幸運の指輪
作:T-MC


ビジネスホテルの一室。

最上階のVIPルームで俺は今日初めて会ったばかりの女性とのセックスを楽しんでいた。
「ふふふっ、今日は本当についてる。」
俺が笑うと女性もつられて笑う。
さっきまで飲んでいたアルコールがまわってきているのか、女性の顔は少し上気していた。


----------


俺は泊まりがけの出張でこの町に来ていた。
商談も滞り無くうまく行き、余った時間で久し振りのパチンコをしたところ大勝ち。
荷物にならない景品を探していた時に、ふと目についたのがこの「幸運の指輪」だった。
普段の俺ならそんなもの興味も示さなかっただろうが、ツキがまわっていた俺は勢いでその指輪を景品として交換した。

「ふぅ〜ん、幸運の指輪、ねぇ〜。」
(どうせならもっとマシなモノにすれば良かったかな?)
パチンコ屋を出て少し後悔をしながら、指輪の入ったボックスを開き早速指にはめてみる。
何の変哲も無い指輪だった。
(デザインもイマイチ…。今日はツイてると思ったけど、結局最後は損したか?)
俺はそのまま予約をしていたホテルへと向かった。

ホテルの受付でチェックインする。
対応してくれたフロントの女性が俺好みだった事に、さっきの後悔はすっかりふき飛んでいた。
(やっぱ、今日はツイてるかも…)
「お客様?」
「は、はいっ?」
ぼーっと女性の顔に見とれていた俺はふと我にかえった。
「本日ご予約のお部屋、シングルということでしたが、大きめのダブルのお部屋が大分空いておりますので、
お値段そのままでそちらにランクアップさせていただきました。」
「え?本当?ラッキー!」
俺はキーを受け取ると、フロントの後ろにある看板をチラッと見た。
成る程、シングル料金でダブルの部屋はかなりお得だった。
その列の一番上を見ると「VIPルーム」の文字が見える。
「ちなみに…あのVIPルームっていうのは?」
「はい、最上階にあるスペシャルルームです。普通のビジネスホテルには無い高級感が味わえます。」
「へぇ?」
「本日空いておりますが、そちらになさいますか?ただお値段は正規の金額になってしまいますが…」
俺は表示の横の金額に目をやって慌てて首を振った。
「まさか!そんな贅沢出来ませんよ。」
キーを持ってそそくさとフロントを後にして、俺はチェックインした部屋へと向かった。

部屋の中はさすがにシングルよりも見た目でわかるほど広かった。
(いやー、やっぱり今日はツイてるみたいだ。)
おれはスーツのままダブルベッドに横になり大きく背伸びをする。
「うーん!ベッドも広くて快適…」
ふと、ポケットから黒いボックスが転がり落ちた。
「ん?これなんだっけ…?」
そういえば、さっきのパチンコの景品で指輪に交換したんだった。
改めてボックスを開けてみると、さっきは気づかなかったが何か紙が入っている。
「なんだ?証明書みたいなものかな……。」
俺は綺麗に折り畳まれたその紙をゆっくりと開いていった。
「ん?説明書って書いてあるぞ。指輪に説明書って一体なんだ?」

”この指輪を指にはめることで、指輪はあなたの魂と連動します。
 そして以下の魔法の言葉を唱えると、あなたの魂の一部が指輪から解き放たれ…”

「ははっ…なんだこりゃ?魔法?まいったな、こりゃ子供向けの玩具かなんかだったか…。
そんなものに今日の勝ち分を全部使っちまっただなんて…やっぱりツイてないんじゃないか?」
俺はその説明書を放り投げると、天井を見上げて自分の指にはめたままの指輪を改めて眺めてみた。
「こうやってみると、何て言うか確かにちゃっちく見えてきたぞ…。
ははっ、子供の玩具か。確か説明書にはこんなふうに書いてあったな…。」
俺は中指にはめていた指輪を人差し指に移し替え、銃を構える様にして弾を打ち出すような真似をしてみた。
「…タマシイ…発射…!」
説明書に書かれていた言葉を呟くと、異変が起きた。
俺の指先から天井にむけて何かが飛び出したのだ。
「…え?…うそ…」
その飛び出したモノは天井に向かってものすごい勢いで発射され、激突寸前そのまま空中に留まった。
まるで煙のようなその球状の塊は、質量が無いかのようにただ空中を浮遊している。

俺は慌ててついさっき放り投げた説明書を拾い上げた。
そして説明書と空中に浮かんだ球状の物体とを交互に見る。
「…ほ、本当に出た…。ってことは、あれって俺の魂の一部なの…か?」
俺は空中の球に向かっておそるおそる心の中で動くように念じてみる。
するとどうだろう、その空中に浮かぶ球は俺の思った通りに右に左にと動きはじめた。
「…うそ…本当に思い通りに動く…」
俺はその魂の球を動かす練習をしながら、さっきは流し読みした説明書をもう一度じっくりと読み返してみた。

「…ここに書いてある事が本当なら…いや、今目の前で起きていることが既に本当なんだから…。」
俺は唾を飲み込むと、空中に浮かんでいる球、いや俺の「魂の一部」を動かし始めた。


部屋から外に出ると、俺は同じフロアにあった自動販売機エリアへと向かった。
俺の後ろを先程発射した球がゆっくりとついて来る。
いや、俺がそう念じてついて来させているといったほうが正確かもしれない。
(とにかく誰か実験体になりそうな相手はいないか…?
 ホテルは個室だし、かといってわざわざ部屋に訪問するには…まだ半信半疑なこの状態ではリスクの方がでかいしな)
そんなことを考えながら自動販売機フロアにつくと、運良く誰かいる様子だった。
(おっ?丁度良さそうな相手がいるぞ。)
若い女性客が一人、自動販売機でビールを買うところだった。
(うーん…ぽっちゃりしてて全然俺の好みじゃなけど…、まあ他に誰もいないし、とりあえずこいつで実験だ。)
俺は魂の弾をその女性の顔の辺りに飛ばしてみせた。
どうやら彼女にその球は見えていない様子で、チラッと俺の方を見ただけでまたすぐに自販機の方を向いてしまった。
(なるほど、この弾は他人には見えていないのか…)

女性は自販機でビールを購入すると、お釣りを取ってその場を離れようとした。
(おっと、まだ実験の途中なんだ。え…と、こんな感じか?)
俺が念じると同時にその球が女性の顔の辺りにまとわり付き、そのまま鼻や口から女性の中へと入り込んでいった。
「…ひっ…」
(おっ…な、なんだこの感覚…。へ、変な感じ…)
女性は一瞬息が詰まった様に喉を鳴らし、その場に立ち止まってしまった。
(うまくいった…のかな?)
なんだか視界がダブっているような、不思議な感覚に戸惑いながらも、
俺は念のため立ち止まったままの女性に話し掛けてみる。
「あのー、どうしたんですか?」
不思議な感覚があった。
自分の声が外から聞こえたかの様な感覚…。
ただ俺が話し掛けても女性は何の反応も示さない。
(よし…さっきの時と同じ様に念じてみるか…)
俺が女性に向かってこっちを向くように念じてみると、女性はその通りにこっちに顔を向けた。
自分の視界に自分の顔が見える。
(うおっ!?これって、こいつの視界って事なのか?)
試しに目を閉じるように念じてみると女性は黙って目を閉じる。
同時に視界から俺の姿が消えた。
(ははっ、間違いない!こりゃ、すげーぞ!)

女性は閉じていた目を開いて無表情のまま俺の前に立つと、ぎこちない動きで両手を上に上げた。
そしてそのまま掌を開いたり閉じたり繰り返している。
(おおっ、思い通りに動かせる!まだ上手く慣れないけど…)
俺は女性に向かって手をかざし指揮者の様に小さく手をふってみせた。
その動きに合わせて、女性は両手を広げまるで鳥の真似をしているように大きく羽ばたいて見せる。
「よし…いいぞ。それ、それ!」
俺が念じると女性は両手をばたつかせながら、その場をウロウロと歩きはじめた。
「おおっ、良い感じだ。何となくコツが掴めてきたぞ。」
顔は相変わらず無表情ながら、身体はぎこちない動きから徐々に滑らかな動きに変わっていき、
だんだん手や足の動かし方も自然な動きになってくる。
(成る程…こんな感じか。よしよし、慣れてくれば結構簡単なもんだな。)

「あー。あー。」
突然、女性は声をあげはじめる。
俺がそう念じた通りに、喋らせることも出来るようだった。
「テステス、ただいまマイクのテスト中。」
(へー、こんな声してたのか。)
「へー、こんな声してたのか。」
まるで俺の声がこの女性の声になったかのように、俺の思った通りの言葉を喋らせることが出来る。
「成る程、こりゃ面白い。何でも好きなことをこいつに喋らせることが出来るぞ。」
女性は無表情のままそう言って、また両手をばたつかせたり片足立ちをはじめたりする。
「今度は顔だな。とりあえず笑って…へへへっ」
女性は俺の台詞を声にだしながら急に笑顔になった。
「怒って…」
そういうと怒りの形相に、
「泣いて…」
続けて泣きそうな表情に変わる。
その百面相の様子を眺めながら、俺は女性の身体を自分の意のままに操る練習を続けた。
次々と表情を変えながら、独り言をしゃべりつづけ、なにやらしきりに自分の身体を動かしている女性は、
もはや完全に俺の思い通りに動く分身になっていた。

