おまけ


「それじゃあね。」

晴美は、真緒と孝弘を玄関から見送った。
家には晴美1人。
「さてと・・・・・」

夕飯の支度をするのかと思いきや、彼女は台所には向かわず二階に上がり、自分の部屋に入った。

誰もいない晴美の部屋。整理され、掃除が行き届いている。
しかし、どこかからガサゴソと物音がした。
まさか泥棒が?しかし、

「ふふふ・・・・・」
晴美はその様子をむしろ愉しんでいるかのような笑みを浮かべる。
壁にあるスイッチを押して電気を点けると、壁の一部分を押した。

すると、驚くことに部屋の壁が上に開いた。
「ふふっ、2人は帰ったわよ。」

晴美が声を掛ける。
そこには、下着姿の女性が縛られて放置されていた。
薄紫のショーツとブラ。そして黒いタイツ。引き締まった肉体は美を際立たせている。
そして口にはスカーフで詰め物が施されていた。
ひどくもがいたのか、ブラジャーの右肩紐は外れ、その女性の額には汗が張り付き、口元には涎が垂れて床面にちょっとした水たまりをつくっていた。

晴美はその女性の顎に優しく手を添えて顔を近づけた。

「うふふ、いい子にしていたかしら?私の双子のお姉さん」

晴美が縛られた女性に話しかける。
その相手は、なんと!その女性の顔も晴美の顔をしていた!

一体どうゆう事だろうか?

「ふふふ・・・お口を自由にしてあげるわね。」

そう言って晴美は縛られた晴美の口元を縛るスカーフを外した。

縛られた晴美は咳き込む。

「げほっ、げほっ・・・・・・ちょっと!?いきなりはひどいんじゃないの?」

下着姿の晴美は、縛られ、密室に監禁されていたにもかかわらず、おびえないどころかもう一人の自分に対して反論する。

まるで、相手が誰なのか分かっているかのように。

「ふふふ・・・・・・」

スカート姿の晴美は、自分の顎に手をやる。


べりべりべり・・・・・・・・

その顔の皮が外れた!いや、皮ではなく、特殊ラテックスでできた晴美の顔を模したマスクだった。
その下から現れたのは・・・・・


「はっはっは・・・・仕方ないだろう?真緒が初めて彼氏を連れてきたんだ。
 どんな男か、見届けないとな・・・・・」

晴美と歳の近い壮年男性の顔が現れた。
彼の名前は時田孝雄。真緒の父親だ。
彼もまた、時田家の名前に恥じない変装術の達人だった。


「それなら普通にあなた自身が出ればいいじゃない。
 わざわざ私に変装しなくたって・・・・・」

「だから最初から君に変装はしなかっただろう?
 ちゃんと君に彼のことを見届けてもらいたかったしさ。
 "試験"のこともあったしね。
 それに、男の子にとって、彼女の父親というのは苦手かもしれないからさ。」

「だからって、わざわざ仕事早退しなくても・・・・・」
「ははは・・・・"親心"だよ。"親心"」

何と、娘の彼氏がどんな人物か気になっていた孝雄はこっそり帰宅して晴美に成りすましていたのだ。
孝弘と真緒が地下室にいる間に変装し、本物の晴美をこの場所で縛っておくなど、孝雄には朝飯前だった。
妻である晴美には何度も変装していたからだ。

「しかし彼。見どころがあるな・・・・・」

「ふふ、あなたもそう思ったかしら?
 それなら安心だわ。じゃあ、ご飯の支度するから、この縄解いてよ。あなたの縛り、
 私でも縄抜けできないんだから。それに、何時までも私の恰好してないでね。」
「分かったよ。」

そう言って孝雄は、本物の晴美の縄を解くのだった。



「ふふふ・・・・・孝弘君。君とは・・・・長いつきあいになりそうだな・・・・」





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