「おねぼく ―あこがれのおねえさんに憑依してしまったぼくの日常―」

 作・JuJu



【第6話(全10話)】

 ここはマンションの一室。ぼくは朋さんのマンションに来ていた。
 朋さんはぼくを部屋に残し、別の部屋に行っている。
「ここが朋さんの部屋なんだ。大学生の女性の部屋に入れるなんて。うれしいな」
 ぼくは朋さんのベッドの端に腰かけて、そわそわと部屋を眺めていた。瑚さんの部屋につづいて、朋さんの女性の部屋に入れて、ぼくは感激していた。
 でもなんで、朋さんはぼくを部屋に呼んだんだろう? お茶でも飲ませてくれるのかな? まあ、朋さんの部屋に入れたんだから、なんでもいいや。
 しばらくして朋さんが戻ってきた。その姿を見て、ぼくはおどろいた。なんと朋さんは、アンキモのウェイトレス服を着ていたのだ。
「えへへ。制服もって帰って来ちゃった」
 朋さんは照れたように笑いながら、話を続けた。
「瑚も知っていると思うけれど、あの店って制服持ち出し禁止なんだよね。
 だから、こっそり持って来ちゃった。
 持ってきた理由はわかっているでしょう? これからこの制服姿で、瑚を可愛がってあげる。
 バイトの時、あたしの制服姿を嫌らしい目で見ていたの知っているんだからね。
 いいのいいの。今日は、あんなエロい男たちはいないから。瑚だけが、あたしの制服姿をひとりじめしていいんだよ」
 そういって、朋さんは正面から近寄ってきて、ベッドの端に座っていたぼくをゆっくりと押し倒す。
「いったいなにを?」
「わかっているくせ。だからあたしの誘いに、のこのこと付いてきたんでしょう?
 レズセックスなんて知識がなくて当然だよね。それとも、緊張して頭が真っ白に成っちゃったの? いいよ。あたしが全部教えて上げる。
 瑚はまだセックスの経験はないんだよね。いままで男とセックスをしたってあたしに話したことはないから、そう推測したけれど、間違っていないよね。
 だからあたしが、初めての人かー! うれしいな。
 安心して。処女膜は破らないようにしてあげるから」
 そう言いながら、朋さんは仰向けに押し倒されているぼくにむかって顔を近づけ、軽くくちびるを合わせた。
 朋さんとキスしちゃった!
 感動する反面、いったい何が起こっているのかわからなかった。
 いまのぼくは瑚さんなんだ。女性どうしでキスをするなんて。
 朋さんの部屋に入れたことや、朋さんの想像もできなかった行動に、お姉さんの記憶を引き出すことをすっかり忘れていたぼくは、ここに来てようやくその能力を思い出し、あわてて記憶を読みだした。
 ……。
 どうやらレズセックスというのは、女性同士で、裸になって、キスをしたり、互いに胸とか秘所などをさわり合うらしい。
 ええー! セックスってそんなことをするの!? しかも女性同士で。
 ぼくがお姉さんの体を使って、そんなことしちゃっていいんだろうか?
 でも、年上のお姉さん好きのぼくとしては、してみたいという欲望が抑えきれない。
 ただ同時に、これはしてはいけない禁忌だということも、お姉さんの知識から伝わってきた。
 だから本物の瑚さんだったら、レズセックスなんて嫌悪してぜったいにやらないだろう。
 でも、いまはぼくが瑚さんなんだ。期待を抑えられなくなったぼくには、お姉さんの禁忌の知識など、なんの抑制にもならなかった。
 問題は、何をすればいいのか、これから何をするのかまったくわからないことだった。
 お姉さんの知識にも、女性同士で、裸になって、キスをしたり、互いに胸とか秘所などをさわり合う程度の知識しかなかった。具体的なことは、お姉さんでも知らないのだ。
 だからぼくからはなにもできずに、ただ朋さんからの行動を待つしかなかった。
 ぼくの上にのしかかっていた朋さんが離れた。そしてベッドから降りる。
 ぼくも体を起こして、朋さんのベッドで正座をした。
 すると朋さんはぼくの前に立ち、ウェイトレス服のスカートの裾を手でつかんだ。
 何をするのだろうと思って、そのまま見ていると、朋さんはスカートをまくり上げて、ぼくにパンツを見せつけた。
 驚きながらも、ぼくの目は朋さんのパンツを凝視してしまう。
 それを見た朋さんは、スカートをおろすと安堵したように笑顔になった。
「やっぱり」
 朋さんが言う。
「やっぱりって、何が?」
「スカートをまくって見せたとき、瑚ったら、男のようないやらしい目をしていた」
 まずい。男が憑依しているって気付かれたのかもしれない。そのことを確認するために、わざとパンツを見せたのかもしれない。
 でも年上の可愛い女性、それもアンキモのウェイトレス姿でスカートをまくられたら、目がパンツに釘付けになるのは止めようがない。
「やっぱり瑚って、女の子に興味があったんだ。
 さすがにレズっ気のない人に、無理矢理女の子同士のエッチを迫るのは気が引けるからね。あたしだってそのくらいの倫理観はあるから。
 でもこれで、気兼ねなく、瑚と女の子同士の愛を深められるってわけだ」
 朋さんは『女の子同士』って言った。ということは、ぼくがお姉さんに憑依しているってことはばれていないらしい。
 ぼくは安堵して、目を閉じた。

(「第7話」につづく)







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