「よーっし、もう完璧にマスターしたぞ!この辺で一度身体から俺の魂を抜き取る実験をしておくか。」
女性はニヤニヤしながらそう言うと、歩き回るのを止めて俺の目の前に立った。
「さて、魂を抜き取るのは、確かこうするって書いてあったな…」
俺の代わりに女性がそう呟く。
同時に俺の方は指輪をはめた人差し指を女性の方へ向かって突き出した。
そのまま指先に念を集中すると、女性の口からさっき入り込んだ煙状の球体がモワモワと吹き出してきた。
そして直ぐに俺の指先に向かってその煙が吸い込まれていく。
「………けほっ、けほっ!…」
と同時に、女性はその場で2〜3回軽く咳込んだ。
(よし、これでこいつの身体に入り込んでいた俺の魂は回収できた。後はこの後の反応を観察して見よう。)
女性は一瞬驚きの表情をしたが、直ぐに軽く会釈をすると俺の脇を通りすぎようとした。
そこでようやく気がついたのだろう。
地面に落ちていた自分が今買ったばかりのビールを拾い上げ、そこで不思議そうな表情を浮かべた。

きっと今買ったばかりのはずのビールがぬるくなっている事に気付いたんだ。
(どうやらこの反応をみると、俺の魂が入っていた時の記憶は残っていないようだな。こいつは都合が良い!)
女性は相変わらず不思議そうな表情を浮かべたまま、自分の部屋へ戻ろうとまた歩きだした。
俺はその様子を観察しながら女性が歩いていく方向をそれとなく目で追う。

どうやらこのフロアの奥の部屋らしい。
一番奥の突き当たりで、上着のポケットからキーを取り出し部屋を開けようとしているのが見えた。
(よーし、次は射程距離の確認だ。)
俺は今いる位置で先程と同じ様に指先を銃に見立てて構えると、女性目掛けて照準を合わせた。
「タマシイ発射!!」
俺の声がトリガーとなり、魂の弾丸が女性に向かって勢いよく発射された。
感覚で直ぐにわかった。
俺の魂が再び彼女の身体に入ったのだ。
鍵を開けようとしていた女性はこちらを向くと、両手で大きな円を作り俺の魂が命中したことを証明して見せた。

俺はそのまま女性の方へ向かって歩き出した。
女性はその間も手で何度も円を描いたり、水泳の平泳ぎの様な動きでその場を歩いたりしている。
いや、俺がそうさせているのだ。
一番奥の部屋へとついた俺は、早速女性に部屋のキーを開けさせようとした。
”暗証番号を入力下さい”
カードキーを差し込むと画面にそう表示された。
(そうだった!このホテル、暗証番号がいるんだった…。自分で設定するタイプだから、本人じゃなきゃ分からないぞ…!)
思わずうろたえていると目の前の女性も俺と同じ表情でうろたえている。
「ちっ、設定した本人が目の前にいるってのにな。」
どうしたものか、適当に数字を入れて見るか?と思案していると、ふと頭に4ケタの数字が浮かぶ。
なんというか…間違いない。これはこの部屋の暗証番号だ、という確信があった。
俺は女性の身体を操り、その番号を入力させた。
ピッ
電子音が鳴り、部屋の施錠が解除される。

部屋の中へと入り、俺はベッドの上へ腰かけた。
俺の前で無表情のまま女性が突っ立っている。
「さっきのは、何だったんだ?暗証番号がふと頭に浮かんで、しかもそれが当たっていた…。」
俺がそう言う。
「なんていうか…初めから知っていた…というか、思い出したと言うか…、そんな感覚に近かったな。」
続けるようにして女性が俺のセリフを引き継いだ。
「こいつの設定した暗証番号なんて、俺が知るはずもないし…。
 確かに俺の魂が入っている間は、こうやって自由自在にこの他人である身体を動かせるけど…」
俺の言葉に合わせて、女性はその場でストレッチするように前屈してみせたり、手を上げて背伸びして見せたりする。
「へ〜、俺の身体と違って柔らかいんだな。
ちょっと、ぽっちゃりした体型だけど、それでも男の俺よりは身体が柔らかいってわけか。」
俺は女性の身体を操り、普段の自分の身体では味わえない身体の柔らかさを堪能する。
「へへへ、この身体の身体能力も俺が自由に使えるって訳だな。
そりゃ、そうか。魂は俺だけど、身体は本人の身体……ん?待てよ…、身体は本人…?……。もっ…もしかして…!!」
俺はふとある想像をした。
そして、直ぐにその想像が当たっている事を確信したのだ。


「…ははっ…はははっ…!す、すげーぞ!すげえっ!」
女性は突然そう言いながら笑いだす。
「部屋の暗証番号どころじゃない!何でも分かる!
 この女の名前も、年齢も、職業も、スリーサイズも!まるで、自分の事の様に簡単にわかっちゃうぜ。」
女性は興奮したように鼻息を荒げながらそう続けた。
「確かに身体は本人、って事はつまり脳も本人って事だ。
 この身体で何かを思い出そうとすれば、それはこの身体にある脳から直接記憶を引き出すってことになる訳か。」
女性は自分の身体をだき抱える様にして、ニヤニヤと笑いだす。
「よーし…!それじゃ、肉体操作の練習に加えて、記憶の引き出し方のほうも一緒に練習させて貰おうかな。」
女性はそう言いながら着ていたスーツの上着のボタンを外し始めた。
「へへへっ、さあ、少し動きやすい格好になって貰おうか。悪いけどもう少し俺の実験台として付き合ってもらうよ。」

好みの女性では無い、と言うことが幸いした。
目の前に、自分の思い通りに自由自在に動く女がいたのなら、相手が誰であれ、いつ襲いかかってしまってもおかしくは無かった。
ただ、俺は必死に理性でそれをこらえた。
もし目の前の女性が俺の好みだったら、間違いなく、俺は耐えきれなかっただろう。
「本当、私が実験相手で良かったわ。」
「ええ、そうですね。せっかくこんな素晴らしい指輪を手に入れたんだ。本番は俺の好みの相手で楽しみたいですよね。」
「もちろんよ。でもその代わり、私の身体で存分に女の快感を味わえたでしょう?」
「ええ、おかげさまで。こんな風にまるで会話しているかのようにあなたの身体はもう自在に使いこなせます。」
「うふふ、記憶の使い方もばっちりマスターしたし、感覚の調整ももう完全に自分のものにしたしね。
 ほれっ、まるで俺におっぱいがあるかのようにこの身体の感覚を味わえる。」
女性はそう言いながら自分の胸を持ち上げ、上下に勢いよく揺らし始めた。

俺は相手の身体の動かし方、記憶の使い方から、感覚を共有したり遮断したりと行った事まで、彼女を練習相手にして完全に出来るようになっていた。
時折襲いかかりそうになる衝動をぐっとこらえて、最後はこの女性の身体で女としてのオナニーまで体験したのだった。
「さあ、もう十分練習させてもらったし、この身体はそろそろ本人に返してあげましょう。」
「そうですね。ありがとうございました。」
「あら、御礼なんて良いのよ。全てこの私が自分でしたくてしてる事なんだから。」
「まあ、全部俺がさせてるんだけど、本人が自ら進んでやっていると言う事は、一応事実だもんね。」
「そうそう、今の私はあなたの一部。あなたのやりたいことが全て私のやりたいことだわ。本人が本人の口で心からそう言ってるんだから何の問題も無しよ。」
「へへへっ、そんじゃそう言う事で。あ、服は面倒なんでそのまま全裸で良いでしょ?」
「全然OK♪本当、今日はツイてるわぁ♪そんじゃぁねぇ!」
俺は女性にドアの所までお見送りをさせると、そのまま外に出た。
(よし、最後の実験だ。)


外に出た後、俺はそのままエレベーターに乗り込む。
そして、1Fのボタンを押すとそのままドアを閉じた。
(んん…大丈夫だ…。まだ彼女の感覚があるし、記憶も読めるぞ。)
フロントへと到着し、俺はそのまま待合室のソファーへと腰を掛けた。
(ここまで来たけど、十分感覚は繋がっている。身体も…へへへっ、余裕で動かせるな。)
今頃、女性は部屋で自分の尻を撫でながら1人でにやけているハズだ。
(これで、距離が離れていても、一度魂を入れたら俺の身体として自由に操れることが分かった。)
俺はソファーから立ち上がると、ふとフロントのカウンターに目をやった。
さっき対応してくれた女性が、他の客の対応をしているのが目にとまった。
(おお、あの娘だ!…魂を回収しに戻ろうと思ってたけど…、せっかくだ、ちょっとここで試してみるか…。)

俺はソファーへと座り直し、上に向かって人差し指をピンと立てた。
念を集中すると、先ほどまで鮮明に感じていた、女性の身体の感覚が途切れ、
直ぐに人差し指に霧状のものが戻ってくるのが見えた。
(よっし、魂の回収もうまく行った。距離があっても魂を抜く事は出来るってことか。
今頃、彼女部屋で驚いているかもな。気がついたらいつの間にか全裸になって部屋にいる訳だからな。へへっ。)
俺は再び視線をフロントの方へと戻す。
受付の女性は客のおっさんに向かってカードキーを差し出し何やら説明をしている様子だ。
(よーし、仕事中悪いけど…ちょっと俺の魂を入れさせてもらうよ。)
「…タマシイ…発射…!」
誰にも見られないようにして俺は人差し指を女性に向けながら、例の言葉を小さくつぶやいた。
勢いよく俺の魂が発射され、話をしている彼女の口の中にスポンと飛び込んで行った。


