家族の転換
 作:ふゆ

(6)

結婚式は身内だけで行う事になった。
ドレス選びは僕も興味があったので、毎回付き合うことにした。
「2回目の結婚式はカラードレスが決まりみたいだけど」
「女として結婚するのは初めてだから、純白のウエディングドレスを着るつもり」
「母さんとの結婚式では、母さんのウエディングドレスが着たくてたまらなかったから」
「夢がかなってうれしいわ」
そういう父さんはとても嬉しそうだった。
純白のウエディングドレスに身を包んだ父さんは奇麗だった。
僕は制服で行こうかとも考えたけど、可愛い服も着たかったし
こういう場所で華やかな装いができるのは女の子の特権なので、
淡いピンクの可愛らしいドレスを着て式に出席した。
結婚式で父さんは女性として結婚できてとても幸せそうだった。

式は滞りなく終わり、新しく家族4人での生活が始まった。
新しい家に引っ越して、少しづつ向こうの家族とも馴染んでいった。
家族4人で食卓を囲んでるときなど、お義父さんが
「やはり女性がいると家が華やぐな」
「今までは男2人で味気なかった」
と嬉しそうに話した。
お義兄さんも
「そうだね、お義母さんも由美ちゃんも綺麗だし」
と言ってくれたけど、僕は生物学的には男性4人だと思い、ちょっと申し訳ない気分になってしまった。
義兄さんは優しい人で、僕の勉強なども見てくれて親切にしてくれる。
イケメンだし女性にもてるだろうけど、彼女がいる様子がなかった。
その日は休みで、僕だけが家にいた。
前日は遅くまで勉強をしていたせいでお風呂にも入らず寝てしまったので、
シャワーを浴びて出ようとしたら、着替えを持ってきてないのに気が付いた。
家にはだれも居ないので、裸のまま自分の部屋に戻ろうと思った。
2階に上がり、義兄さんの部屋の前まで来た時ドアが突然開く。
中からお義兄さんが出てきた。
シャワーを浴びていて、戻ったのに気が付いていなかった。
僕はホルモン剤を飲んでいて胸は膨らんでいたけど、下はそのままで
それを見られてしまった。
「由美ちゃん・・・」
義兄さんはびっくりして呆然としていた。
見られた僕は、慌てて自分の部屋に入り部屋にカギをかけた。
夜になってお義父さんとお母さんが帰ってきた。
夕食の時間になっても部屋から出ていけなくて、気分が悪いと言ってごまかした。
心配をされたが、他にはなにも言ってこなかった。

それから1週間は、時間をずらして義兄さんと顔を合わせなかったが
なにも言ってこなかった。
次の休日がきた。僕はなにもする気が起きなくて部屋でぼんやりしていたら
お義兄さんからメールが入り、外で会わないかと言ってきた。
僕は拒めるはずもなく出かけていった。
待ち合わせ場所のカフェに行くと義兄さんは先に来ていて、窓際の席で外を眺めていた。
僕は黙って席につき、俯きながら義兄さんが口を開くのをまった。
「さっそくだけど、戸籍を調べてさせてもらったよ」
「由美ちゃんは正真正銘の女性だったね、どういうことなんだい」
僕は父さんのことは伏せて入れ替わった経緯を話した。
「そうなんだ・・・」
「父さんはそのことを知ってるの?」
「ううん、それを言ったらお母さんとの結婚がうまくいかなくなると思って」
「言えなかったの」
「わかった、ならこのことはお父さんにも内緒にしておくよ」
「え、それでいいの?」
「うん、お義母さんはいいひとだし」
「由美ちゃんの事も大事な妹だと思ってるよ」
「このまま家族で居たいから、なにもいわないでおくよ」
「ありがとう義兄さん」
僕はこの人が義兄さんでよかったと思いながらお礼をいった。
家に帰り父さんに事の顛末を話したら、最初は真っ青になっていたけど
話が進むにつれて安堵の表情になっていた。
話が終わった後、父さんは暫く考えこんでいたと思ったら
「由美あなた、男性と女性どっちが好きなの」
と、突然切り出した。
「うーん、どっちなんだろう」
「女の子も好きだけど、最近は男子もかっこいいなって思うようになってきたし」
「どっちつかずな感じなのかな」
「じゃあ、男の子と付き合ってみてもいいと思ってる?」
「そうね、相手しだいだけど、そういうのも経験したいとは思ってる」
「好きな人はいるの?」
「そういう人はいないかな」
「そう・・・」
「わかったわ、ちゃんと弘明さんとも話しておかないと」
それから父さんは義兄さんと随分長い間2人で話をしていた。


色々あったけど、今は元の平穏な生活が戻っていた。
今日は久々に義兄さんと二人で買い物をしに街に出かけてきている。
父さん達が結婚した当初はよく4人で出かけていたが、最近はそれも少なくなっていた。
買い物をすませると、ショッピングモールの近くにあるお店の新作スイーツが美味しいという評判だったので是非食べてみたいと思い、義兄さんと一緒に食べてみることにした。
お店に入って注文したスイーツを食べながら、評判になるだけあるねと2人で感想を言ってると
「由美ちゃんは今付き合ってる人いるの?」
と、唐突に聞かれた。
「ううん、今はいないかな」
義兄さんは暫くためらう素振りを見せていたが、思い切ったように口を開いた。
「じゃあ、僕と付き合ってくれないかな」
僕はなにを言われたのか分からなくて呆然としていた。
「僕は同性愛者なんだ、今まで女性を見て好きと思ったことなかったけど」
「由美ちゃんと会って君を好きになっていく自分を感じて、どうしたんだろうって
 思ってた」
「そうしたらこないだの事があって、やっぱりと納得する事ができたよ」
僕は義兄さんに好感を持っていたし、僕の秘密も知っているので付き合うには
最適な相手だと思った。
「私も義兄さんの事好きだし、こんな私で良いっていうなら、私と付き合って下さい」
僕たちが付き合い始めた事を両親に報告すると、2人とも喜んでくれたので安心した。
父さんは、義兄さんが同性愛者で僕に気があるのに気が付いていたみたいで
上手くいってくれればと思っていたそうだ。

 女子高校生としての生活も上手くいって、女性として彼もできた。
僕はこれからも女性として色んな事を経験出来たらなと思って、期待に胸を膨らませた。







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