人生のリコール 第6章 新入社員 森山茉莉奈
 作:Sachi



4月1日・・・
ついに入社式の日を迎えた。

その日の朝は早かった。
ドキドキして眠れなかった。
元々僕がいた会社にまったく違う人間として、
女性として入社するのだから…

この緊張感、高揚感、そして心の奥底にある罪悪感…
そのすべてを僕を包むのだった。

そして、先日スーツ屋さんに取りに行って来た新しいレディーススーツ
こうなる前に本人が作っておいたのだろう。
就職したら着れるように準備しておいた。新品のスーツだ。

9号サイズのスカートスーツ
もちろんパンツもついている。今日はもちろんスカートを履いていく。
女の子の象徴であるスカートを履いて・・

森山のブラジャーをすっかりなれた手つきで付ける。
今日は目立たないように白色をチョイスした。
お揃いのショーツも着用だ。純白の白に、リボンが可愛い。

これも入社式用だったのだろうか。
ちょっと良さげなストッキングだ。生地は綺麗で発色も良い。
ストッキングなんて男性にとっては同じにしか見えないだろう。
しかし全然違う。安い100円ショップのものから数足入って数百円のもの
1足で500円、1000円するもの、もっとするもの様々だ。
伝線するし消耗品だが素材や履き心地はまるで違うのだ。

僕は既にストッキングはだいぶはいた。
僕も最初は変わらないと思っていた。違いに気づいた。
着圧もあったりと足を綺麗に見せてくれるアイテムだ。

おそらく1000円くらいするのだろう。
これも本人がはく事なく僕が着用した。
着圧によっての締め付け、なにより綺麗に見える。僕の心は踊った。

そしてスーツと合わせて取り置きをしておいた。ブラウス
シンプルなデザインだが、優しいふわっとした生地で作られている。
新入社員向けで、初々しい。
すっかりなれた左側のボタンも当たり前のようにしめる。
入社式でおとなしく、品があるように見せたいのでボタンは全てしめた。

そして本人も着て会社に通うのを楽しみにしていただろうスカートスーツ
けして可愛さはない。女の子の社員として会社に通う為の
普通の黒色のスーツである。そのスカートに足をとおし、ホックをしめ、ジッパーをあげた。

改めて自分が森山である事に感動し、ジャケットをはおった。
これで着替えはおわった。

そして化粧を始めた。
森山も元々気に入ってつかっていたジルスチュ〇ート中心のコスメ
そしてアナ〇イ、Dio〇など女の子のにおいに包まれて化粧を楽しみながら整える。
髪の毛を整えた。

カバンの中身も確認する。
財布に化粧品などももった。今日会社で必要と言われた書類ももった。
ハンカチやテッシュ、ストッキングの予備ももった。
女の子はもちものもいっぱいである。
でも今はそんなもちものをそろえる自分がとっても楽しかった。

朝7時30分・・
黒いパンプスを履いていよいよ出発だ。

カツカツ・・・

15分程歩き駅に到着する。
初々しい新入社員がたくさんいる。
不安そうに電車を探す人もいる。

パンツスーツの人もいるが同じような服を着ている事がとても嬉しい
女性の世界にはいったのだから・・・

パンプスをカツカツ音をならし歩く、
不安定な靴で電車にのり、会社へ向かう。

駅のホームを歩く僕に男性の目線が飛ぶ
心の中で、嫌だなという思いや恐怖を感じる。
ただ見られてるだけだろうが・・・
女の子は毎日こんな思いをするのか・・・
改めてちょっとガッカリした。

タイトスカートだから見えないだろうけど、しっかりガードして内股で歩く

そして到着した会社。
数ヶ月前まで男性として通っていた会社。
そこに女子新入社員として戻ってきた。

ドキドキしながら従業員用の入り口へ向い。
ドアを開き、電話が置いてあったので総務部へ電話をする。

ガチャ
「はい総務部です。」
「あっ・・おはようございます。新入社員の森山です」
「ああっおはよう。森山さんね。ちょっと待っててね」
明るい感じの女の人だった。

少し達と総務の人が迎えに着てくれた。

改めて僕は挨拶した
「おはようございます。あっあたしが森山です」
「うん。おはよう、そんなに固くならないでね。あたしも最近入ったばっかりなんだ」
「えっそうなんですか?」
「うん!あっ新入社員さんはこっちだよ」
「はい」


カツカツ

なんども歩いた館内だが、不思議だ。
女子になったからなのか?よくわからないが、まるで初めてきた感覚だった。

「ここよ」
ガチャっ・・・
会議室のような場所だった
「まだ誰も来てないんですね・・・・」

ガチャ・・

「えっ・・・あ・・・の・・・なぜ・・鍵を」
僕は不安そうに訪ねた。

「ちょっと聞きたい事があってね・・」
「えっ・・なっなんでしょうか?」

「あなた・・高木正則でしょ?」

「!!」

どういう事だ。この事は政府しかしらないはず・・いや知っているヤツはいる社長だ。
しかし、社長が言ったとは考えにくい。いったい・・・

僕はなりきりとおす事にした。

「えっ・・あっ・・あの・・誰ですか、それって」僕はクビをかしげる
「とぼけないでよ・・残念ながらあたしは全てを知ってるわ・・」
「全ては作り物の元男・・・が本物の森山の戸籍をのっとり、森山の服を着て今この場にいる」

「ちょっと・・・変な言いがかりは止めて下さい。あなたはいったい・・」

不気味な笑みを総務の女子社員は浮かべた。
「名護・・名護芽衣子、あたしの名前よ」

「!」
思い出した・・森山茉莉奈の人生をかけて戦った、女の子だ。

「別に今更、その人生に興味があるわけじゃないわ・・・」
「ここに入社したのは偶然。もう人生に絶望していたけど、もう一回、頑張ろうとした。」
「あの試験に落ちたあたしを政府は、今回の件を絶対に口外いない事を条件に全ての借金を払ってくれた」
「もう人生を捨ててた名護芽衣子。あたしそのもの人生が復活したの」
「そして事務職を探し、この職場にたまたま採用されたのよ」

「そっ・・・そんな・・」

「驚いているわね。大丈夫、別にあんたの敵でも味方でもないわ。あたしはただの会社の先輩」
「完全に手術して女になっているんだろうし、今更あんたが偽物っていってもあたしにメリットなんてない」
「第一そんな事がバレたら、また借金が出来てしまう・・」

「でも、あんたに手を出せないとは言われていないわ・・・」

「!」

「ちょっとでも変な事や女性としてのマナーが守れないのなら・・」
「女性の世界で女らしくいじめてあげるから・・」
「女のいじめは陰湿なのよ・・」
「いきなり新入社員をいじめてはあたしの評判が下がる」

「ふふ・・びっくりした!?でもあたしは本気よ・・あなたがどれだけ女子でいれるか
楽しみね・・・」
「怖いでしょ・・女の世界には色々あるの・・その世界にあんたは自分から足を踏み込んだ」
「女の子世界は楽しい事もたくさんあれば、嫌な事もある」
「それを教えてあげるわ」

名護芽衣子の挑発的な台詞・・

「名護さん。あたしは森山茉莉奈です。女性として楽しい事も嬉しい事も悲しい事も辛い事も」
「すべて受け入れるます。ご指導宜しくお願いします。」

「ふふ・・・あくまであなたは森山茉莉奈なのね」
「・・・・はい。高木なんて人は知りません。」

「いいわ。ちゃんと指導してあげるからね。それじゃあ・・本当の新入社員の控え室に行きましょうか・・」





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