「…あのぅ…すみません…?」
男の声が聞こえる。
目の前にいるおっさんが俺に話しかけているのは直ぐに分かった。
そして、俺はその様子をソファーに腰掛けながら眺めてもいる。
「あ、申し訳ありませんでした。」
俺はそう目の前のおっさんに謝り頭を下げた。
但し、その行為は俺が行った訳じゃない。
もちろん俺が謝る筋合も無い。
顔を上げた女性の視線は、目の前のおっさんではなく、その後ろにある待合室に腰を掛けている俺に向けられていた。
「説明の途中で急に…大丈夫ですか?」
おっさんの声が俺の所まで聞こえるはずも無い。
だが、今の俺には彼女の耳を通してその声が聞こえてくる。
「ええ、大丈夫です。では、説明を続けさせて頂きます。」
そして、俺の声は彼女の口を通して彼女の声として発せられる。

彼女の記憶を引き継ぎ、俺は彼女として目の前の客の対応を普段通りにこなしてみせた。
(へへへ、ホテルのフロントの仕事なんて初めてだけど、まるで普段からしているみたいに自然と出来ちゃうぜ。
 記憶が読めるって言うのは便利だよな。)
俺は彼女になり切ってチェックイン処理を終える。
おっさんは途中から目の前の人間の中身が別人になっていた事など気づきもせずにその場を去った。
当然だ。誰がそんな事想像するだろう。
一仕事終えた彼女(いや正確には俺か?)は俺の方を見つめ、まわりに気付かれないようにニッコリとほほ笑みかけるとピースサインを送ってきた。
(あははっ、いいねぇ。さっきまで練習していた甲斐あって、実にスムーズに動かせる。どれ、復習がてらもうちょっとこのまま練習しようっと。)
さらに彼女に、俺に向かってウィンクをさせたり流し眼をさせたり、まわりに気付かれない様に気を使いながらその身体の操作を堪能した。

次々と来る客に、俺はホテルの受付を難なくこなしていく。
その間も、ときどき俺の方に向かって視線を送ったり、笑顔を向ける事を忘れない。
「結構しんどいもんだなぁ…。休みないじゃないか。」
客の対応をしている彼女に代わって、俺は自分の口でそう愚痴を漏らした。
ようやくひと段落ついたのだろうか?
客足もまばらになってきた。
「ふぅ、少し落ち着いたわね。今の内に私ちょっとトイレに行ってくるわ。」
彼女の他にもう一人受付の女性がいたのだが、そう言ってその場を離れていった。
当然、このチャンスを逃す手は無い。
俺は席を立つとフロントの方へ向かって歩き出した。
彼女は俺の方をじっと見つめて、ニヤッと舌なめずりしていた。

「よお、どうも」
俺は片手をあげながら気軽に声をかける。
「むふふっ、待ち遠しかったですぅ。」
フロントの女性はそういって、俺と同じ様に片手をあげて手を振った。
「なんだい?待ち遠しかったって?俺に声をかけられるのが?」
俺はわざとらしくそう尋ね、フロントに手をついて女性を見つめた。
「ええ、あなたにこうして声をかけてもらえるなんて、私すっごく幸せですぅ。」
「へぇ?、そうなんだ。」
女性はフロントに置いた俺の手に自分の手を重ねる様に置いた。
「あなたが受付に来た時から、ずうっとあなたの事ばかり考えていました。」
「へへへっ、それで?」
「私、あなたに一目惚れしてしまったみたいなんですぅ。あなたみたいな素敵な男性に初めて会いました。」
「ふんふん、それで?」
「逞しくて男らしくてイケメンでぇ…え〜と…優しくて、そんでもって格好よくってぇ…」
自分が言わせているとはいえ、くすぐったくなるようだ。
「もう全てが最高です!私の理想の男性ですっ!!」
「へへへっ、そうですか。」
「素敵っ!大好きっ!愛してるっ!」
「はっはっは、照れるなぁ」
女性は俺に操られるまま、笑顔で俺に向かって称賛の嵐を浴びせてくる。
「自分で自分を褒めてるだけなんだけど、こうして他人の口から言ってもらうとやっぱ本当に褒められてるみたいで嬉しいもんだなぁ。」
「ああぁん、素敵ぃ!その照れてる姿も格好イイ!」
「いやぁ、そうですか?なはははっ」

そんなことをして遊んでいる内に、トイレに行っていたもう一人の女性が戻ってきてしまった。
(ちっ、早いなぁ…しょうがない、ここはごまかして…)
「お客様?他にご質問は…?」
「いえ、有難うございます。もう大丈夫です。」
俺はそういってまた待合室の方へと去って行った。
トイレから戻ってきた女性が、彼女(俺)に何かあったのか聞いてきたが、俺は適当にごまかしてやった。

それにしても、フロントの仕事と言うのは案外忙しい。
お気に入りのこの娘に俺の魂を入れて…と思ったが、次々と客がくるのと周りの目もあって、結局ただ俺が仕事を肩代わりしているだけのようになってしまっていた。
(うーん、こんなはずじゃ…。せっかくこの娘に魂を入れてもなぁ…。やっぱ今日はツイてないのか?)
俺は指先を女性にむけて魂を回収する。
女性の口から俺の魂がふわっと漏れ出てくるのが見えた。
(おっ?出てきた出てきた…。ん、まてよ?このまま回収しないって事も出来るのかな?)
試しに俺はこちらに呼び戻すのでは無く、隣の女性に向かって飛ぶように念じてみた。
思った通り、俺の魂は隣で受付をしているもう一人の女性の顔の周りに移動した。
(よーし、それじゃ、このまま彼女に侵入だ!)
そして、彼女の耳の穴へスルスルと入り込んで行った。


本日これで三人目だ。
視界が二つになる感覚、身体が二人になる感覚、見知らぬ記憶を手に入れる感覚、それらを一瞬で感じ取れる様になっていた。
「…になります。よろしいでしょうか?」
そして、彼女の台詞をそのまま俺が引き継ぐ。
(ふふん、大分慣れてきたぞ。それにしても、いちいち回収しないでもこうやって肉体を乗り換える事が出来るのか。こりゃいいや。)
俺がそうほくそ笑むと、つられて女性の顔もニヤリと笑ってしまっていた。
(おっと、いけない。表情を戻させて…)
視線を隣に向けると、さっきまで俺の魂が入っていた彼女は急に対応している相手が変わってしまっていることに戸惑っている様子だった。
「どうかしたの?仕事に集中しなさい!」
俺は彼女の耳元でそう囁く。
「あっ、はい、すみません、主任」
そう、今の身体は彼女の上司だ。
身体や記憶もそうだが、こうやって相手の立場でさえも全て俺のものに出来るってわけだな。
「くふふっ、こりゃ良いわ。今やこの俺はこのホテルの主任って事だ。」
俺は思わず彼女の口でそうつぶやいてしまった。

他の客が受付が終わるのを見計らって、俺は自分の分身である彼女のもとへと近づいて行った。
「すみません。」
俺はそういって声をかける。
「はい、何でございましょう?」
俺は彼女にそう答えさせる。
まさか、これが一人による会話だなんて、誰も思うまい。
そう思うと可笑しくなり、思わず俺も彼女も自然と顔がにやけてしまっていた。
「部屋の布団がシワのままでしたよ。どうなってるんですか?」
「ええ〜っ!そっ、それは大変申し訳ございませんっ!」
勿論、俺のでっちあげだ。
それに対しちょっと大袈裟な位、俺は彼女に頭を下げさせる。
「ちゃんと部屋の掃除が終わってなかったんじゃないんですか?」
「お客様のおっしゃる通りでございますっ!なっ、なんとお詫びを申し上げれば良いか…!」
「一体どんな管理をしてるんです?」
「かえす言葉もございません〜!!どうか、どうかお許しを〜っ!」
怒る(ふりの)俺に対し、ただただ頭を下げて平謝りの彼女。
これはこれで中々気持ちが良いもんだな。

「お詫びにはならないかも知れませんが、せめてお部屋を代えさせていただきます。」
「いやー、そこまでしてもらわなくても…」
勿論断るつもりなどない。
それどころか俺がそうさせてるんだが、周りの目を気にしてあっちから提案する形をとらせているに過ぎない。
「いえ、お客様。ここは全て主任であるこの私の責任においてそうさせて頂きます。どうか、ご了承下さいませ。」
「いやいやいや、困るなぁ」
「どうか、どうかお願いいたします。この私に責任を取らせてくださいませ〜!」
俺は主任の女性にそう言わせると俺に向かって深々と頭を下げさせる。何回かそんな押し問答を楽しんだ後、
(むふふっ、気分いいなぁ〜、でもこの辺にしておこうかな、彼女に悪いし。)
「わかりました。頭を上げて下さい。そこまで言うのでしたら…」
「有難うございます〜。」
俺は女性にそういわせるとパソコンの操作を始めさせた。
俺が彼女の記憶を使い、彼女の名義で部屋の変更をさせてやっているのだ。
もちろん、最初の受付の時に気になったVIPルームへだ。
「…これで良しっと…。へへへっ、お客様、ツイてますね。特別なお部屋が丁度空いておりました。もちろんお値段に追加はございません。」
そういって女性はニコニコしながら俺にVIPルームのカードキーを渡してきた。
俺は快くそれを受け取る。
「いやー、なんか申し訳ないですね。」
「いえいえ、私は主任ですから。この位なら私の権限で簡単に処理出来る範囲ですわ。」

