看護婦は見た-5- 作:ONOKILL ベテラン看護婦(1) 清田茜(きよたあかね)がロッカールームに入ると、そこには彼女の後輩である杉村亜美がいた。夜勤が終わった亜美は下着姿になり、私服に着替えようとしていた。 「お疲れ様」 茜は亜美に声を掛けたが、亜美は笑みを浮かべて軽く会釈するだけで、心ここにあらずの状態だった。 年頃のうら若き女性なのに、顔に化粧は施されておらず、髪の毛はぼさぼさで、その身体から何日も風呂に入っていないかのような異臭が漂っていた。 茜は亜美の事を心配していた。亜美はこの三週間余り、働き詰めだったからだ。 確かに看護婦の仕事は過酷で、新人看護婦である亜美はそれを受け入れて黙々と働いていたが、特にこの三週間は急患が多く来院したため、仕事に追われる毎日だった。 茜がそんな亜美を心配しつつ、自分のロッカーから財布を取り出した時、斜め後ろに居た亜美がその場に座り込んだ。そして崩れるように横に倒れた。 茜は慌てて傍に駆け寄ると、亜美は気を失っていた。 「しっかりして、杉村さん!」 茜はベテラン看護婦らしく亜美に向かって冷静に呼びかけた。するとまもなく、何事も無かったのように意識を取り戻した。 「…あれ? 清田先輩、どうしてここに?」 「どうしたも何も、あなたはここで気を失っていたのよ」 「気を失った…? !!」 「ど、どうしたの?」 「この手…、それに胸もある…。元に戻った! 私、元の身体に戻ったんだわ!」 亜美はそう言って喜びを露わにした後、今度は子供のように泣き出した。 茜はそんなの亜美の言動を見て、唖然とするしかなかった。 続く |