富雄と千紗の悪巧み1(いきなり生えてきたアレ)
 
 

山の中、少し奥まったところに清座高校の合宿場がある。
そこには体育館とテニスコートなどが完備されており、
夏休みの数日間、特定の部活に入っている学生たちは、
この合宿場で試合に向けた強化練習を行う事になっていた。

その合宿を知った高校2年生の藤山富雄(ふじやま とみお)は、彼女である田村千紗(たむら ちさ)と共に
面白い計画を立てていた。
富雄の開発した薬――
それは他人の身体に入り込むことが出来、異性の身体に入り込んだ場合は
自分のアソコが他人のアソコに生えてくるというものだ。
相手の意識がある間は何も出来ないが、相手の意識が無くなれば
自分の意思で自由に動かすことが出来るようになる。
富雄はそんな物を作っていたのだ。
この薬を使って学校に行き、楽しいことをした富雄は千紗にもその効果を話していた。
千紗も富雄に身体の中に入られ、奇妙な体験をした一人だったのだ。

女子バレーボール部に入っている千紗は、この富雄が開発した薬の効果を知ったとき、
ある事を思いついた。
女子バレーボール部には気にいらない3年の先輩がいるという。
二人が考えた面白い計画とは、その先輩に一泡吹かせてやるというものだった――
 
 
 

今は夏休みなのでグランドで部活をしている生徒はいるが、
この教室には一人もいない。
富雄と千紗は、教室で明日から始まる男女バレーボール部の
合宿について話をしているところだった。
 

「明日から合宿だよね。私はみんなとバスで行くけど、富雄はどうするの?」

「俺?俺も一緒に行くよ」

「どうやって?」

「決まってるじゃないか。お前の身体に入っていくんだよ」

「ええ〜!そんなの嫌だよ。だって誰かに気づかれたらどうするのよ」

「体操服じゃなくて制服で行くんだろ。スカートならばれないじゃないか」

「だって……恥ずかしいし……」

「ばれないって。仮にばれそうになっても、俺が千紗の身体から出て行けばいいんだから」

「それはそうだけど……」

「とりあえず必要な物はこのかばんに詰めてきたからさ。一緒に持っていってくれよ」

「…………」

「小阪(こさか)って先輩に一泡吹かせてやるんだろ」

「……うん」

「それならほら」

「……分かった」
 

千紗が富雄から小さめのかばんを受け取る。
すると富雄は、制服のポケットからあの薬が入った小瓶を取り出した。
 

「今から千紗の身体に入っておくよ」

「え?い、今から?」
 

千紗が驚いた表情で富雄を見つめる。
そんな表情を見た富雄は、
 

「だって明日わざわざここまで来るの、面倒じゃないか。それならあらかじめ
 千紗の身体に入っておいて、一緒にここまで来ればいい。そうだろ」

と言った。
 

「そ、そうだろって……今から帰って夕食も取らないといけないし、お、お風呂にも
 入らなきゃならないのよ」

「いいじゃないか。減るものじゃないし。というか、その間は身体から出て千紗の部屋で待ってるよ。それならいいだろ」

「ええ〜っ……でも……そ、それなら……い、いいけど……」

「じゃあ決まりだな。今着ている制服は机の引き出しに入れておけばいいや」
 

制服を脱ぎながらそう言った富雄。
 

「ね、ねえ。先に薬を飲んでから服を脱いでよ。レディーの前で裸になる気?」

「あ、ああ。ごめんごめん。そうするよ」
 

富雄が小瓶のふたを開けて一気に飲み干す。
すると、じわじわと体の色がなくなり始め、あっという間に制服だけが中に浮いた状態になった。
 

「これでいいだろ」
 

空中から声が聞こえる。
 

「うん……すごい……本当に目の前で透明になっちゃった」
 

千紗が返事をすると、その目の前にいる透明人間はまた服を脱ぎ始めた。
勝手に服が脱げて行くように見える。
白いカッターシャツを脱いで、黒い制服のズボンを脱いだ富雄。
そして靴下、トランクスを脱ぐと、千紗の目の前にはまったく人の気配がなくなってしまったのだ。
 

「まったく見えない……ねえ、富雄?」
 

千紗が話し掛けると、机の上に置かれた制服がひとりでに動き始め、机の細い引き出しの中に押し込まれた。
そして、すべての服が押し込まれると、
 

「それじゃあ入るぞ」
 

と空中から富雄の声が聞こえたのだ。
 

「あ……う、うん……」
 

少し緊張した声で千紗が答える。
 

「じゃあ……」
 

何も見えないが、なんとなく人の気配らしきものが近づいてくるような気がした。
そして――
 
 