「そんじゃ、ご苦労さん」
俺はそう言いながら、指輪をはめた指先を目の前にいる受付の女性に向けた。
スポンッ
という音がする分けではないが、そんな感じで彼女の口から俺の魂が飛び出し、指している指先へと戻って来る。
「………え?…あ…」
突然正気に戻った彼女は一瞬目が点になっていたが、直ぐにまた俺の次に来た客の相手を始めた。
(うーん、これで俺の部屋はVIPに昇格したわけだけど…一緒に楽しむ相手がいないのは淋しいな。
 受付の俺の好みの娘も、あの様子じゃ忙しすぎてダメみたいだし…)
俺は受けとったカードをヒラヒラさせながら何気なく周りを見回していたが、どうもこういうホテルはサラリーマン、特に野郎ばっかりが集まる様だ。
好みの娘どころか、女性の姿すらも見当たらなかった。

仕方ない。
俺は諦めてエレベーターの方へ向かうと、上へ行くボタンを押した。
(取りあえず俺の荷物をVIPルームへ移動させるか。)
一旦自分の部屋へと戻り、荷物を取ると最上階へ移動した。
部屋の入り口でカードキーによる暗証番号をセッティングすると、部屋の中へ入った。
「おお〜っ」
思わず声が漏れる様な部屋の広さだ。
(すごいな、VIPルーム)
俺はちょっと興奮気味に部屋のあちこちを見て回る。
(やっぱり、サラリーマンが1人で一泊するような部屋じゃない。ここはやっぱり誰か俺と一晩つきあってくれる相手を探さねば。)
俺は部屋を出ると、再びエレベーターに乗り込んでフロントのボタンを押した。

エレベーターが動き出すと、直ぐに次のフロアで止まってしまった。
(ん?誰かのって来るのか。ま、どうせ、どっかのおっさんだろうけど。)
俺は陣取っていた位置から、壁際に移動しスペースを作った。
別に俺以外誰も乗っていないんだし、そこまでする必要も無いのだが、何と言うか習慣で思わずそうしてしまうのだ。

エレベーターのドアが開き、俺は一瞬目を疑った。
想像すらしていなかった姿が目に飛び込んできたからだ。
スーツを着たスタイル抜群の女性。
髪は明るくロングのストレート。眼鏡が仕事が出来る女を演出している。
おっさんだと思っていた俺は、思わずその姿に見とれてしまっていた。

女性は男のそういった視線には馴れているのだろう。
俺の方をチラとも見ずにスッと中へ入ると、俺に背中を向ける様にして立った。
移動した時の女性の香水の香りが俺の鼻をくすぐる。
身長は俺とさほど変わらなく感じる。
ヒールが高い分、わずかに俺の方が上だろうか?
そんな俺の視線などまるで気にせずに、女性はエレベータのボタンを押してドアを閉めた。
その瞬間、この密閉された空間は、俺と女性の二人だけになった訳だ。
(やっぱり、今日はツイている!!)


エレベーターがフロントについた。
ゆっくりとドアが開く。
俺に背を向けていたはずの女性は、今、俺と向かい合うようにして立ち、それどころか俺に向かって笑みを浮かべていた。
「本当、今日は、ツイてるわ。」

俺と女性は同時にエレベーターを出ると、横並びでフロントへと歩いて行く。
俺は好みの娘の方へ、彼女は主任の方へと同時に向かって進み、全く同時に声を上げた。
「「少し外出してきます。」」
俺たちのその行動に受付の二人は、俺と彼女を交互に見る。
でもさすがに偶然だと思ったのだろう。
直ぐにお互いにキーを預けなくても良いと言う事を返答してきた。
「「あ、そうか。カードキーだからフロントに鍵を預けなくても良いんですね。」」
また、俺と彼女は同時にそう言うと、同じタイミングで軽く頭を下げて、同時にその場を去っていく。
(くっくっく、ちょっと悪戯が過ぎたかな?)
恐らく受付の二人は俺たち二人を見ながら驚いているだろう。
中身が同じ人間だなんて想像も出来ないだろうからな。
ましてや、自分たちもさっきまではその人間だったなんて。
俺も彼女も口の端を緩めながら、吹き出しそうになるのを堪えて外へと出て行った。

「これから、接待ですか。」
俺は歩きながら、隣を歩く彼女に話しかける。
「ええ、そうなんです。」
彼女も歩きながら俺にそう返した。
「営業だったんですね。僕も営業です。」
彼女からは一言もそんな事は聞いていないのに、俺はそう言い切った。
「まあ、貴方も営業なんですか?お互い大変ですわね。」
彼女も俺が知っているのがさも当然の様にそう返した。
「あ、そうだ。折角だから、名刺でも貰っておくか。」
俺がそう言うと、女性は無言でその場で立ち止まり財布をバッグから取り出す。
そして、いつも彼女がそうしている様に財布から名刺を取り出すと、ニッコリとほほ笑みながら俺に向かって名刺を差し出した。
「申し遅れました。私、こういうものです。」
俺は何も言わずに名刺を受取ると、女性と見つめ合った。
「ふふふ、美人だなぁ。ところで、正確に自己紹介してもらえます?」
「そうですね、わかりました。私は、身体はそこに書いてある通り姫野瑞希です。でも実は魂は俺…、つまり私はあなたという訳ですわ。」
「なるほど、よく分かりました。つまり姫野さんはこの僕であると。」
「ええ、その通りです。うふふっ、何だか俺がこんな風に女言葉で話していると思うと不思議な感じですわ。」
「僕も不思議な気分です。でも普段の姫野さんがどんな風に会話するのか、僕には手に取るようにわかるんですよ。」
「まあっ、まるで私たち昔からの知り合いみたいですわね。」

俺達は会話をしながら、いや正確に言えば「俺」は「独り言」を言いながら、になるのか?目的の店に到着した。
「へぇ?、お洒落な店ですね。さすが姫野さん、出来る営業は店選びからちがうなぁ。どんな料理が出るのか楽しみだ。」
俺は初めから接待に参加する前提でそういった。
「おっと、そういえば勝手に決めちゃ悪いですよね。姫野さんの方から俺にお願いして下さいよ。」
「今日のお相手は先方のキーマンになる方なんです。そこで、是非貴方のお力添えを頂きたくて…。
 ご迷惑かもしれませんが、私とご一緒して頂けます?」
俺は彼女に少し上目遣いをさせ俺に頼る様な表情をさせた。
「ああ?、気分いいなぁ。もっと言ってもらおう。」
「私には貴方が必要なんです。お願いします、私を助けて下さい。貴方と一緒にいたいの!」
そのあと彼女に周りに変に思われないよう俺に耳打ちするようにさせ、
「お金は当然会社の接待費で払うし、もちろんお礼はこのあとたっぷりと私の肉体で払いますんで…へっへっへっ」
と言わせる。
「そこまで頼まれたら、僕も断れないなぁ。わかりました、引き受けましょう。」
「あぁ…なんて頼もしいお方…!」
一人芝居とは言え、こうやって相手役がいるとそう思えないから不思議だ。
まるで本当に彼女に頼まれた気分で、俺達は店の中へと入って行った。


店員から彼女が予約していた個室へと案内される。
俺は彼女の口を使い当初の予約人数から俺の分1名が増えた事を告げさせた。
「ふぅ〜」
俺はネクタイを緩め上着を脱ぐと、無言で彼女に突き出す。
彼女も当然の様に俺の上着を受け取り、そのままシワを伸ばしてハンガーにかけた。
「こりゃ、便利でいいや。」
俺は彼女の口を借りてそう呟いた。
俺と彼女は向かい合うようにして座ると、接待についての相談を始める。
と言っても、彼女も俺も同じ俺だ。声に出しての相談なんか必要無かった。
ましてや俺は彼女の記憶も自由に読めるし、彼女の脳を使ってまるで本人の様に思考する事も出来る。
はたから見れば俺たちはお互いにニヤニヤしながら見つめ合っているだけだろう。
「同じ人間と言うのは便利ですわね。」
「ええ、全く。会話でコミュニケーションを取らなくても良いんですから。」
「あははっ、今の私たちほど息の合ったコンビはいませんわ。」
「ええ、僕も全くの同感です。これ以上のパートナーはありえませんよ。」

そんな会話(一人芝居)を楽しんでいると、個室のドアが開いた。
店員に案内され、今日の接待相手が入ってきたのだ。
「お待たせしちゃったわね。あら?そちらの方は?」
年は30代位、大人の色気を漂わせる黒髪の美人。
彼女の記憶通り。
「今日はお越し頂き有難う御座います、黒木さん。ご紹介します。私の上司の佐藤(偽名)です。」
俺は彼女にそう堂々と嘘を言わせると席を立たせて俺の方に移動させた。
「どうもはじめまして。うちの姫野がいつもお世話になっています。」
俺もそれに合わせて頭を下げる。
今の俺たちに事前の口裏あわせなど必要なかった。
「そうですか。はじめまして、佐藤さん。私の方こそいつも姫野さんにはお世話になっていますわ。」
黒川さんはそう言いながら今空いた席へと着き、俺たち二人と向かい合うようにして座った。
「はじめは生ビールで宜しいですか?」
「いいえ、赤のグラスワインを頂くわ。」
(へぇ〜、なるほど。彼女の記憶どおりだな。ここは合わせておくか。)
「それではグラスワインを3杯注文しますね。」
俺は瑞希にそう注文させる。

「それにしても、今日は本当に有難う御座います。何度お誘いしても断られていたのに…。」
「あなたの熱意に絆されたのよ、姫野さん。でも、はじめに断っておくけど、お酒の席とはいえ私は口は固いわよ。いくら上司の方を連れてきてもね。」
(うっ、なるほど。彼女の記憶どおりガードが固いな…。いきなりそう来たか。)
「まあ、そんな。そんなつもりじゃありませんわ。」
俺は瑞希にそう答えさせたが、彼女の真意は既に分かっている。
接待に誘った理由、あわ良くば仕事に繋がる様な情報を欲しがっていたのだ。

