おはようからおやすみまで
 作:あるべんと



年の明けたばかりの、冬の寒い日。

「おはよう、美幸お姉ちゃん」

私の朝はいつもこの言葉から始まる。
朝が弱い私をいつも起こしに来てくれる美咲。
私の自慢の妹だ。

「えぇ、おはよう美咲」

「今日の朝ごはんは和食にしてみたの。早く支度して食べよ!」


我が家は父と母と私、そして美咲の4人家族だが、今は両親は単身赴任で不在だ。
もう高校生なのだから、大丈夫でしょうとか言われたが。
何はともあれ、2人で慎ましく仲良く暮らせていると思う。

「うん、今日のご飯も美味しいわね。」
「えへへ、ありがと!」

そして2人揃って登校する。

一応、一学年離れてはいるのだが背格好は良く似ており、顔立ちも似ていたため双子と間違われることも多かった。
それを嫌がったのかは分からないが、私は長髪、美咲はショートヘアーと髪型で差をつけていた。


この日常が、何よりも幸せだった。

それは、突然終わりを告げた。


今日も学校が始まった。

特に変わりのない、普通科の共学のふつーの高校。

「ん、今日は國枝は休みか。連絡来てないようだが…まぁいいか。」

國枝…下の名前なんだっけ。
よく分からない、隠キャの男子。

どうやら無断欠席しているらしい。

と言っても何か変わる訳でもなく、何時ものように日常は過ぎていく。



放課後、美咲は家事のこともしたいと言っていたので部活をやっていない。
一方私は、両親が居なくなる前から生徒会役員をやっていたため、それを続けていた。
少し美咲に申し訳なくなるが、いつも好きでやっているから、と微笑んでくれていた。
さて、スマホを見ればLINEが数件。
幾つかはよくある宣伝のやつであったが、美咲からも届いていた。

今日の晩御飯何がいい?

スタンプ付きの可愛いやつだ。
私は、

ハンバーグがいいな!

とスタンプ付きで送った。
そしたら、

りょ!

と返ってきた。
いつもの、私たちの会話である。
今日はハンバーグか…楽しみだな。


年が明けると、生徒会は途端に忙しくなる。
卒業式と入学式の準備でてんてこ舞いなのだ。
いつもなら5時には終わる仕事が、もう7時を回ろうとしている。
美咲、待ちぼうけているよね…
私はLINEで

遅くなってごめん!今から帰るから!

と送った。


…返事は無かった。
連絡遅くなったことに拗ねてるのかも…




時は少し戻り

美咲は両手に本日の献立であるハンバーグの材料を抱えて帰宅した。

「うー寒い寒い。」

今日も日中ですら温度が上がらず、夕方になると氷点下に近くなる。
そのせいでやはりお手洗いと言うものは近くなるのだ。
美咲はスーパーの袋をリビングの机に置くと、直ぐにトイレに向かった。
タイツとお気に入りの薄緑のショーツを下ろし、便座に座る。

ショワアアアアア…プシッ

「はぁぁ〜」

やはり自宅でするトイレは気分がいいものだ。
気が抜けたのか頬を緩めながら、最後の一滴まで出し尽くす。
その後、腰を少し浮かせてお尻の方からトイレットペーパーで股間を拭き、便器に捨てた。


その瞬間である。


ズチュッ!


お尻の穴に強烈な違和感。

まるで、ウォシュレットの水がお尻に入ったような、それが何十倍にもなったような感覚。

「ひっ!!??」


ズボボボボ!!!


便器に座っているせいでどうなっているのかさっぱり分からない。
逃げなくては、立ち上がらなくては…!
すると下腹部がグイッと押し上げられる感覚。
便器から尻が離れ、足も地面から離れる。
身体が…浮いている!?


