なりすまし罪
 作:メトロノーム


「大垣市の中学一年生の女子生徒(当時13)と入れ替わったまま8年間なりすまして生活していたとして大垣署は3日、なりすまし容疑で、山田清五郎容疑者(78)を現行犯逮捕しました。
 調べに対し、『寝たきりの生活が辛かった。少女には申し訳ないと思っている。』と容疑を認めています。
 入れ替わりは山田容疑者が当時入居していた老人ホームに少女がボランティアとして訪れた際に発生。山田容疑者は『ほんの数日でいいから外の暮らしをしたい。入れ替わったことは周りに黙っていて欲しい。』と少女に持ちかけ、住所や家族などお互いの情報を交換、その後少女の容態が急変し、今年2月まで昏睡状態でした。
 この事件は老人ホームの職員が掃除をしていた際に山田容疑者と少女の情報交換記録文書を見つけ、同署に通報したことで発覚しました。現在少女は病院で精神交換手術により元の身体に戻りましたが、13歳から21歳になったことで精神的にショックを受け、定期的なカウンセリングを受けている模様です。
 ここで入れ替わり犯罪に詳しいTS大学大学院の五反田博行教授にお話を伺ってみたいと思います。」

「入れ替わりというのは大変身近な現象です。2人以上で階段から落ちる、感電する、トリップ状態になる等様々な要因で入れ替わりは起こります。近年の調査では人口の約10%が今までに入れ替わりを経験したことがある、と答えています。現在は病院で精神交換手術を行うことで元に戻ることができますが、10年以上入れ替わったままの場合は精神と身体の結びつきが強くなり、手術の成功率がガクッと下がるので注意が必要です。さきほどの少女の場合ですと後2年事件の発覚が遅れていれば非常に危険な状態だったと言えます。」

「このような入れ替わり被害に合わないためにはどうすればいいでしょうか?」

「入れ替わりを予防するのは非常に困難です。なので入れ替わった時のために適切な知識を持っておくことが重要になります。
 入れ替わった時はまず病院の精神科に行って下さい。先程10年が成功率が落ちる目安と申しましたが、すぐに対処することで少ない手術回数で元に戻ることができます。
 絶対にやってはいけないのが自力で戻ろうとすることです。入れ替わった人たちの中には慌てて頭をぶつけたり、入れ替わった時の状況を再現するために階段から落ちてみたりする人がいますが、記憶交換現象や最悪の場合精神同居状態になります。こうなると手術での治療は非常に難しくなってしまいます。」

「一回目の手術で成功しなかった場合はどうすればいいのでしょう?」

「手術で成功しなかった場合や遠隔入れ替わり等すぐ元の身体に戻れない場合は市役所で申告を行って下さい。不申告のまま生活した場合は処罰の対象になる可能性もあります。
 また、入れ替わった相手とは極力情報交換を行いましょう。相手の立場によっては生活を引き継がなくてはならない場合もあります。情報交換したことを文書で残すことによって今回の事件のように証拠書類とすることもできます。」

さきほど相手の生活を引き継ぐとおっしゃってましたが、これはなりすまし罪にはならないのでしょうか?」

「なりすまし罪は申告を行わずに生活を引き継いだ場合に適用されます。先程の不申告で処罰の対象になる、というのはこういう所に絡んできます。ただ相手の身体を人質にして脅すことで無理やり申告を行わせた場合にもなりすまし罪は適用されます。この場合はなりすまし罪の他に脅迫罪にも問われます。」

「ありがとうございました。入れ替わりの不申告は処罰の対象になる場合があります。皆様もお気をつけ下さい。続いては一年前に発生した上野駅集団入れ替わり事件被害者の『今』をお伝えします。」






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