俺たちはグラスワインで乾杯をすると、彼女に注文の伺いを立ててから料理を注文した。
洋食の聞いたことも無い様なメニューを彼女はスラスラと読上げていく。
俺もこの瑞希の体が無かったらチンプンカンプンだったが、今や彼女は俺の一部。
彼女の知識を使って俺も話を合わせることが出来た。
(それにしても…俺かなり場違いだよな。こんなレベルの高い店での接待なんてしたこと無いぞ。)
会話のところどころで俺と瑞希は二人がかりで情報の糸口を探ったが、黒川さんのガードは完璧だった。
必ず話をそらされるか、核心には触れないで切り上げられてしまう。
(やはり、接待する側は気を使うよな…。よし、作戦変更だ。)
俺がそう思案していると、タイミングよく黒川さんの携帯がなった。
「…。失礼、会社からだわ。」
彼女はそう言って席を立って個室から外へと出て行った。


俺は無言で席を立つ。
瑞希もそれに合わせて目の前のグラスを空にすると、俺の分、黒川さんの分と立て続けにワインを飲み干した。
さらに、机の上に置かれた料理もガツガツとわき目も振らずに食べ始める。
「量が少なくて助かったぜ。俺は店員を呼んできて机の上のものを片付けさせるか。」
個室の外に顔を出すと、黒川さんは俺たちに聞かれないようにしているのか、店の外まで移動した様子だ。
その間に俺たちは机の上を綺麗にし、まるで今来たばかりの様な状態に整理する。
「よーし、それじゃ行ってくるか。」
「よろしくお願いします。あなたの能力で是非私に協力して下さい。」
「もちろん、分かってますよ。」
俺はそう言ってかけてあった上着を着ると、部屋を後にして指先を個室のほうに向かって向けた。
俺の魂が俺の肉体に帰ってきたのが分かった。
そして、そのまま店の外で電話を続けている黒川さんの下へと向かっていったのだった。


「お待たせしちゃったわね。」
黒川さんは最初にここに来た時と同じ様にそう言いながら、まるで今初めて来たかのように部屋の中へと入って行く。
俺はその後ろをほくそ笑みながらついて行った。
「今日はお越し頂き有難う御座います、黒木さん。」
瑞希もさっき俺が言わせたのと同じセリフでそう言って頭を下げた。
その後、ちらりと俺の方を見てまた頭を下げる。
「あの、黒木さん?こちらの方は…?」
「え?ああ、彼は私の部下で佐藤君(偽名)よ。」
黒木さんはさっきまで接待する側にいた筈の俺を、そう紹介した。
「どうもはじめまして、姫野さん。黒川からあなたの事は良く聞いております。」
「あ、はい。こちらこそはじめまして。私、姫野瑞希と申します。」
名刺も出さない俺に対し、瑞希は本日2度目の名刺を俺に差し出し頭を下げてきた。
「佐藤君はね、私の一番信頼している部下なのよ。だから今日は彼も来てくれるように私の方から無理やり誘ったの。ご迷惑だったかしら?」
俺は黒川さんに堂々と嘘をつかせ、俺がここにいるのは黒川さんのせいである事にした。
これなら、本当は黒川さんと二人で話をしたかった瑞希も断れまい。
「いえ、迷惑だなんて…、とんでも御座いません。どうぞ、佐藤さんもお掛けになって下さい。」
「ええ、すみません。ありがとうございます。」

先ほどまでとは逆の立場で、俺たちは向かい合うように座った。
黒川さんの身体には当然俺の魂が宿っている。
つまり、今は黒川さんが俺にとって最高のパートナーに代わったって訳だ。
「黒川さんは赤ワインで宜しかったですよね?」
瑞希は黒川さんの嗜好に合わせてそう尋ねてきた。
しかし今の黒川さんは俺なのだ。
当然俺の飲みたいものを注文させるに決まっている。
「いいえ、生ビールを頂くわ。やっぱり、乾杯はビールに限るでしょ?」
「あ…、ええ。そう、そうですね。わかりました。佐藤さんはどうします?」
「僕も生ビールでお願いします。」
「では、生ビールを3杯注文しますね。」
瑞希はそう言うと3人分ビールを注文した。

「それにしても、今日は本当に有難う御座います。何度お誘いしても断られていたのに…。」
(来た来た。俺が言わせたのと全く同じセリフだ。へへへっ、さっきまで俺が乗っ取ってたんだから、彼女の今日のプランは全て把握してるのさ。)
「あなたの熱意に絆されたのよ、姫野さん。でも、はじめに断っておくけど、お酒の席とはいえ私は口は固いわよ。」
ここは普段の黒川さんらしく、さっき彼女が言っていた事をそのまま言わせる。
「まあ、そんな。そんなつもりじゃありませんわ。」
瑞希そう答えたが、彼女の真意は既に分かっていた。
(心配しなくても、ちゃんと今日の黒川さんはどしどし情報を垂れ流してくれるから安心しろよ。)
俺の代わりに黒川さんが口元をゆるめてほくそ笑んだ。
「ところで姫野さん、少しお顔が赤いみたいだけど、私たちが来る前にワインを3杯程一気に飲み干したりしてない?」
まさにその通り。だが彼女にその記憶は無い。
それどころか、彼女にしてみればエレベーターに乗ったと思ったらいつの間にかここに座っていたという状況なはずだ。
「あははっ、そんな訳無いじゃないですか。」
瑞希は少し変だと思っているはずだが、そんなことは微塵も出さずにそう返してきた。
(さすがだなぁ。こうやって相手される立場で見ると至って冷静な女性だと言うのが伝わってくるよ。)

ビールが運ばれてくると、俺たち3人は本日2度目の乾杯をした。
「ぷはぁ〜っ、くぅ〜っうまいわねぇ〜っ!やっぱりビールよ、ビール!」
俺は黒川さんにビールを勢いよく飲ませると、そう言わせてやった。
さっきは赤ワインを上品そうに飲んでいて鼻についたので、わざとそうさせてやったのだ。
「さすがですねぇ、黒川さん。相変わらず良い飲みっぷりですよ。」
俺はそんな彼女に向かって、いつもそうしているかの様に言ってやった。
「何か意外ですね。黒川さんって上品にワインとかで乾杯をされるのかと…。」
「あら、私はアルコールが入ってりゃあ何でもOKよ。ね〜ぇ、佐藤君?」
「そうですね。焼酎もハイボールもホッピーも大好きですよね。」
「焼き鳥をつまみながらホッピーなんて最高よね〜。その後、芋焼酎をストレートで!とかね。」
彼女の見た目に似つかわしく無い様な事を、彼女は平然と言った。
もちろん彼女の好みなんかじゃ無く、全部俺の好みだ。
だって今の黒川さんは完全な俺なのだから。

その様子を不安そうに見ていた瑞希が声を掛けてきた。
「あの…、今日はこういったお店を選んでしまいましたが…お好みに合わなかったでしょうか?」
いや、彼女のチョイスは黒川さんの好みにどんぴしゃだ。
「いやいやいや、全然OKよ!姫野さんのチョイスは間違ってないから安心して!マジでどんぴしゃだから!」
俺はフォローの為に、黒川さんにそう言わせてあげた。
あ、ちょっと彼女らしくない言い方だったけど、まあいいか。

彼女は一瞬キョトンとした顔をしていたが、気を取り直したらしく最近の景気の話などを振ってきた。
今の俺は黒川さんだから、彼女の話題にも難なくついて行くことが出来る。
また、「黒川さんの最も信頼する部下の佐藤君」として、黒川さんの意見を代弁して見せたり、
「さっきまで瑞希に乗り移っていた記憶」から、彼女の好みそうな話題を提供したりと、会話にも積極的に絡んで活躍して見せた。

「すごいんですね、佐藤さん。黒川さんとそこまで同じ目線のお話が出来るなんて。」
「そうでしょう?彼と私は同じ考えなのよ。見た目は違うけど、同一人物ってところね。」
「そんな、黒川さん。褒めすぎですよ。(その通りだけど)」
俺は黒川さんに酌をさせて、酒を飲み干す。
そのまま、黒川さんに瑞希のグラスにも酒をつがせた。
「あ、ありがとうございます。頂きます。」
俺は彼女自身にも酒を飲ませながら、次々とグラスに酒をつがせる。
「今日は気分がいいわ!姫野さんもお酒付き合って頂戴ね?」
「もちろんですっ。」
自分の接待で相手が気分良くなってくれていると思った様で、瑞希も俺の操る黒川さんにつきあって、恐らくいつもよりも多いペースで酒を飲み続けていた。
黒川さんは俺につぐ時だけ、実はついだふりをしている。
二人とも、そんな俺をよそに良い感じで顔が上気してきている様だった。

(そろそろ頃合いかな?)
俺は黒川さんに酔った振りをさせて瑞希に話を持ちかけた。
「今日は気分が良くなっちゃったから、あなたの知りたいこと何でも答えてあげるわ。」
「え?黒川さん、どうしたんです?」
「いいからいいから。あなたが知りたいこと、聞いてみなさい。」
瑞希はかけていた眼鏡を掛け直すと、キリッと仕事の表情に戻った。
(おお、この辺、さすがだな。たとえ酔っていても、しっかりとこういうチャンスは逃さないんだな。)
「これから(今晩)貴女には沢山働いてもらうんだから、これは私からの(俺からの)御礼よ。何でも聞いて!何でも答えてあげるわ!」
早速瑞希はすかさず知りたかった内容を質問してくる。
(へへへっ、さっき俺と瑞希が必死で聞きだそうとしてたことだな?でも、今の俺はその黒川さん。簡単に答えられるんだよね。)
「その件はね、B社に決めたわ。でもね、貴女の会社もまだ候補に残っているわよ。それとね…」
俺は黒川さんの頭の中をのぞきながら、かなり重要な内容まで瑞希に情報リークさせてやった。
「あ、ありがとうございます!黒川さん。」
瑞希は欲しかった情報以上の事まで入手できてほくほく顔だ。
「いいのよ〜、気にしないで。この私が役に立って良かったわ。」
黒川さんも自分のしたことの重要さなど気にも留めずにニヤニヤと笑って見せた。


やがて瑞希はお手洗いに行くと席を立った。
あれだけ酒を飲んだんだから、そりゃ尿も近くなるだろう。
瑞希が部屋から出て、個室には俺と黒川さんだけが残された形になった。
いや、正確には俺1人残ったと言った方がいいのか?