彼女の尻から進入しているのはスライム

恐らく、下水からこの家に忍び込んだのであろう。

「やっ…やっ!!!」

足はタイツを膝上までしか下ろしてないせいで全く動かせない。
なんとか逃れようと身体をよじり、手で壁を引っ掻くが壁紙が剥がれるだけで、どうにもならない。

スライムは更に美咲の体内へと進入していき、彼女は徐々に動かせなくなっていく下腹部に恐怖を覚える。

徐々に、ヘソのあたりに到達し、恐らく胃に到達したところで猛烈な吐き気に襲われる。
もはや自らの意思で身体を動かす気になどなれなかった。

「うう…っぷ…」

更に登る…登ってくる。
このまま口から出るつもりか!?
と思ったところで、スライムは胸の辺りで上昇を止めた。

美咲の身体はお腹がから胸にかけて大きく膨らみ、身体を反らせている。


ドクン!!


心臓が大きく鼓動した。

何が起きているのか彼女は直感的に理解した。

スライムは、心臓に血液として染み込み始めている。

スライムが混じることで、粘度の増した血液を送るために、心臓が強く、恐らくスライムによって鼓動させられているのだ、と。

そして悟った。
こいつは私を乗っ取る気なのだと。
冷えた身体に温かい飲み物が染み渡るように。
文字通り骨の髄まで染み渡るのだ。
自分の身体がじわりじわりと自分のものでなくなっていく感覚がわかる。
圧が増した、皮膚の表面の血管がどんどん浮いてくる。
それがスライムの最前線。
心臓の鼓動と共に、尺取虫のようにじわりじわりと。
終わりを告げる濁流。

「お、ねぇ…ちゃん…」

顔の血管も膨らみ、そして目、脳に達した時彼女の意識はブラックアウトした。
それが、美咲の発した最後の言葉となった。


美咲は、心臓の鼓動と同期するように、ビクン、ビクンと痙攣を続けた。
また、皮膚の表面は心臓を中心として、水に石を投げ入れたかのような波紋を描いていた。
その痙攣は、徐々に徐々に広がっていき、最後に足先まで到達する。
その後、波は少しずつ治り、また全身から浮き出ていた血管も元の位置へと戻っていった。
どうやら乗っ取りは一通り済んだらしく、スライムは彼女を便器へと下ろした。
吸収されきったのか、膨らんでいたお腹は完全に元に戻っており、残ったスライムは美咲の膣の中や更に腸内へと進入していった。


「んあっ…んんっ…」


敏感なところを触られ、無意識に声が出てしまう。
美咲の身体は、人外のスライムによって蹂躙されてしまっていた…


ぬるっ…ずちゅっ


どうやら最後のスライムが入りきったようだ。


目を開けた美咲は、身体をペタペタ触り、特に手や足の先などの末端部をよく確認してから、にんまりと笑った。

そのまま、何時ものようにタイツをあげ、水を流してトイレを後にした…


その後の美咲の行動だが、まず自分の荷物を自室に置き、そして洗濯物を取り込みはじめた。

てきぱきと、いつものように。

だがそこでふと動きが止まる。
手に取ったのは、ライトブルーの、くたびれた少し子供っぽい下着。
美幸のである。
長く使っているお気に入りというのとは美咲はよく知っていた。
迷わずクロッチ部分に鼻を当てると、すぅーはぁーと深呼吸を繰り返す。
いつも使っている柔軟剤の香りと、仄かに漂う姉の秘所の香り。
彼女は堪らなくなり、制服を脱ぎ出した。
更に自分の下着も放り投げ、全裸になる。
両手で姉のショーツを持ったまま立ち、数瞬息を整えてから、一気に履いた上に、グイッと自分の股間に食い込ませる。
いつも姉に触れている部分を、間接的に触れさせている背徳感に、美咲の股間は愛液を更に分泌させた。
そして、もうセットになっているブラジャーもスムーズにつける。
フロントホックになっており、外すのも簡単そうだ。
そして、いつも姉が部屋着で使っている柔らかい生地のショートパンツとタンクトップも上から着込んだ。
姉の香りに包まれながら、美咲は自分の体を抱きしめた。
ペタンと女の子座りになりながら、ブルッ、ブルッと震える。
どうやら絶頂してしまったらしい、顔が上気していた。
そうこうしている間に、大分時間が経ってしまったようだ。
美幸から、今から帰るというLINEが届いたのだ。
美咲は服はそのままに、急ぎ洗濯物を片し始めた…



