看護婦は見た-7-
 作:ONOKILL


見舞客(1)

加世子は目覚めた。彼女はしばらくの間、気を失っていたのだ。
この日、彼女は、両親の父親の兄にあたる宮路の見舞いに来ていた。そして突然、気を失ったのだ。

ある大手企業の受付嬢を務めていた大峯加世子(おおみねかよこ)は二年前に結婚したが、最近離婚して独り身になった。
離婚の原因は彼女にあった。
お嬢様育ちの彼女は浪費癖を持っていた。それは結婚しても変わらず、むしろ酷くなる一方で、夫の知らぬ間に借金を重ねた。
夫はそんな加世子を見限り、用意周到の末、慰謝料なしに加世子と離婚したのだ。

そんな加世子が何故か、遠い親戚の宮路が入院している病院に頻繁にやって来るようになった。そしてある日、宮路の独り暮らしの家を定期的に清掃する、と言いだしたのだ。
宮路は彼女の気持ちに感謝し、家の鍵を預けた。ところが彼女は家の清掃など一度もしなかった。その代わり、宮路の所有する様々な金品、財産を勝手に処分し始めた。
離婚されて収入が無くなった加世子は、身寄りのない宮路の持つ財産に目を付けたのだ。
彼女はそれで得たお金で再び贅沢な生活を始めたが、長くは続かなかった。
宮路が彼女の行いに気付き、自宅の鍵を手渡すのを拒んだためだ。
そしてこの日、彼女は宮路と鍵の奪い合いになり、その最中、気を失ったのだ。

目覚めた加世子は自分がベッドに寝かされていることに気付いた。目の前にぼんやりとだが、彼女を手当てしたと思われる看護婦の姿が見える。
(私に何が起きたのですか?)
彼女は看護婦に向かってそう話し掛けた。
しかしその言葉は声にならなかった。彼女の喉からは呻き声のような声しか出なかった。
(どうして声が出ないの?)
彼女はそう思い、自分の口に手を当てた。するとおかしなことに気付いた。
(!?)
自分の手が皺だらけの手に変わっていた。しかも口元からは酷い口臭が漂っていた。

「くっくっく。まさか、加世子になるとはな」
加世子の目の前で看護婦が笑った。それを見た加世子は、目の前に居るのが看護婦ではないことに気付いた。
(!)
彼女は驚愕の余り絶句した。何故なら目の前にいるのは彼女自身だったからだ。

続く






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