黒川さんはゆっくりと俺の方を向くと、そのまま無言で俺の顔に手を回し、ニヤリと笑いかけてくる。
「あはぁん、愛してるわぁ〜♪」
そしてそう言いながら俺の口を塞ぐように激しくキスをしてきた。
舌を絡みつかせる様にして、俺の口の中を舐めまわしてくる。
「ん…れろ…れろれろ…ちゅっ…ぢゅる…ぶちゅ…!」
まるで襲いかかる様に黒川さんにディープキスをさせる。
(初めて会った時から美人だなぁと思ってたんだよなぁ。)
俺は黒川さんにされるがままに、彼女のキスを味わった。
「はあっ、はあっ…もっと激しく…してあげるわ!」
黒川さんにそう言わせ、俺を押し倒す様にして抱きつかせた。
そして舌を突き出しそのまま俺の口のなかにその舌を入れる。
「んっ…んっ…!どう?私のキスのお味は?もっともっと味わって!」
自分の胸を俺に押し付ける様にしながら、鼻息を荒くし俺とのディープキスを楽しむ。
「お願いっ、服の上から乳揉んでぇっ!遠慮なんてしなくって良いのよ!」
「ああ、そこまで言うなら遠慮なく揉みしだいてやるぜっ」
「あはぁ〜ん、最高〜っ、れろれろっ…ちゅぅ〜っ」

個室のドアが開き瑞希が部屋に戻ってくる。
俺と黒川さんはまるで何事も無かったかのように、お酒を飲んでいた。
(危ない危ない…、黒川さんとのキスが気持ち良すぎて、瑞希に見つかる所だった。)
「すみません、お席を外してしまって。」
「あら、別に良いのよ。」
黒川さんはしれっとした顔でそう言いながら、瑞希に見つからないようにして俺のアソコをズボンの上から撫でている。
「それよりも大丈夫ですか?お酒飲み過ぎてませんか?」
俺もそう言いながら、机の下で黒川さんのお尻を揉んでいた。

よく見ると黒川さんの服が乱れてしまっているのに気が付いた俺は、瑞希に怪しまれない様に黒川さんに席を立たせる。
「ちょっと、お手洗いに行ってくるわ。あはぁん♪」
「あ、はい。」
黒川さんの身体を女子トイレへと向かわせながら、俺はふと面白いことを思いついた。
(俺とのディープキスでこの身体、感じてきちゃってるぞ…これは最後まで行くしかないでしょ♪)
トイレの個室へと黒川さんを移動させると、直ぐにドアを閉めすかさず服を脱ぐと自らを慰め始めたのだった。
(おっ…ふぅ…、す、すげぇっ…こ、この身体…、この巨乳…揉みごたえあるなぁ…ふっふっふ)
「…あの…佐藤さん…?佐藤さん…!?」
黒川さんの方に意識を集中しすぎていたせいか、瑞希が俺のことを呼んでいる声に気づくのが遅れた。
「…あ?…はいぃ…?」
「あの、どうされたんですか?なんか顔が赤いというか、急に上気しだしたというか…お酒、飲みすぎました?」
「あ、あははっ、大丈夫ですよ…。うっ…ちょっと、気持ちよすぎ…いや、気持ちよくなって、きて…」
「お水、飲まれます?」
「い、いえ、結構、です。も、もう少しで…いけそ…いえ、その、あははっ、なんでもないです…くっ」
「だ、大丈夫ですか!?気分でも悪くなったんじゃ…?」

(あふぅ〜っ…ダメだ、このシチュエーション…と、この黒川さんの身体…敏感すぎて…)
「…い、いくっ…!」
「え?なんですか?」
(ううっ…いくっ…瑞希に見られながら…黒川さんの身体で…い、いくぅ〜っ)
「…うっ…うくくっ……はぁ〜っ…」
「だ、大丈夫ですか?」
「い、いや、なんでも…ないんです…。ちょっと、飲みすぎましたか…ねぇ…ふう〜っ…」
俺自身は個室で瑞希と向かい合いながら、黒川さんの身体でオナニーを堪能してしまった。
なんとなく人前でオナニーをしてしまったような、そんな不思議な錯覚を味わった。


そんな事をしている内にラストオーダーの時間が来てしまった。
「まあ、もうこんな時間ですわね。」
瑞希が時計を見てそう言った。
「あら、本当ね。」
さっきまでトイレの個室でオナニーをしていた黒川さんもそんなそぶりを見せずにナプキンで上品に口をふく。
「今日は本当に楽しかったわ、姫野さん。」
そしてそう言いながら、瑞希に見えないようにテーブルの下では俺のあそこを名残惜しそうにさすっていた。

俺たちを置いて瑞希が先に席を立つとレジで今日の会計を済ませていた。
個室に残った俺たちは、お互いに顔を見合わせて、最後に再びディープキスをする。
「今日はこの私を散々操ってくれてありがとう。とっても楽しかったわ。」
「いやー、そう言って頂けると僕も魂を入れた甲斐があります。」
「この後はいよいよ姫野さんとのセックスね。自由自在に操って彼女の肉体を存分に楽しんで!私も応援してるから。」
「はい、ありがとうございます。」
俺と黒川さんはそんな会話をしながら瑞希の所へ行き、彼女が手配したタクシーの前に立った。
「佐藤君、あなたは姫野さんをホテルまでお送りしなさい。それじゃ姫野さん、ありがとう。」
黒川さんに最後にそう言わせるとタクシーへと乗せた。
「黒川さんも今日は本当に有難う御座いました。」
俺もそう言って瑞希とタクシーを見送る。
そして、しばらくタクシーが進んだのを見計らって、俺はタクシーに向かって指先を向けたのだった。


「佐藤さん、今日は本当に有難うございました。」
瑞希は改めて俺にそう言うと頭を下げてきた。
「いや、姫野さん。僕は何もしていませんよ。」
「いえ、佐藤さんがいてくれたおかげで、黒川さんがあんなに楽しんでくれて…。今日は本当にツイていました。」
「そうですねぇ、確かに今日の黒川さんはいつもと違ってとても楽しそうでしたね。随分お酒も飲んでいたみたいだし。」
「おかげで私もフラフラですわ。」
「大丈夫ですか?」
気丈なふりをしているが、瑞希も足取りがフラフラしているのが分かった。
あれだけ飲ませれば、そりゃあ酔っぱらうはずだ。
今頃俺の魂が抜けた黒川さんはタクシーの中で酔いが回ってる自分に驚いている事だろう。
「姫野さん、僕から忠告です。今日黒川さんから聞いた事は極秘事項ですからね。」
「もちろん、心得ております。」
「たとえ黒川さんに対しても、今日の事は触れない方がいいですよ。プライドの高い人なんで、酔っぱらって極秘事項をしゃべったなんて思いだしたら…」
「そ、そうですわね。分かりました。今日の事は今後も黒川さんとの話題には出さないように気をつけますわ。」
(結構結構、黒川さんは俺に乗っ取られている間の今日の自分の行動なんて何にも覚えてないんだから。)

そんな話をして歩いていると、俺たちはホテルへと到着した。
「では、佐藤さん。送って頂き有難うございました。」
「いえいえ、それじゃ僕はこの辺で。」
「ええ、それでは失礼します。」
俺は瑞希と別れのあいさつをする。
瑞希はフラフラの足取りながらも、エレベーターの方へと歩いて行った。
(ここはアリバイ作りの為にも、瑞希を送って少し時間がたってからの方がベターだよな。彼女に魂を入れた時に、記憶から彼女の部屋は既に分かってるんだ。)
俺はその場で彼女がエレベーターに乗り込むのを見届けると、遅れてホテルの中に入った。
ついでにフロントに向かって指先を向け、例の言葉を小声で発する。

「…っ!おかえりなさいませっ、お客様!!」
例の俺の好みの娘がそう大きな声で俺に挨拶をしてきた。
「ちょっと…どうしたの急に…、おかえりなさいませぇっ、お客様!!」
続けて隣の主任もそれに続いて笑顔で大きな声であいさつをしてくる。
(あははっ、連続で身体を乗り換えてやったぜ。)
笑顔の女性の口から俺の魂が出てくると、俺のもとへと戻ってくる。
そして、そのままフロントの待合室にいた他の女性客の身体へと入っていった。
すっとその場で立ちあがった女性は、そのまま俺と並ぶようにしてエレベーターの前に歩いて行った。