「ただいまー」

美幸は、大急ぎで帰宅した。

「おかーえりー♪」

恐る恐る帰ってきたが、どうやら美咲は上機嫌らしい。
ホッと胸を撫で下ろしたところで、彼女は固まった。

「え、どうしたの、その格好…?」

美咲が、自分の服を着ている。
いや嫌悪感があるわけではないが、なんとなく変な感じがした。

「なんか着てみたくなったからちょっと借りてるね♪」

まぁ、美咲が上機嫌ならいいか。
そう自分を納得させて、リビングへと向かう。

「あ、お姉ちゃんごめんね、まだ準備できてなくて…」

そこには恐らく持って帰ってきたままであろうスーパーの袋が。
いつもの彼女ならすぐに冷蔵庫に入れているのに…

「っとと、トイレトイレ…」

やはり姉妹か、同じように体を冷やした美幸も、鞄をリビングに置いてトイレへ向かう。
だがそこでみた光景は。

「なにこれ…」

何故か天井近くの壁だけズタズタに引き裂かれている。
これはどういうことか。

「ねぇ美咲、これどういうこと…?」

「えっ、何が…?」

「ねぇ、美咲。今日…いや、帰ってきてから何か、変だよ?何かあったの?」

彼女は心底妹の事を心配した。
気づかない方が幸せだったと言うのに。
いや、気づかせたのだ…スライムが…

美咲は、少し躊躇ってから切り出した。

「うん…ちょっと話があるの、お姉ちゃんの部屋に行っても、いいかな?」


その後は二人黙って二階の美幸の部屋に入った。
美幸は自身の勉強の椅子に、美咲は美幸のベッドに向かい合うように座った。
美咲がベッドに座ると、ギシィと大きく軋無音がする。だが何も喋り出そうとしない。
重い沈黙を破ったのは、やはり姉であった。

「それで、美咲。一体、どうしたの?」

それを受け美咲は顔を上げて告げた。

「お姉ちゃん!私ね…スライムに乗っ取られたの!!」

「は…?」

美幸はそれを理解することができなかった。
いや、常人ならまず理解できない、よくて冗談はよせと笑えるかどうかだ。
だが、畳み掛けられる。

「ウプッ!!」

美咲は涙目になりながら鳩尾を殴られたかのように腹部を抑える。
それに美幸は腰を上げ駆け寄ろうとするが、次の瞬間彼女は凍りついた。

「ンゲエエエエエエエ!!!!」

今まで聞いたことのないような妹の呻き声。
ここでようやく、目の前にいるのは本当に妹なのか、との考えに至る。

「ひっ…!」

顔を上げた美咲の口からは、大蛇のような太さのスライムが顔を出していた。
恐怖する美幸。
逃げるために部屋を飛び出そうとするが、それは叶わなかった。

「やめて、来ないで…!」

立ち上がった美咲のショートパンツの隙間からも二本のスライムが伸びており、自らの足に絡みついていた。
美咲の体温で温められていたからか生暖かく、スライムのぬめりの他に美咲の体から分泌された体液のぬめりが、スライムから滴り落ちていた。

