっ!?」 航平に唇を塞がれ、さっきよりも濃厚に舌を絡みつかせ、舐め回される。 (や、やめろっ!悠香を汚すな!俺は兄として、悠香をっ……!) 抵抗しなきゃいけないはずなのに、なぜか力がはいらない。むしろ。 (お、俺っ、こいつのキスで気持ちよくなっちゃってるぅ……) 目がトロン、として、惚けたようになっているのが自分でもわかる。 (もしかして、悠香の身体に俺の精神が引っ張られてきてる……!?) そうしている間に、穿いていた下着を航平が脱がしにかかる。 「だ、だめだってぇ……」 「……なら、もうちょい抵抗したらいいんじゃないか?うわ、糸引いてる。超濡れてんじゃん」 俺はキスされてからぼうっとなってしまい、下着を脱がされるままになっていた。 自分でもさっきより濡れてきているのがわかるぐらいだが、改めて人から言われると恥ずかしい。 足を拡げられ、悠香の恥ずかしい部分がより露わになる。 「み、見るなぁっ!見ないで!」 「大丈夫だって。悠香、かわいいよ」 「知ってる!それは知ってるからぁ!見るなぁ!」 錯乱した俺は身悶えしながら連呼するが、航平に手首を掴まれ固定されてしまう。 いつの間にか航平も下着をおろし、下半身を露出させている。 「お、俺のより大きい……やめろぉ!本当にやめて!マジで!」 「……何か言ったか?もう準備万端みたいだし、挿れるぞ、悠香」 ずぶっ、と異物が俺の、悠香の膣に挿入されていき、膣壁を拡げていくのを感じた。 と共に、それに合わせて猛烈な痛みが俺を襲った。 「いた、痛い!!いたああああ!」 びっくりするように航平が俺の顔を見る。 「……悠香って、もしかして処女だったのか?」 「当たり前だぁ!よくもぉ……」 「……大丈夫。ゆっくり動くから」 そう言うと航平はゆっくりと前後しだした。 「悠香、どうだ?気持ちよくなってきた?」 「馬鹿っ、野郎っ、全然気持ちよくなんかっ……なっ……い……!」 そう言いながら俺は、さっきよりは痛みが和らいでいくのを感じていた。 痛みばかりだった部分が、徐々にヌルヌルとした結合の感覚に変わっていく。 「あっ……んっ……うぁぁっ……」 俺、今妹の身体で妹の彼氏に抱かれて感じちゃってるんだ。ごめん、悠香。 「気持ちよくなんかないっ……あっ……んっ……」 俺は特に聞かれていないのに強がりを言うことでなんとか自分を保ちながら、自然に漏れる悩ましげな声を抑えきれなかった。 「さっきみたいに、クリト○ス弄ってやるよ」 そう言うと航平は俺の下半身に手を伸ばす。 「うぁっ!あっ!ああっ!」 俺はクリ○リスが触られるたびに、電流みたいに駆け上がってくる快感で思わず大きな声をあげていた。 いつしか俺は、自分でさっきのように自分の、悠香の乳房を揉みながら、快感を高めるのを止められなくなっていた。 「ま、またイッちゃう、航平っ、航平っ」 「悠香っ……俺もイくっ……」 さっきよりも強い感覚に、俺は目の前が真っ白く染まっていくのを感じた。 薄れ行く意識の中で、俺の腹に航平の精液と思しき、熱いものがかけられるのがわかった。 「それじゃ、お邪魔しました」 玄関先で、航平と悠香がやり取りする声が聞こえる。 「……うん。航平、また……」 「なんだ?さっきと違って大人しいじゃん」 「そ、それは……さっき、私どうかしてて……なんか、自分でするなんて、普段はそんなにしてなくて……」 「でも、たしかにしてただろ?」 「そ、そうなんだけどっ……記憶にはあるんだけど、あの時の私、私じゃないみたいな考え方だったの……自分のこと、大好きっていうか……」 「ナルシストなんじゃないの、悠香」 「そういうのじゃないのっ!もう、わかんないかな……それに、お兄ちゃんも居たから、今日は航平とするはずじゃなかったのに……バレちゃったかな……もう、何で今日しちゃったんだろ……」 「まあ、悠香の別の一面が見れて、俺は悠香のこと好きになったよ。また来るよ、悠香」 「……」 無言になった。きっと二人で見つめ合って、キスか何かしてるのかもしれない。 悠香の身体の憑依が解けて、本来の身体に戻った俺は自分の部屋で悶々としながらそれを聞いていた。 結果的には俺が悠香に成りすましてあいつと悠香の仲を引き裂くどころか、むしろ取り持つことになってしまったみたいだ。 どうやら憑依中にしたことや考えたことは、自分自身の意志でしたことだというふうに捉えてしまうみたいだな。 悶々としながら、俺はまた、例の怪しげな通販サイトを開いていた。 かなりいい値段するが、その分の価値はある。憑依薬をカートに放り込み、注文を完了する。 今度憑依するのは、もちろん―― (終) |