「おやおや、誰かと思ったら。」
「うふふ、私もつくづくツイてないですわね。」
俺と一緒にエレベーターに乗り込んだ女性は、初めに俺に魂を入れられたあの女性だった。
「せっかくだから、その身体をまたお借りしますよ。」
「ええ、もちろん。前にも言ったでしょう?あなたのやりたいことが私のやりたい事だって。」
「貴方の身体で練習した居た頃が懐かしいくらいですよ。」
「でも、本番はいよいよこれからなのでしょう?これも何かの縁ですから、この私がしっかりと貴方代わりになります。」
「それは頼もしい。助かります。頼りにしていますよ。」
「任せてください。疲れるのはこの身体ですから♪」
女性は俺に向かって屈託のない笑みを浮かべると、瑞希の部屋があるフロアで降りた。
「さてと、それじゃ俺は最上階のVIPルームで待たせて貰うから…」
「私は瑞希の様子をうかがいながら、頃合いを見て身体を乗り換えるって訳ね。」
女性はそう呟くと、瑞希の部屋の方へ向かって歩いて行った。


VIPルームのキングサイズベッドで、俺は身体を伸ばして寝そべった。
「ああ〜っ、気持ちいい〜。シャワーを浴びたいところだが、ここはまだ我慢。」
ベッドから起き上着をハンガーに掛けると、トイレを済ませてテレビをつける。
そして、その後入口の方へと歩いていき、ドアを開けた。
と、同時にドアの向こうに人影が現れる。
「うふふ、お待たせしました。姫野瑞希ですわ。またお会いしましたね。」
「おやおや?姫野さんじゃないですか?いったいどうしたんですか?」
「ちょっと、お邪魔してもよろしいでしょうか?」
「ええ、どうぞどうぞ。大歓迎です。」
瑞希はさっき別れた時と同じスーツ姿のまま、部屋の中へ何の躊躇も無く入ってきた。
「それにしても、服を脱いでシャワーを浴びようと思っていたら、知らない女の人が突然私を訪ねてきたからびっくりしました。」
「ははは、そうだろうな。」
「まさかその女性の口からあなたの魂が出て来て、私の口の中に入り込み、身体を乗っ取られるだなんて思ってもいなかったし…」
「そりゃそうだ。誰だってそんな事思う訳無いよ。」
「目の前で驚いているその女性を無視して、早速こうやってあなたに会いに来たって訳ですわ。」
「そりゃあ光栄ですね。」
「うふふ、私ったらあなたに御礼をするのをすっかり忘れちゃってたから。今からたぁ〜っぷりと御礼させて頂きますわ。」

瑞希を俺に密着させると、そのまま俺の唇にキスをさせる。
そして俺たちはキスをした体勢のまま、息ぴったりに部屋の中へと歩いて行った。
「ふっふっふ、そんなにがっつくなよ。」
俺は瑞希の顔を掴むと、引き離してそう言ってやった。
「だってぇ〜、我慢できないんですもの。お願い、もっとキスしてぇ」
瑞希にそう甘えるような声で言わせてみる。
(くぅ〜、何か気分良いぜ。もっと言わせてやれ。)
「早くぅ、キスしてぇっ!我慢できないのぉ〜!おねが〜い!」
普段の彼女が絶対に言わないだろうセリフ、絶対にしないだろう男に媚びるような表情。
でも、今なら幾らでも俺の好きな事をさせられる。
「くぅ〜っ!今日はず〜っと我慢してきたんだ!」
俺が言うと、
「この状況を待っていた!もう、我慢できねェ!」
続けて瑞希がそう言い、俺たちはお互いに勢いよく抱き合いながら、激しくお互いの唇に吸いついた。

広い部屋に俺たちのキスの音が響き合った。
俺も瑞希も一心不乱にお互いの舌をからめ合い、涎をすすり合う。
俺の鼻息が荒くなってくると、自然と瑞希も鼻息が荒くなる。
俺が目を開けると、瑞希も目を開ける。
まるで二人とも全く同じ人間であるかのように、俺たちは同じ表情をしていた。
いや、中身は全く同じ人間なのだから当然かもしれない。
そのまま倒れ込むようにしてベッドの上に乗ると、俺と瑞希はお互いの身体に手や足をからめ合い、身体を密着させながらさらに激しいキスを続ける。
どのくらいの時間キスをし続けただろう。
俺の口には瑞希の唾液が、瑞希の口には俺の唾液が、たっぷりとあふれていた。
「ん〜ん!最高!キスだけでもうびんびんだぜ。」
「んふ〜、こっちはアソコがびしゃびしゃだわ。」
俺たちは顔を離し、お互いの顔を見つめ合いながらそれぞれの口でそう言った。

まるで恋人同士の様に、俺は瑞希に腕枕をしてやる。
瑞希にも俺の顔を見ながら、うっとりとした表情をさせてやる。
「あなたって、素敵よ。世界一格好良くて、逞しくて、やさしくて、賢くて、男らしくて、お金持ちで…」
「うひひひ、そうかな?」
「そうよ!あなたみたいな完璧な男性、見た事無いわ。」
「いや〜、君からそんなに褒めてもらえるなんて。」
「あら、私は本当の事を言ってるだけだわ。あなたは素敵よ、とっても。」
俺は瑞希の声を使い、徹底的に俺を褒めさせて悦に浸った。
「それじゃ、君に質問。」
「何かしら?」
「俺の事、どう思ってる?本当の気持ちを聞かせて。」
「もちろん、愛してるわ!!」
「今日初めて会ったのに?」
「そんなの関係無いわ!私はあなたの事が好きっ!大好きっ!愛してるっ!」
「うひひっ、こりゃいいや。」
「愛してるっ♪」
「本当?」
「本当よっ!愛しまくりっ♪大好きぃっ!!」
(ちょっと、調子に乗り過ぎたかな〜?でも、別にいいや。俺が自分で言わせてるとはいえ、こんな美人からそんな事を言われる機会なんてないもんな。)
「そうそう、何でもこの声で言わせられるんだ。どんなエロい言葉だって…ね。」
瑞希はそう言ってニヤリと笑って見せた。

瑞希に俺の耳元に口を近づけさせる。
「ふぅぅぅっ…」
先ずは手始めに俺の耳の穴に息を吹きかけさせる。
「へへへっ、くすぐったいや。それでは…」
「あーっ、あーっ、コホン。よし、マ〇コ。チ〇ポ。」
瑞希は俺の耳元で囁くように呟く。
「マ〇コ。チ〇ポ。ウ〇コ。」
こんな知的な美人の口で、こんな下品な言葉を俺の思い通りに言わせられるなんて、何と言うか支配欲が満たされる感じだ。
「うふふ、もっと具体的に言わせてみるか。濡れ濡れのぐちょぐちょマ〇コ。ギンギンの勃起チ〇ポ。太くてくっさいウ〇コ。」
「突然、何言ってるんです?頭大丈夫ですか?」
俺は彼女に向かって、軽蔑するような表情をして見せる。
「チ〇ポ。チ〇ポ。チ〇ポ大好き♪」
俺は彼女を立ち上がらせると、そう言わせながらニコニコと笑顔で腰を振らせてみる。
「ビシッとスーツを決めて、知的に眼鏡を掛けた美人が、まるでアホ丸出し。これは面白い。」
「私のマ〇コはキスで濡れ濡れ!ほーれ、見て見て!私のマ〇コ!」
瑞希はそう言いながらスーツのスカートを膝まで下ろし、パンストとパンツをずり下げる。

そして、そのまま向きを変えると、お尻をこちらに向けて突き出した。
「あははっ、アホっぽくていいぞ。それ、自分でお尻を掴んで…」
「見えやすくしてあげるわ。どう?私のアナル…いや、クソ穴まで丸見えでしょ?あははっ、この声で言わせると一層変態チックに聞こえるな。」
瑞希は尻だけを俺に晒しながら両手で尻たぶを開き、アソコと尻の穴を自ら全開にしている。
俺もズボンを下ろすと、既に勃起しているチ〇ポを取り出した。
「さあ、私のマ〇コにあなたのチ〇ポをぶち込みなさい!」
「へへへ、Sっぽい感じで言わせてみたぜ。でも、その体勢でSは無いかな?」
瑞希は急に顔をしかめると、恥ずかしそうな表情になった。
「お願いします…、私のはしたないマ〇コを、あなたの逞しいおチ〇ポでお仕置きして下さいませ。」
「うぅ〜、良い感じ。俺の気持ち一つでSにもMにも自由にさせられる。どんな事でも絶対反対しない最高のパートナーだよ。」
俺はそう言いながら、彼女の腰に手をやると自分のイチモツを挿入した。

「お…お…、なんだこの感じ…!これが、挿入される、感覚…!」
瑞希はそう言いながら身体をのけぞらせる。
「不思議な感覚だな…、挿入する側と挿入される側の感覚を同時に味わえるなんて…」
俺が腰を振るたびに、俺と瑞希は同時に嬌声を上げる。
「女の感覚って…こ、こんなに…!やばい、同時に味わうのは刺激が強すぎ…!」
俺は瑞希の身体の感覚の共有を一旦解除する。
初めの女性で行った基礎練習の成果で、こういったことが出来る様になったのだ。
「ふ、ふぅ〜…!最初の女性で、女のオナニーは体験させてもらったが、SEXとなると快感はその上だな…。
それに、私って普段オナニーとかしないから、こういう快感に慣れてないみたいだし…」
瑞希はそう言いながら、両手を膝の上に置き、俺にされるがままにバックからはめられ続けた。