「ングッ!ズゾゾゾゾッ!!」

口から出ていたスライムが美咲の体に戻り、そしてもう一度彼女の口を開かせた。

「ねぇ、美幸さん」

それは、美咲の口調ではない、きっとスライムの口調だ。

「アンタ、誰…出て行きなさいよ…妹から…!」

震える声を絞り出すように投げつける。
彼女にできる精一杯の抵抗であった。

「もう大体見当ついてる癖に。國枝だよ。」

「なんでこんなこと…!」

今日無断欠席していた國枝、まさかこんなことをしていたとは…

「俺が休んでも特に何も変わらなかっただろう?俺は他の人になりたかった。それだけだ。」

美咲の顔で國枝は残念そうに語る。
その表情からは何があったのかは全く読み取れない。

「だからって…なんでよ!なんで美咲なのよ!!!」

大切な妹をよくも、殺気の籠った目で睨みつける。

「返して欲しいんだろ?返してあげるよ。」

返事は、あっさりしたものであった。
飽きたおもちゃを放り出す子供のようだ。

「は…?」

「ただし、美幸さん、君の身体と交換だ。」

これが目的か、なんで下衆な男であろう。

「な、何よ…嫌よ、そんなの…」

「その気になれば、この身体を殺すことも…いや、この容姿なら引く手数多かな…」

ニヤニヤと楽しそうに國枝は語る。
美幸が選ぶ事ができるのは、一つだけしかなかった。

「やめて!それだけはやめて!分かった!私の身体差し出すから!!」

泣きそうなほど悲痛な声。
それを聞いた國枝は口角を釣り上げた。

「ふふっ、ありがと、お姉ちゃん♪」



ゆっくりと近づき、美咲は美幸にキスをした。
舌を絡める濃厚なディープキスだ。
動きが治ったと思ったら、美咲がカタカタと震えだす。

ンゴッ、ンゴッ

と嗚咽を繰り返していた。
そのまま温かいスライムが美幸の中へと入っていく。
異物感に美幸は目を見開いた。
目の前にあるのは、鼻を大きく広げながら痙攣し、目は左右別々の方向を向いた無様な顔の美咲であった。
その姿に美幸は心の中で涙し、目をそっと閉じた。

どれだけ時間が経っただろうか。

美幸の体の感覚はいつの間にかなくなっていた。
勝手に目が開き、美咲と向かい合う。

「お疲れ様。これで晴れて美咲さんは自由の身だ」

(ほんとに…?)

美幸は恐る恐る聞いた。
身体の主導権を握られているのも恐怖だが、それでも妹を守れたと思うと安堵の気持ちが溢れる。
すると、美咲も目を開いた。

「んっ、お姉ちゃん…ありがと…」

いつもの美咲の口調。

あぁ、これでやっと…

「お陰様で、二人とも乗っ取れたよ」

(は…?)

呆然。

「滑稽だね、美幸さん。もう手遅れだったんだよ!」

(どういう、ことよ…!!)

「ねぇ、美咲。私、おしっこしたいなぁ」

「ふふ、待ってねお姉ちゃん♪」

戸惑う美幸を置いておいて、二人はスカート、ショートパンツ、ショーツを脱ぎだす。

「んっ、あぁ…♪」

ミチミチミチッ

美咲の肛門から出てきたのは、全て美幸に移ったはずのスライムだった。
その先端は、露わになった美幸の秘部に接続される。

「んっ…はぁぁぁぁぁ♪」

美幸はそれを感じると、股の力を緩めておしっこを排出しだす。
それは下に垂れることもなく、スライムへ全て吸収されているようだった。

「ふふ、お姉ちゃんのおしっこ初めて飲んだけど、美味しい♪」

(なんで、なんでよ!?騙したのね!!)

「騙すなんてとんでもない。美咲、見せてあげて?」

錯乱状態に陥るのを尻目に、美咲は上半身も脱いだ。

「んんっ…ほらみて、本物のお姉ちゃん。私ね、全部ぜーんぶスライムに乗っ取られちゃったの。」

そこで見せたのは、触ってすらないのに動く美咲の乳房であった。

「こうして内側から乳首をにゅーんってすると、あぁっ、これ思ってたよりすごい…♪」

(な、な…)

國枝はトドメとばかりに告げた。

「美咲は塗りつぶされちゃってたの。これを見せるためにわざわざ意識だけ残しておいてあげたけ、ど…」

もはや美幸は何も言葉を発せない。

「私も塗りつぶしてあげるね?」

「じゃぁ、おやすみなさい、お姉ちゃん」

美幸が最後に見たもの。

それは今まで何千回と繰り返してきた妹の挨拶。

全てが、本物なのに。

全く違って見えた。

これが美幸の、最期の記憶だった。



おはようからおやすみまで 終






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