人生のリコール 第4章 森山茉莉奈としての帰宅、生活のスタート
 作:Sachi



ふう・・・終わった。
仰々しい式典が終わり、僕は控え室にとおされた。

控え室にある鏡を除きこみ、森山茉莉奈となった自分の顔を改めてみた。
「本当に女の子の顔だ・・・」
さっきは感動する間もなく、式に連れていかれてしまった。

今、落ち着き、改めて自分の姿をみてみた。
そう、一年前に憧れた就職活動の女子の姿。
女子専用の衣類、ブラウス、スカート、ストッキング、パンプス、ジャケット
ジャッケトのボタンをゆるめる・・
ジャケットの中の裏地は淡いピンク色で、見えない部分でオシャレが楽しめるようなジャケットだ。
ジャケットの中には、もちろんローマ字でmarina moriyamaの文字が書かれていた。

「そっか、このスーツは元々森山のものなんだ。」

式典の前は慌てて着替えよくみなかった。
女子になった僕に、適当に準備されたものだと思っていた。

このスーツは就職活動の為にお母さんが買ってくれたものだ。
改めて大切にしなければと思った。

コンコン、
「はいるぞ」
「あっはい」

「・・・どう見ても女性になったな。まぁお前なら森山として生活していけるだろう」
「さっき式でいったように森山が所有したものは全てはお前に引き継がれる。そのスーツもそうだ」

「はい」僕はうなずいた

「そして、さっそく今日から森山として生活をスタートさせていくれ。おい!持ってきてくれ」
「?」

僕の前に運ばれてきたのは、可愛いらしいベージュ色のバックとコートだった。
「これも、森山の所有の物だ。中身を確認して、これをもって、帰宅しなさい。」
「・・はい。」

僕はドキドキが収まらない、姿も手入れ、知識も森山としての記憶まで勉強した。
それでも、森山のスーツを着用して森山のバックの中身を確認する
他人ものだったのを確認するという不思議なドキドキ感につつまれていたのだった。

僕はバックを開け、中身を確認した。
ピンク色のスマートフォン、アパートの鍵、コーチの財布、化粧ポーチ、
ハンドクリーム、タオル、テッシュ、お菓子・・・
男だった時には持ち歩かないものの数々、今日からは持ち歩かなければならない。

「森山のアパートに入っていいって事ですよね?」
「ああ。今の話を聞いてなかったのか、その鍵は、お前の家の鍵だ。」

「本来、森山の人生の中で俺達が関与する事はない。送っていきたいが、
俺達と森山となったお前の接点はここまでだ。
じゃあな、女の子になったんだ気を付けて帰れよ。森山!」

「えっあっはいっ!」

僕はわたされたコートを着用し、カバンを肩にかけ
森山の家に帰る事にした。

自動ドアが開き、カツカツ、パンプスの音が響く、

三月だというにまだ、寒い。
ストッキングを履いた足とスカートの裏地が擦れあい、冷たい空気が流れる。
女の子しか、わからない感覚なんだと思いながら歩く。

散々練習した女の子の歩き方。
膝と膝がこすれるような感じのやや内股気味の歩き方である。

なにより、体も不思議である。
女の子になったので軽い、そして今はペニスがない。
まったいらな女性器、邪魔をするものがなくなったので足は閉じやすくなったように感じる。

しばらく歩いたが疲れた・・
女子の体というより、手術などいっきにしたのだ。
体には負担がかかっているのだろう・・
アパートまでまだ遠い。僕は財布をあけてみた。意外にも15,000円程のお金が入っていた。
僕はタクシーを拾う事にした。

タクシーをおり、
森山の部屋、201号室へ向かい、階段を歩くのであった。
部屋の前で番号を確認して鍵を差し込む
「ただいまあ。」
アパートに入る。始めて入る女の子の部屋は、自分の部屋だ。

色、黄緑の系統で統一された女の子らしい部屋。
部屋の中心のクッションに座る。

自分の部屋・・なんだ。
ドキドキ
「僕はなにを緊張しているんだ。ここは僕の部屋だ!」
「もう僕が茉莉奈なんだ!」「この部屋のものは全部僕のものだ!」
誰もいないの言い聞かせ、丁寧にスーツを脱ぐ。
そしてクローゼットをあけた。

クローゼットを開くと、スカートやワンピが、たくさん、広がる。

わあ、可愛い!

「ちょっと、これ、全部、僕の服なんだよね!」

ガチャ、
次々、ワンピを手にとる。
そして、タンスの引き出しをあけてみる。
わあ。
女子の下着。ブラやショーツ、キャミが入っていた。

これも僕のもんだあ!

さっき、病院できた
色気ない、下着を脱ぎ、タンスに入っている。ピンク色の下着を着用する。
そして、ワンピースを着る。
ジッパーをあげる。

鏡をみると、1人の女の子が映る。
これが僕。今の僕・・
うわあ・・・というより、こんなに小さい、ショーツやブラも
女の子のMサイズのワンピースも普通にきれるんだ

照れながら鏡を除くのであった。

それから20着近くの衣類を着たり脱いだりした。
そのたび、ポーズを決める。
女の子のファッションは本当に楽しい

僕は森山、僕は茉莉奈・・・
僕は女の子♪
僕は女子大生・・・

もちろん、今まで森山茉莉奈しか着た事がない服、
全て、そで、足をとおした。着れない服なんかなかった。

なりきりながら、服を着て楽しんだ。
なりきりながらと言うのもおかしい。
もう僕が本人なのだから。

そう思いながら・・・この日は眠ってしまった。






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