人生のリコール 第1章 つまらない男の人生
 作:Sachi



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ある会社に働く男性会社員 26歳 『喬木 正徳』は
女装趣味を持つサラリーマン。
家の中だけで、女装を楽しんでいた。
そんな秘密こそあったが、サラリーマンとしては、
まじめに勤務していたのだった。

そんなある日、女性になれるかもしれないチャンスがやって来た。
来年度採用予定の女子大学生は実は犯罪集団の一員だった為
採用が決定してから警察に捕まってしまった。
あまりに反省の色がなく、また、事件の重大性を考慮し、新しくできた懲罰
『人権没収』の実刑判決を決めたのだった。

この法律により、彼女達は全ての権利が没収された。
自分の財産、名前全てを失った。
そして、その人権は、強い希望者へ贈られるのだった。

つまり、彼女の人権を手に入れれば、
来年、彼女として女子・新入社員になれるのだ。
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僕は『喬木正徳』(たかぎ まさのり)
26歳の男性会社員だ。
なんてことない会社のサラリーマン

この生活がつまらなかった。

色のない生活、地味なスーツ
上司の機嫌をとり、数字を追いかける日々

それに引き換え
いろいろなアレンジができる髪型、
バリュエーション豊富なファッション
気分で変えられるメイク
ができる女性がうらやましい

女性になりたかった。
何回思っただろう。

今日は、4月5日

新入社員が入社、不景気とは言うが、
うちの会社は新卒を率先して採用する。
そこそこの会社ではあるが、25名(男性5名・女性20名)

リクルートスーツが初々しい女子達がならび
社内研修が始まった。
『いらっしゃいませ』
『ありがとうございました』
女性の綺麗な声響く

スカートから伸びた綺麗な足
うらやましい。
あんな格好をして外を歩いてみたい。

須藤 奈々・・・

9月・・・熱い夏が終わろうとしていた。

新入社員達も、仕事になれつつあった。
3ヶ月がすぎ、イメージが合わないと女子3名はもう辞めてしまった。
新入社員の中では、あの須藤奈々が目立って
仕事ができる子のイメージとなっていた。
男子の新入社員たちは、先輩達にしごかれながら、なんとかやっているようだ。

新入社員でもスラッとした女の子であった。
あんな子になりたい

家に帰り
もっているスカートなどを着て女の子になりきる。

『いらっしゃいませ』
『ありがとうございました』

『私は須藤奈々と申します』

僕は、今日みた社員研修を真似て
言葉を発し、女子・須藤奈々になりきって
しぐさを真似たりしていた。

彼女のように、椅子に座り、
須藤奈々になったつもりで、携帯をいじるのだった。

これが僕のただひとつの楽しみ
その日のあった女の子になりきる事。

一生結婚なんかできないだろう・・・
まぁしなくてもいい。

9月中旬
来年度の採用試験が社内で行われた。
今年度の採用枠は少なく
女子で5名・男性で2名だった。

その枠に対してぞろぞろと就職希望が面接に訪れたのだった。

やはり、リクルートスーツ姿の女子はいいなぁ。
可愛いらしく、可憐に見え

そして、あのスーツを着たい。
そういう妄想をしながら、
こっそり、遠くから写メをとるのだった。

面接が終わり、ある一つの女子グループが会場から出て来た。
5名の女子グループ
その中の1人に声をかけられた。

『あの喬木先輩・・・ですよね?』
僕は振り向いた
『えっ?・・・君は・・確か・・・も・森山?』
『はい!そうです。お久しぶりです』

彼女は『森山 茉莉奈』(もりやま まりな)
自分より3っ下である。
仲がいいとまで言えないが実は
小学校で最初にあった。学校全体で1年生から6年生までグループを作って
グループ活動を行った際、僕は小6・・森山はまだ小3だった。
森山はその頃から、おしゃべりがすきな活発的な女子だった。

その後は学年が違う事から、中。高校では一緒になる事はなかった。
しかし、森山とは、偶然同じ大学だったのだ。
森山が大学1年の時に交流会で再会
小学生の面影はなく、大人びた印象であり
あまり顔つきが変わらない僕を森山が逆に覚えていたのだった。

そして、さらに偶然ここで再会したのだった。

『喬木先輩ここで働いてたんですね』
『うん。ここにいるって事は採用試験受けたんだよね?』
『はい!そうなんですよ!昨年の内に決めたかったですが
就職難でなかなか、でも、面接官さんの印象は良かったみたいなんで
決まるといいなぁ・・・♪』
『そうだね。応援してるよ』
『はい!ありがとうございます。すみません、今日は失礼します!』
『ああ、頑張って!』
『はい!』

