人生のリコール 第8章 人生を奪われた女
 作:Sachi



14時00分
都内某所 日本刑務所、女子囚人室 地下8階
「囚人番号0025番」

「はい」
気だるそうに答えた。一人の若い女性。
名前も取り上げられ、番号管理される
罪は重く、檻からでる時間はほぼ皆無であった。

そんな中、久々に檻からでたのであった。

「座れ、囚人番号0025番」
「はい」
重い空気がただよう地下の個室

「さて、初めましてだな。0025番。わたしは、近藤という政府の様々な仕事を請け負っている」

近藤「本来、貴様のような囚人とはかかわることがない役職だ。その辺はわきまえろ」
囚人0025番「はい・・・・」

近藤「さて0025番・・・森山茉莉奈。」
森山「はい。」
近藤「貴様がおこなった罪は深い。その年で私利私欲の為の金品強奪。」
近藤「この現在日本、ここまでの犯罪は成し遂げたことは、ある意味評価できる」
近藤「だが・・罪は罪、犯罪データとして、再発の防止データには役立てる」
森山「・・・・・・・」

近藤「森山、お前よくあわばいずれ・・出れるのではないかって思ってないか?」
森山「・・・・」

近藤「その可能性はゼロだ。」
森山「・・・・・・・・・・一生ここ?」
近藤「そういうことだ。この世界はお前のすべてだ。ここでお前は朽ちるのだよ」
森山「・・・・・・そっ・・・・まぁ誰も連絡してこないし、親からも連絡もない。あたしは捨てられた。」
森山「無期懲役ってやっつね。いっそ死刑にでもしてほしいわ」

近藤「・・・ふ」
近藤「親が連絡してこないか・・・ふふっ・・・」
森山「・・・・・なにがおかしいのよ」
近藤「今日はその事をお前に教えてやる。」
近藤「なぜ、お前の両親がなにも訪ねてこないのか・・・それは表世界では森山茉利奈は生活してるからだ」
森山「っ・・・どっどういうことよ!」

地下の静寂な刑務所に声が響く・・・

近藤「この映像をみたまえ」
森山「こっこれは・・・・・・あっあたしぃ!?」

近藤がそう言うと個室にあったモニターに映像が映し出された。
そこには女性研修をうける森山茉利奈の姿があった。
本人である森山はまったく身に覚えのない研修風景、でもまぎれもない自分と瓜二つの人物
自分だけがわかっているような、ちょっとした仕草までも再現する。

森山は動揺した

森山「これは、なに?なんなの?あたしの合成映像!?なんなのよ!」
近藤「・・・そう叫ぶな。本来、お前が経験すべきだった人生をある人物に演じてもらってる」
森山「演じる?」
近藤「そうだ。お前と同じ体系にまでボディを整え、お前の顔に整形、お前の服を着て、今日あの場にいる」
森山「・・・・・あたしも偽物・・気持ち悪い女もいたもんね」

近藤「・・ふふ、さらに衝撃的な事を教えてやろう。今、女性研修を受けているあいつは「男」だ。」
森山「うっ・・・うそ・・・・」
近藤「ふふふ・・・女性化願望がやたら強い男にお前の人生をくれたんだよ」
近藤「あいつは、肉体改造に耐え、整形し、お前の下着や服を着て生活している」
近藤「そう森山茉利奈として・・・親も娘が元気に働いているんだから、こんな檻にまさか本人がいるなんて思わない」

森山「うそよ・・・・・・・・」
近藤「これがお前に科せられた刑罰だ。人生没収。」
近藤「まだまだ試作段階の法案だが、より合法化をすすめていく、実験は成功だよ」
近藤「難易度がより高い、異性の別人への展開を行ったが、我々の技術なら他人を作ることだって問題ない。」
森山「・・・・・・・・・・」

森山は愕然とした。
近藤「お前の権利はすべて、あいつが持って行った。偽物が本物になったんだよ。」
近藤「そしてはお前は、旧:森山茉利奈になった。」

森山「なら、あたしこそ生きていたって意味がないじゃない!ささっと殺しなさいよ!!!」
近藤「だめだ!」
森山「うっ・・・」

近藤「お前の精神状態だって研究対象だ。」
近藤「偽物に人生を奪われ、偽物が演じる生活をどう見届けていけるか・・・」


近藤は不敵な笑みを浮かべながら・・・いった。


近藤「だがな・・・森山、貴様に2っの選択肢をあたえてやる」
森山「・・・なによ」

近藤「一つは、現状維持だ。このまま、お前が高齢となり寿命を迎えるその日までこの生活を続ける」
近藤「まっ・・今生活している森山茉利奈もいずれ結婚してもらう。そのとき、子供が必要だ」
近藤「我々の技術で、現代では難しいとされる、元男性が妊娠させることも可能にした」
近藤「だが!血がたらん・・・森山家の子としては、血がつながらん・・・」
近藤「お前に、あいての男性の精子を入れて人工妊娠させ、お前に出産させ」
近藤「現:森山茉利奈が産んだ子と入れ替えをさせる!」
森山「そんな・・」

近藤「もう一つは・・・・」
森山「・・・・・・・・・死?」

近藤「男となって、シャバに出るか?」
森山「!?」

近藤「もうお前は、あの偽物に森山茉利奈として人生を奪われている。」
近藤「今更森山茉利奈としての人生を取り返そうにも、すでにこの刑務所にいた分。森山茉利奈として」
近藤「お前は遅れをとっているんだよ」
近藤「逆のデータも欲しいんだよ」
近藤「お前が男性として表社会で生活するなら・・・考えてやる。」

森山「・・・あっあたしが男に!?」
近藤「そうだよ。ペニスをつけて、胸をとって・・筋肉つけて短髪にする。」
近藤「茉利奈なんて、女みたいな名前も捨て、別な町で生きる」
森山「・・・おとこなんて・・・・・」
近藤「そうだよなぁ・・・お前は中学生のときにレイプされてるもんな・・」

森山「いやっ!そんなこと言わないで!!!」

近藤「本来なら・・お前にこんあチャンスはやらん。」
近藤「特別サービスだ。今決めれば・・こいつの人生をくれてやる。」

森山「・・・・」

近藤「39歳、元会社員だ」
森山「・・さっ39!?」
近藤「そうだよ。この年齢に合わせる、だいたい20歳くらい年をとらせる。」

選べよ・・・森山茉利奈

ここにいれば一生暗い生活。唯一、女として子供だけは産める。
それか、39歳の男性となって外の世界に出るか・・
まぁ・・どっちでもいい。他人となっても生きたい人間などいくらでもいるからなぁ・・・


さぁ・・どうするよ!


沈黙が続くのであった。






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