『俺の彼女』(後編)
 作: Howling


「ふふふ・・・・・ねえ孝弘君・・・・・"私の娘"になってみない?」


「娘って・・・・え!?俺が真緒ちゃんに!?」

驚嘆する俺に真緒は晴美さんの顔で頷く。

「いっ、いやいや!?無理でしょさすがに!」

俺は即答した。

「できるって言ったら・・・・?」

晴美さんの顔をした真緒は自信満々と言った表情で言う。

まさか、本気で言ってるんだろうか?
「ど、どうゆうこと?」
それでも信じられない俺は、もう一度尋ねる。

「ふふっ・・・・・」

晴美さんに化けた真緒は薄く笑うと、隅にあったタンスからあるものを出した。
肌色をしていて、さっき見たマスクなどとは大きさがまるで違っていた。

「これは?」

「ふふっ、特殊なラテックスでできたボディタイツよ。
 これで、男性でも女性の体に変えることができるわ。」

真緒がそのボディタイツというのを広げると、それは確かに人の形をしていることが分かった。
「さ、触っても・・・・?」

「もちろんよ。さあ」

真緒が差し出したそれを俺は触る。

「わっ・・・・」

俺はそのタイツの手触りが人肌とほとんど変らないことに驚いた。

「すごいでしょ?このタイツ、形状記憶だからそうそう体型が変ることはないわよ。
 それに・・・・・」

真緒は俺の股間あたりを見つめる。

晴美さんの顔でそれをされたので俺は思わず恥ずかしくなった。

「股間のところにはパッドがあるから、膨らんだりはしないわ。 
 どう?孝弘君・・・・・"娘"に、なってみない・・・?」

笑顔で問いかける真緒。

その誘惑に、俺は、為す術なく飲まれて・・・・・・

気づいたら頷いていた。

「そう?嬉しいわ。じゃあ早速着てみましょう。向こうで着替えてきて。
 ちゃんと、服は全部脱いでからじゃないとダメよ。」
真緒に背中を押されて、俺はデパートやショップでよくある試着室みたいなところに連れて行かれた。

密室で俺一人。
手にはあのボディタイツ・・・・・・・・・

好奇心のままに、俺はそれを着る決心をした。
たぶん、こんなことそうそうお目にかかれることじゃない。

言われた通り、服を全部脱ぐ。
そして、ボディタイツを脚から着始めた。
足の指先、爪までもがしっかり造られているのには驚いた。
細身の俺の体が、柔らかい女性の体つきに変化していく。
話にあったパッド部分のおかげで、確かに外からでは股間の、男のあれが分からなくなっていた。

ニンジャの技術ってすげー・・・・

上半身を着ていくと、女性のおっぱいの感触が伝わる。
ぷるんぷるんとしたそれの重さというのを初めて実感した。実体験で思い知った男ってそうそういないだろうな。

そんなことを考えながら俺は背中のファスナーをどうにか閉めた。

姿見に映すと、俺の体は首から下が完全に女性の柔らかなラインを描くボディに変化していた。
おっぱいやくびれといった男の俺にはない女の体の特徴がはっきりと出ていたが、
思ったほどに窮屈さは感じなかった。

しかし、今の自分はタイツを着ているものの一見して全裸の状態だと気づいて、俺は恥ずかしくなった。

「終わったよ・・・・」

俺は試着室から顔だけ出した。

「どうしたの?恥ずかしがらなくていいわよ。別に孝弘君が裸というわけじゃないんだから。」

そう言われて俺はおずおずと真緒の前に立った。

「う〜ん・・・・いいわよ孝弘君。ばっちり着こなせてるじゃない。」

真緒は満足そうに言った。

「じゃあ仕上げよ。こっちに来て。」

俺は鏡台の前に座る。
そこには、あのマスクとウィッグが置かれていた。
ウィッグは真緒の髪型ということはすぐに分かった。
ということはこのマスクは・・・・・

「さあ、それを被って。私になれるわよ・・・・・」

やはり、真緒のマスクだった。

「その前に、これを塗ってね。」

クリームを手渡される。
これで、マスクとの密着度を上げるらしい。

塗った後に、俺は改めてマスクを手に取った。

思わず息を呑んだ。これで俺は、真緒ちゃんに・・・・・

興奮を抑えつつ、俺はさっき見たようにマスクを被る。

真緒が後ろのジッパーを締め、頭にウィッグを被せてくれた。

「仕上げをしてあげるわ。」

真緒がそう言うと、俺は真緒と向き合い、マスクの境目を消したり、メイクを施してもらった。

その途中に、真緒は俺の喉元、ボディタイツの内側に隠すように何かを貼り付けた。

「ふふっ、これで声も私になれるわ。」

「私にって・・・・・・あれっ!?この声は・・・・・」

俺は思わず声を上げた。
俺の口から、聞き慣れた真緒の声が流れていった!