そのままの体勢から、途中まで下ろしていたスカートやパンストを下ろし始める。
そしてうまく下半身が裸になると、今度は上着を脱いで上半身も裸になり始めた。
その間も俺の方はしきりに腰を打ちつけ続ける。
「さて、今度は俺の番だ。」
今度は俺も脱ぎかけたズボンを下ろし、上着を脱いでいった。
その間は、俺が腰を動かすのではなく、瑞希が自ら尻を前後に動かしてくれていた。
バックから挿入を続けた体勢のまま、俺と瑞希は全裸になっていた。
「こんな芸当普通じゃ出来ないぜ。」
「うふふっ、でも私たちならそれが出来るのよね。ほら、こんなことも!」
瑞希は中腰のまま足を前に出し、前進を始める。
俺も挿入した体勢のままそれにぴったり合わせて前進した。
俺たち二人は、部屋の中をその状態でうろうろと歩きまわって見せた。
「あははっ、ムカデ競走みてー。」
「でも、私たちのコンビネーションにかなうものはいないわ。」
「ああ、そうだな。俺たちは世界最高のコンビだ。」
「ええ、今日初めて会ったばかりなのにね。」
俺たちはそんな会話を続けながら、シャワールームの方へと向かって行ったのだった。

シャワールームには全身が映るほどの大きな鏡が備え付けられていた。
立ちバックで挿入したまま、俺たちはその鏡の前に自分たちの行為がうつる様に移動した。
挿入されている瑞希と、挿入している俺が同時に鏡の方を見る。
全く別の人間であるはず俺たちだが、鏡に映っている表情は同じだった。
「まあ、私ったらなんていやらしい表情してるのかしら?」
「俺と同じ表情をさせられるのは不服か?」
「まさか、嬉しいに決まってるじゃない。この顔はもうあなたの顔でもあるんだから。」
「そうだな。ところでこうやって鏡越しにみると完全にSEXしてるようだけど、俺が俺に挿入してるってことだなんだよな。」
「そうそう、つまりこれはただのオナニーよ。自慰なんだからあなたが気持ち良くなる為に私の身体も顔も声も自由に使って構わないのよ。」
「へへへ、そうだな。折角だから…」
俺がそう言うとさっきまでにやけていた瑞希の顔が、急に泣きそうな表情に変わった。
「きゃ〜っ!やめてぇっ!何なの、あんたっ!」
「へへへ、良いねぇ。」
「ここどこっ!?一体何してるのっ!止めてっ!」
瑞希は口ではそう言いながら、身体は一向に嫌がる気配を見せず、むしろ自らも腰を振って楽しんでいるように見える。

「騒ぐなっ、直ぐに気持ち良くしてやるからよ。」
俺も瑞希のセリフに合わせる様にわざと乱暴にそう言ってみた。
「いや〜っ、誰かっ、助けてっ!!」
瑞希は泣きそうな表情でそう叫びながら、手は自分の胸を揉みしだき始める。
「へへへっ、いくら叫んでも無駄だぜ。」
「いや〜っ、お願いっ!気持ちいい〜っ、もっと犯してぇ〜っ!なんちゃって。」
瑞希はそう言ってまたニヤニヤと笑い始める。
「本当に姫野さんは僕の思い通りに何でもやってくれますねぇ。」
俺はわざとらしく敬語でそう言って見せた。
「うふふ、ありがとう。あなたが気持ち良くなる為だったら、私どんな事でもしてあげるわよ。
今日はあなたのおかげで接待も成功したんだし、当然の御礼ですわ。存分に私を使いまくって下さいな。」
「ええ、わかりました。それじゃそろそろ、女の快感も味わわせてもらいますよ。」
「ええ、どうぞ。私の感覚を自由に使って下さ…いぃぃっ!!何これっ!気持ち…良すぎぃ…!」
瑞希の身体の感覚を共有した瞬間、一気にそれまでの俺とのSEXの快感が押し寄せてきた。
「やばいっ!出るっ!」
瑞希はそう叫ぶと、アソコから俺のチ〇ポを引き抜き、その場にひざまづくと口を大きく開いた。
と、同時に俺のチ〇ポから精液が勢いよく瑞希の口内に発射されていく。


シャワー室の床に仰向けに寝そべりながら、俺は瑞希のお掃除フェラを受けていた。
「いや〜、失敗失敗。さっき感覚を共有したまま瑞希にあんな真似させちゃったから、自分で自分の精液を味わっちゃたぜ…。
こうやって、感覚を切り離しておけば、そんな事にはならなかったのにな。」
「じゅっぽ、じゅっぽ、ずずずず…じゅっぽ、ずるっ」
瑞希はこれでもかと言う位わざとらしい音を立てて、俺のチ〇ポから裏筋、アナルに至るまで丁寧に舐めまわしている。
「それにしても、これは良いな。風俗でもここまでのサービスはしてくれないだろう。
まさか一介のキャリアウーマンがこんなに丁寧なお掃除をしてくれるなんて、この指輪のおかげだぜ。」
「れろれろ…ちゅばっ…うふふっ、私の心のこもったご奉仕、気持ちいいですかぁ?良かったら、私のマ〇コも見て下さい。」
瑞希は俺に覆いかぶさる様に乗っかってくると、俺の顔の上で股を開いて見せる。
「こうやって、間近で見ると綺麗な色してるなぁ。仕事に熱中してるから遊んでないんだよな。
今日は、仕事の事なんか忘れてたっぷりと女の幸せってやつを堪能させてやるよ。いや、俺が堪能してやるのか。はっはっは」
「はっはっは!ちゅばちゅば…ずずず…思いっきり私を堪能してぇ!」
俺が笑うと、つられて瑞希も笑った。
まさか自分の身体がこんな風に使われているのに、その上一緒になって笑わされるなんて思ってもいなかっただろうな。

まるでソープ嬢の様に、瑞希は自らの身体にボディーソープを塗ると俺の身体にまとわりつくようにして、身体を擦り合わせた。
「はっは〜、楽でいいなぁ。もっとしっかり腰を振らせよう。」
「はぁ〜い♪そりゃそりゃっ!」
瑞希は俺の腕をまたいで、自らの股間を前後に激しく擦りつける。
「もっと、全身を使わせて…」
そのまま身をかがめ、胸の谷間も使って器用に俺の身体を挟み込むようにして洗った。
「動きを思い通りに出来るから、これって便利だわ。それに、こんなに身体を酷使させても俺の方は一切疲れないと来てる。」
瑞希は俺の代わりにそう言うと、シャワーを手にとり俺の体中をまんべんなく洗い始める。
「ただ洗うんじゃなくて…」
「こうした方が気持ちいいんでしょ?もちろん、分かってるわよ。」
背中から胸を密着させて、瑞希は身体をぐりぐりと押し付けつつ泡を流していく。

シャワーから上がった後も、俺と瑞希のプレイは明け方まで続いた。
瑞希は全身を使って俺を楽しませ、また同じ魂を持っている二人だからこそできる体位を色々と試したりしながら、俺は瑞希とのSEX、いやオナニーを楽しんだ。


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「「…ん、ん〜…?」」
「「あれ…?いつの間にか寝ちゃったのか…?」」
ベッドの上で大の字になって寝転がりながら、俺と瑞希は同時に声を上げた。
「「どうやら、寝ちまったらしい…それにしても」」
俺は隣で寝ていた瑞希を1人、立たせてみた。
「俺の魂を入れたままで、俺が寝ると…」
「瑞希も俺として寝るんだな。魂はそのままで。…いや〜、良かった。俺が寝ると瑞希の魂が戻るってんじゃ、この状況言い訳できなかったもんな。」

「ところで、今何時だ?」
俺がそう言うと、瑞希は時計を見た。
「げっ、もうチェックアウトの時間じゃないか!?」
瑞希はそう言うと、その辺に脱ぎ散らかしていた自分の服を集め始めた。
「いや、待てよ。別に、焦る必要は無いよな。俺は。」
「瑞希の記憶から、彼女の今日の予定があったから慌てたけど、そんなもん、俺には関係ない。キャンセルさせてやれ。」
俺は瑞希に全裸のまま脱いだ服のポケットから携帯を取り出し、相手に電話を掛けさせた。
普段の彼女と寸分違わぬ電話応対。
彼女の記憶を読めば、俺でも完全に彼女になり済ますことが出来る。
「さあ、今日の姫野瑞希の予定はこれで無くなりましたわ。心おきなく、もっとあなたでいられるわ。」
「俺になって嬉しい?」
「ええ、最高の気分!」
「どんな気持ち?」
「俺ってツイてる♪いや私って憑いてる♪」
「あっはっは、楽しいなぁ。」


ホテルのチェックアウトを済ませ、俺と俺の魂が入ったままの瑞希は、恋人同士の様に手をつないで歩きだした。
「さて、これからどうするか。」
「そうねぇ、昨日のパチンコ屋に行って、もっと景品をとりましょうか。」
「俺が二人になった分、確率も上がるってわけか。」
「そういうことになるかしらね。」
「指輪がもう一個増えたらどうなるんだろうな?」
「反対の指にはめれば、もう一個魂を出せたりして。」
「そうだったら良いなぁ。そうなりゃ3Pも簡単に出来るぞ。」
「そうね、黒川さんにも俺の魂を入れて、この3人で接待の続きなんてどうかしら?」
「いいねぇ、黒川さん、美人だもんな。」
「まさか私もお客さんとレズ出来るだなんて、考えた事も無かったわ。彼女の巨乳、すっごく楽しみ。」
「よーし、それじゃ頑張って景品取るぞ!」
「おーっ♪」
俺たち二人はそんな会話を交わしながら、昨日のパチンコ屋へと向かって歩いて行ったのだった。


おしまい


PS: …ツキとはそうそう続くものではない。
  その後二人がかりで大惨敗、昨日泊まったVIPルームの料金以上の激しい損失を被ったことは言わないでおこう。






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