下半身に妙な感覚を覚える。
そう、あの時と同じ感覚。
スカートの中に穿いているパンティが妙に窮屈になり、違和感を感じる。
そのパンティの中には――
 

「……も、もう……入り込んだんだ……」
 

千紗はわざとそれを触らないようにして椅子から立ち上がった。
半袖の白いセーラー服を着ている千紗。
紺色のスカートの中には、パンティに包まれて窮屈そうにしている、興奮した富雄のムスコが生えているのだ。
誰もいないことが分かっているのに、教室内に人がいないことを確認した千紗は、
富雄が持ってきたかばんを手にすると、急いで教室を出て行った。



 

「ああ……ぜんぜん落ち着かないよ。やっぱり断ればよかったなぁ……」
 

廊下を歩き、階段を降りて校舎をあとにする。
その間も、富雄のムスコはその存在を主張しているようだった。
スカートのおかげで周りには見えないが、この状態で電車に乗るのはやはり恥ずかしい。
でも、そうしなければ帰れないのだから――
 
 
 

最寄の駅まで歩いた千紗が、胸のポケットから定期を取り出して改札口を通る。
そして、ちょうどホームに滑り込んできた電車に近づくと、女性専用車両に入っていった。
この車両なら痴漢に合って最悪の事態を迎えるという事が無いと判断したからだ。
いや、女性専用車両には普段から乗っているのだが。
 

時間もまだ早いという事で比較的空いている。
千紗は車内を見回したあと、長椅子に座っている女性たちの間に腰を下ろした。
 

「この状態で20分間もいなければならないなんて……」
 

もしばれたらどう思われるだろう?
男だと、いや、女装している変態男として警察に突き出されるのだろうか。
そして学校にも行けなくなり、親にも見捨てられ――

そんな悲観的なことばかりが頭に浮かんでくる。
 

「もう……全く。富雄ったら何て事、考えるのよ……」
 

そう思った矢先――

何となく股間の窮屈さがなくなっているような気がした。
ムスコの首がパンティのゴムで締め付けられている感じがしない。
 

「え……」
 

周りの女性に気づかれないよう、そっと紺のスカートの上から股間を触ってみる。
すると、やはりそこには富雄のムスコは無かった。
 

「な、ない……よ、よかったぁ……」
 

ホッとした千紗は、一度立ち上がって椅子に座りなおした。
しっくりしなかった股間が、今は元通りになっている。
 

「あれ?でも、無くなったということは富雄が私の身体から出て行ったって事……だよね……」
 

考えて見ればそういう事だ。
という事は……富雄は透明人間状態でこの女性専用車内にいる事になる。
 

「うそ……まさか……」
 

ハッとして周りにいる女性たちを見る。
小さい子供を連れた母親や私服を着た女子大生らしき人、それに千紗と同じように制服を着た女子高生もいる。
千紗が見る限り、ムスコが生えてきて慌てふためいているような女性は今のところ確認できなかった。
 

『3番線の列車が発車します。扉にご注意ください』
 

駅内にアナウンスが流れたあと、列車のドアが閉まる。
そしてガタンという振動の後、ゆっくりと電車が動き始めた。
 
 
 「やだ、何処に行ったのよ、富雄……」



 

富雄と千紗の悪巧み1(いきなり生えてきたアレ)……おわり
 
 
 
 

あとがき

toshi9さん、サイト1周年おめでとうございます。
そして遅ればせながら、15万ヒットおめでとうございます。
ゼリージュースもtoshi9さんのおかげで何とか運営でき、とても助かっています。
これからもご協力のほど、よろしくお願いします〜。
そしてお互いに頑張りましょうね〜!

という訳で、記念というか何というか、作品を寄稿させていただきました。
これは当サイトで書いていた「いきなり生えてきたアレ」の続編に当る作品です。

書こうと思ってなかなか書けなかったのですが久しぶり?に書き始めました。
今回は薬を開発した高校生「富雄」と、ガールフレンドの「千紗」が協力して
千紗が所属する女子バレーボール部3年生の小阪先輩にギャフンと言わせてやろうというストーリーです。
富雄は男子バレーボール部じゃないので合宿に行く事が出来ません。
そこで千紗の身体に入り込んで合宿についていくのですが、その前に電車の話を入れようかと思いまして(^^
女子専用車両で千紗の身体から抜け出た富雄。
一体何処に行ったのでしょうね(^^

それでは最後まで読んで下さった皆様、ありがとうございました。
Tiraでした。
 
 
 
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