「すごいでしょ?簡単な変声器みたいなものよ。じゃあ、あとはこれを着て。」

手渡されたのは、先ほどまで真緒が着ていたボーダーTシャツとデニムスカート、そして真緒の下着だった。

「これって・・・・・」

「そう。全部私のよ。ピッタリ着ることができるわ。」

真緒の下着を身につける・・・・・そのことに俺は興奮してしまった。

「ふふっ、いやらしいこと考えてたでしょう?」

真緒は晴美さんの顔で意地悪そうな笑みを浮かべて俺を見つめる。

「い、いや・・・・」

「ふふっ。私の顔でそんなもじもじしてるのも可愛いわよ。初めてだろうから私が着せてあげるからね。」


か、かわいいって・・・・・


そう思う俺をよそに真緒は俺に下着を着せていった。

5分も経たないうちに、俺の姿は、完全に今日最初に見た真緒の姿になっていった。

「こっちに来て。」

真緒に引っ張られて姿見の前に立つと、そこには、真緒と晴美さんの姿が映っている。

仲良しな親娘。しかしその中身は完全に別人。それどころか一人は女性ですらない。

俺は彼女の姿になったことに興奮を隠しきれなかった。

俺が手を前に出すと、鏡に映る真緒も同じように手を出す。
俺が表情を変えると、鏡の真緒も同じように表情を変えた。
信じられないことに、俺は完全に真緒の姿になっていた。
そのことに、俺はどきどきを抑えられなかった。
鏡の中の真緒が上気したような表情を見せていた。

「ふふっ、どう孝弘君?"私の娘"になった気分は・・・・?」

晴美さんの顔で耳打ちしてくる真緒。

「す、すごい・・・・・・・こんなのってすごいよ・・・・」

俺の口から真緒の声が流れる。否応なしに俺は実感した。
今、彼女に、真緒になっているんだと・・・・・!!!!

「うふふっ、こうして客観的に自分の姿を見るのもまたたまらないわねっ♪」
そう言って真緒は俺の体をあちこち触る。
真緒の姿になった俺の脚を絡め合った。
「え!?ちょっ・・・・!!」
大胆に行動する真緒を止めようにも
「私はお母さんよ。娘とスキンシップして何がいけないの?」
の一言で押し切られた。
本当に人格レベルでなりきってる。そんな彼女に俺はただただ流された。
晴美さんに化けた真緒の太ももが俺の股間を撫でた。

「ふふっ、さすがだわぁ。完璧に女の子のアソコよぉ・・・・・」

「ちょ、や、やば・・・・・」
女性に密着されること自体緊張の限界だった。
それに加えて、今の自分が真緒の姿になっていることと
晴美に化けた真緒の太ももによる刺激でボディタイツのパッド越しに圧力を掛けられていることも相まって
俺の股間は爆発しそうになっていた。

それに気づいたのか、真緒は晴美さんの顔でにこりと微笑むと、密着状態を解いた。

「ふふふっ、じゃぁ上に行ってみましょう。私の双子の姉に紹介するわ。」

「わ、分かりました。・・・・は、晴美さん・・・・」

「晴美さん?いいこと、今あなたは私の娘よ。
 だから、お母さんでいいのよ。」

「あ、はい・・・・・お母さん・・・・・」

ぎこちなく俺はそう応えた。

なんか、どんどん自分消えていって真緒に変っていくような気がして怖いような、
それでいて真緒と一つになっていくことで興奮するような不思議な気分を味わった。



リビングに戻る。
そこには、本物の晴美さんがくつろいでいた。
黄色のタートルネックセーターに紺色のタイトスカート、そして黒色のタイツだ。
真緒の変装は解いていたようだ。

「戻ったわ。」

晴美さんに化けた真緒が声を掛ける。
本物の晴美さんは振り向いて応える。
「あら、早かったのね・・・・ってあら?君もしかして孝弘君!?」

本物の晴美さんは俺の方を見て即座に言った。

「あ、はい・・・・」

おずおずと俺が言うと晴美さんはすぐさま近づいてきた。

「あらあらすごいじゃない!?
 どう見ても完璧に真緒だわぁ。」

晴美さんはぺたぺたと俺を触る。

すると真緒は俺を抱き込んで晴美さんから引き離した。

「ちょっとぉ。私の娘に手を出さないでくれるぅ?
 なんてねっ!」

「あらあら真緒。また私に変装するの上手くなったわね。」

そう言って二人の晴美さんが俺を前後から挟み込む。
豊満な胸が俺を挟み込んでいく。

「ええ。どんどん本物以上に美しくなってみせるわ。」
「ふうん、いい度胸じゃない。大人の色気はそう簡単に真似できないわよ。」
2人の美女が俺を挟んで色々言い合っている。
そうしている内にも、彼女達の胸がぐいぐいと押し当てられる。
『わわわ・・・・やばいって・・・・!!!』
俺は内心焦りきっていた。
美女2人の間に挟まれているこの状況に。それも、2人とも同じ顔をしているのだ。
「にしても、孝弘君の脚は中々いいわよぉ。本当真緒そのものって感じだわぁ。」
本物の晴美さんが自分の脚と俺の脚とを絡めながら言う。
「−−−!!!」
言葉にならない声を上げる俺。
「あらあら、カワイイ反応してくれるじゃない♪」
さらに、俺を抱き込み、自らの豊満な胸へと俺の顔を埋めさせた。