森山は元気良く帰っていった。

受かるといいなぁ・・・

そう思った僕であった。

随分と女の子らしくなり、綺麗だった。
合格を願い。

その日の夜はもちろん、森山になりきって真似事をした。

10月下旬・・
人事部の知人からきいた話によると
森山の採用が確定したらしい。

僕は自分の事のように嬉しかった。

これ以上4月が待ちどおしい事はなかった。

・・・しかし11月上旬


おもわね、方向に話が進む

社長宛に、
警察官、裁判官、国会議員10名物の大物がやって来た。
みな厳格な顔をしており、まるでやくざのような風格であった。

そして、何故か僕が呼ばれたのであった。

堅苦しい顔が並び、社長との名刺交換が終了した。

『今回はいったいどのようなご用件で・・・』
僕もツバを飲んだ。
この面子に他の役員が誰もいない中、何故、社長と僕だけなのか・・・
しかし僕は、犯罪は何一つやっていない・・・・

すると警察官の1人が口を開いた
『大変申し上げにくいのですが、来年採用を決めていた森山茉莉奈・・
彼女をこの度、逮捕する事になりましたので、そのご連絡です。』

『えっ・・・森山って・・・確かあの真面目そうなぁ・・・彼女が・・・どういった内容で・・・』
社長が問う、僕もびっくりした。

すると説明を続けた。
『実は長年地方の警察である犯罪集団を追っていました。特に組織の名前はありませんが、
最初は万引きでしたが、万引きから窃盗、強盗と言える犯罪レベルまでたっしました。
最近では結婚詐欺などに手口にかわり、警察としても手をやいていましたが、
やっと尻尾を見せてくれて、今回逮捕に踏み切った訳です。
グループはなんとまだ、21歳の女子大学生3名、その中の1人が森山です。

僕と社長は、びっくりして声がでなかった。

警察がさらに説明を続ける
『採用されたのは無理もない、彼女達は表では普通の女の子を演じていた。
それがわなです。

まったく、タバコなどもやらず、犯罪などには結びつかないイメージ。
そしてプロ顔負けの窃盗・強盗・詐欺を考え出し実行
まさか、女子高生の手口とは誰も思わないような犯行でした・・・

彼女達が犯行を始めたのは高校2年の頃・・・
そして逮捕までの間、被害総額はブランド品や現金などで、
1億5000千万に上る見込みです。

『えっ!?そんなにですか?』
『はい、おどろかれたでしょう・・・』
『しかし、そんなに金を使っているようには見えませんが・・・』
彼女達の金の使い道・・・あくまで自己投資と貯蓄です。

男性にはあまり詳しくわかりませんが、
よく見るとスーツにしろ化粧品にしろ実は高校生や大学生が持つには
高価な物が非常に多く、エステなどには月に何回も通っていました。

『そんな・・・まだ入社前といえども、採用決めたモノとしてショックです・・・』

『お気持ちお察しいたします。』
『今回はその報告でいらっしゃったのですか?』

『いえ、実はここからが本題なのです・・・』
『え?』社長と僕はびっくりした。

彼女達にはまるで反省の色がない・・・
そこで、我々が密かに行って来た懲罰を初めて執行する事にしました。
『人権没収』です。

彼女達の権利を全て剥奪するというモノです
彼女達の財産、資格、そして名前、存在
全てを剥奪し、別の人間として、生きさせる罰です。

『はぁ・・・』社長はよくわっていない、そして僕も・・・

そして、自分の人生が思ったようにいっていない人物、
たとえば親の都合で狂ってしまった。そして性別があわないなどといった人に
『森山茉莉奈』としての人生を差し上げるというモノです。

『えっそんな事ができるんですか・・・?』
思わず僕は言った。

すると
『やはり、食いついたな喬木くん』
『えっ・・・』
僕は、ドキっとした。

社長と君を呼んだのは他でもない・・・
『喬木正徳くん、森山茉莉奈にならないか?』

「えっ・・・マジですか・・・」
君のPCからのアクセスを見させてもらった。
女装、TSF、男女入れ替わり・・・そういったモノばかりだ。
君なら、この試験を受けられると思う・・・

「でもなんで僕を・・・この会社でなかったら、いっぱいいるハズ・・・」

僕は社長が隣りにいるのも気にせずに言った。

まだこの法案は、計画段階だ。
すんなり溶け込める人物が望ましい。
そこで、我々が候補をあげたのは、同じ会社内で働いている人物である事。入れ替わる自分と多少の接触のある人物で、異性になりたいと思っている人物が望ましい事になり、貴社の社員全員を調べた所、キミだけが、該当したという訳だ。

そうなんですか。

君、自身が望んでいた展開のはずだ。

もちろん君が、女性として生活する為の事は全て保証する。強いて言えば、君自身の高木正範としての人生を捨てる事が、代償かな。
しかし、君には、今の人生なんの未練もないだろう。

決めたまえ、森山茉莉奈として生きるか?生きないか?

なります。

僕は森山茉莉奈になります。







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