風祭文庫・アスリート変身の館



 

「彼女達の正体」



原作・風祭玲

Vol.866

 





ジャンジャンジャァーン!

シンと静まり返った屋内プールに軽快な音楽流れ始めると、

その音楽にあわせて髪をシニョンに結い上げ、

チームカラーで統一された競泳水着を身に纏った選手たちが

ルージュを引きシャドゥを決めた顔をにこやかに見せながら

一糸乱れず動きを揃えて次々と水中へ飛び込んでいく。



インターハイ・シンクロナイズド・スイミング・団体戦。

これまで苦難の練習を積み重ねてきた彼女たちの晴れ舞台である。

幾度も幾度も繰り返していた猛練習。

演技曲のすべての調べを頭に叩き込み、

リズムと動きをマスターしてきた彼女たちは掛かる音楽が静かな調べになると、

水中で華麗な華を広げ、

また、激しい戦慄へと代わると、

ザバッ!

ザバッ!

水中より勢い良く飛び出し見る者を魅了していく、

やがて時間と共に演技は締めの大技へと向かい、

流れていた音楽が鳴り止んだとき、

観客席から盛大な拍手が沸き起こったのであった。



演技終了後

笑みを絶やさずに演技を終えた選手達はプールサイドに上がると、

そして、じっと彼女達の演技を見守っていた指導教諭より、

「うん、あれだけ出来れば立派。

 みんな頑張ったわ」

と労いの言葉を掛けられた途端、

皆はこれまでのきつかった練習を思い出しつつ、

「はいっ」

顎から水を滴らせながら元気良く返事をする。

やがて発表された試合結果。

彼女達のT高校シンクロ部は惜しくも優勝を逃したが、

でも、3位入賞と言う輝かしい成績を残したのであった。

そして、表彰式などが行われ、

大会は無事終了となったが、

だが、彼女たちが更衣室に戻ってきたのは大会の終了から大分遅くなっての事だった。

「誰もいないね…」

こっそりとドアを開けて女子更衣室を覗きこんだ少女が声をあげると、

「これだけ待ったんだもの、

 残っている他校の選手なんていないよ」

と彼女の後ろの少女が話しかける。

「じゃぁ、さっさと着替えちゃおうよ」

その話を聞いていた別の少女がせっつくと、

バタンッ!

盛大に更衣室のドアが開かれ、

ドタドタドタ!

無人の更衣室内に大会に出場した少女達が一斉に分け入ってくる。

その一方で、

「ちょっと押さないでよぉ」

「さっさと行ってよぉ」

などと一部では混乱も起きるが、

しかし、それも程なくして収まると、

部員達は皆、自分たちのロッカーの前に立ち、

着ていた校名・部活名入りジャージを脱ぎ捨てると一斉に水着姿になり、

一瞬、更衣室の中が華やかに彩られた。

だが、それもつかの間、

彼女達はそそくさと水着の肩紐を横にずらして脱ぎ始めると、

プルンッ!

鍛え上げたシンクロ部女子の白い肌が更衣室に輝くが、

「あー蒸れる蒸れる!」

一番発育の良い胸を持っている少女がそう訴えながら後ろで手に背中をつまみあげると、

ピーーッ

っと透明な何かを下に引き降ろしてみせた。

すると、

ミシッ!

引き降ろされていく何かと共に彼女の背中は縦に2つに裂け、

白い皮膚の下に日に焼けた別の皮膚が姿を見せると、

それと同時に男性特有の汗臭さが漂い始めた。

そして、

グッ!

後ろにまわした手で裂けた皮膚を掴みあげると、

まるでシャツでも脱ぐような仕草と共に、

ズルリ!

中身が一気に抜けて支えを失った少女の皮膚は

シニョンに結い上げられた頭とメイクされた顔と一緒にダラリと垂れ下がると、

「ふぅ…」

胸元にその少女の顔を垂れ下げて、

褐色の肌と丸坊主の頭に汗を浮かび上がらせながら少女達と同世代の少年が大きく息を継いでみせ、

さらに少年は

「いよっ」

その掛け声と共に右腕、左腕を次々と引き抜き、

さらに胸元に垂れ下がる少女の顔を下へと押し下げると、

中からモッコリと前が膨らんだ競泳パンツが覆う腰が姿を見せ、

最後にすね毛が生える両足を引き抜いてしまうと、

競泳パンツ姿の男子が少女の皮を手にして立っていたのであった。

「はぁ…」

少女の皮を脱ぎ去った少年は力を抜くと、

「シャワー、

 シャワー」

と声をあげてシャワールームへと飛び込み、

中で競泳パンツをとると、

ワシャワシャワシャ

と噴出すお湯に身体を洗い始めた。

すると、

少年を追うように他の少女部員たちも次々と競泳水着と皮を脱ぎ去ってしまうと、

皆競泳パンツ姿の丸坊主の少年となってシャワールームに駆け込み、

一斉に身体を洗い始める。

「まったく、元男子校だからといって、

 何でこんなことを」

身体を洗いながら一人が愚痴をこぼすと、

「仕方が無いだろう、

 女子部員が少ないんだから、

 無理を言うな」

と他の少年が釘を刺す。

しかし、

「だけどさぁ、

 なんでこんな格好をさせられてましてシンクロをしなくてはならないんだよ」

そう別の少年が文句を言い出すと、

「この大会で優勝すれば、

 まっとうな女子部員が入ってくると思ったんだけどな」

「3位じゃどうなるか」

と言う声が次々と飛び交った。

そんなシャワールーム会話の中で、

一人の男子部員が無言のままで身体を洗っていたが、

すぐに止めてしまうと適当に身体を拭いた後、

タタッ

駆け込むようにしてトイレへと向かって行く、

そして、トイレの中で、

ピッ!

後ろ手に背中を摘み上げて、

摘んだそれをスーッと引き降ろししてみせると、

「はぁ…」

ため息と共に女の子の顔が出てきたのであった。

「もぅ、元男子校だったし、

 女の子のシンクロ部員が居なって言うから

 こうして男の子の格好をしていたのに…

 なんでその上に女の子の格好をさせられるのよ、

 あーぁ、やんなっちゃう」

と彼女は文句を言い、

便器の上に座ると、

ひたすらため息を付いたのであった。



おわり









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