『えええええええええええええええ!?』
あまりにも大胆な晴美さんの行動に俺は内心悲鳴を上げた。
このとき、ここまで色々刺激の強すぎる体験が続いた俺自身、限界を迎えていた。
顔が真っ赤だろうなというのが想像できるほど、顔中が火照っているのが分かった。
彼女の姿になって、さらに、2人の女性が密着して胸を押しつけているのだから。
そして・・・・・



バタンッ!

足下から力が抜け、俺はへたり込んだ。そのまま、意識を失った。

その直前

「孝弘君!?大丈夫!?」
「まあ大変!?」

という声がかすかに聞こえ・・・・・・・・・・・・・・・・・







気がつくと、さきほどまでいたリビングのソファの上だった。

どうやらまだ真緒の恰好をしているようで、周囲を見渡すと、2人の晴美さんが俺を心配そうに見守っていた。
服装から、どっちが真緒でどっちが晴美さんなのかはすぐに分かった。

「孝弘君、大丈夫?」
晴美さんに変装した真緒が尋ねる。

「え?あ、ああ・・・・大丈夫・・・・」
何とか体を起こす。

「ごめんっ!おふざけが過ぎちゃって・・・・・!!」

晴美さんの顔で必死に謝る真緒。その仕草はなんだかんだ言っても真緒そのものだった。

「ほんとごめんねえ孝弘君。つい愉しみすぎちゃって・・・・」

奥から本物の晴美さんがお茶を持ってきてくれた。

「さ、どうぞ。」

お茶を一杯飲む。
頭がすっきりした気分になった。
すっきりしたおかげで、どれくらい気を失ってたのか考える余裕ができた。
「あ、今何時ですか?」
俺が尋ねると、真緒がすぐにスマホの時計をチェックして
「5時半だね。」
すぐに応えてくれた。帰るにはちょうど頃合いだった。

「じゃあ、そろそろ帰ります。」

「ああ、そうね。外も暗くなるし。
 じゃあ真緒、着替えさせてあげて。」

「は〜い。」

こうして俺と真緒は、それぞれ真緒と晴美さんの姿であの地下室へと向かった。





「それじゃ、今日は失礼します。」
俺は、真緒と晴美さんに挨拶した。
「ええ、またいらっしゃいな。
 あ、真緒。せっかくだから近くまで送っていきなさい。」
晴美さんが、真緒にそう言った。
「うん、わかった。」
真緒が応えて、俺と一緒に外に出た。
「じゃあ、晴美さん。また。」
俺は一礼して、真緒の家を後にした。
真緒が一緒に近くまで送ってくれるらしい。


「あー・・・・」

今日一日、凄い体験が続いた。
俺の彼女のすごい一面を知った。
そして俺自身、一時とはいえ彼女になれたという
普通あり得ない貴重な体験をした。


俺が真緒ちゃんに・・・・・・
これ、病みつきになりそうだな・・・・・・・
俺自身、危ない橋を渡ろうとしてるんだろうか・・・・・
色々考えが回っていく。


「ねえ、孝弘君・・・・」
「?」
「うち、色々変ってて、その・・・・・引かなかった・・・?」

不安そうに言う真緒。
「・・・いや、そんなことはなかったかな。
 不思議な経験って嫌いじゃないし、その・・・・・愉しかった。」
「孝弘君・・・・・!」

「それに、まさか真緒ちゃんになれるなんて思わなかった。
 好きな人になれるってすごいことだと思うよ。」

俺は思ったとおりのことを率直に言った。
すると、真緒は俺をぎゅっと抱きしめる。

「よかったぁ・・・・・」

真緒は小さな声でつぶやいた。
真緒自身、家のこととはいえ、不安だったのかもしれない。


「今日さ・・・」
「?」
「真緒ちゃんの家に行けてよかったと思う。」


「孝弘君・・・・ありがと。」

「だからさ、これからも付き合ってくれる?」

俺は真緒の方を見て言った。

「・・・・・うんっ!!!」

真緒は満面の笑顔で応えた。







俺の彼女
特技:他人に変装すること
   俺を彼女に変身させること

正直、病みつきになるかもしんない。




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