畳の上に座布団を敷き、座禅を組んで手をひざの上に置いて、精神を集中させている中年男性が一人。
それをかったるそうに見ている若い女性。
中年男性は目を瞑って、息を押し殺しながら黙々と願いつづけてる。

・・・身体から抜け出ろ、身体から抜け出ろ・・・

でも、願いもむなしくこの日も魂が身体から抜け出る事はなかってん。
座禅を崩してため息をついた中年男性。

由梨「今日もあかへんなあ。」

ごん蔵「ほんまや。何となく分かってきたんやけどな。」

由梨「ほんまにぃ?」

ごん蔵「ほんまやって。頭の芯がジーンてくる感じがすんねん。
        もうちょっとで抜け出せるかもしれんで。」

由梨「うちは無理やと思うけどなあ。」

ごん蔵「なに言うとうねん。わしはあきらめへんでっ!」
 
 
 
 

おっさん修行中や!(前編)
 
 
 
 
 

馬場ごん蔵、42歳。結婚暦なし。顔はごっついけど性格はいたってやさしいねん。
モテへんけど性格重視の女性からは結構人気があるでっ。
いろんな事してきとうから話はおもろいし、聞き上手やからいらん事まで話してまう女性が多々。
おっさん臭いとこもあるけど、それがまたええらしい。

そんなごん蔵の彼女?が「中東 由梨」、19歳。
短大生の由梨は、連れと飲み屋で話しているとこで、ごん蔵に引っ掛けられて親しくなってん。
たまにごん蔵のアパートに遊びに来るようになった由梨は、今、ごん蔵がマイブームやゆうてひたすら
打ち込んどう幽体離脱の修行に付き合っとんねん。
ようこんなおっさんに付き合うもんや。
 

由梨「うち帰るわ。また今度来るからそんときにまた付きあったるわ。」

ごん蔵「おお、頼んだで。」

由梨は教科書の入ったかばんを持ってアパートから出てった。

ごん蔵「さ〜て、もうちょいガンバろかな。」

ごん蔵はまた座禅を組んで精神を集中させ始めてん・・・
 
 

・・・1週間後
 
 
 

ごん蔵「・・・・よ、よっしゃ!出来たでっ!」
 

目線がだいぶん上の方になってる感じがする。
下を見たら座禅して目を瞑ってる自分の姿が見えるっ。

ごん蔵「ええ感じや。元に戻ってみよ。」

ごん蔵は意識を集中させて自分の身体に魂を重ねてみてん。
そしたらごん蔵の身体がビクッと動いて目がパッチリとあいた。

ごん蔵「完璧やん、これ。」

何度も練習するごん蔵。
だいぶ集中力がついてきたから幽体離脱する時間も早くなったみたいやな。

由梨「どうや。出来たんか?」

ドアを開けて、今日も由梨が来た。

ごん蔵「喜んでぇな。成功したで!」

由梨「嘘やろ。」

ごん蔵「ほんまやって。今やったるからそこ座って見といて〜な。」

由梨「うん、ええよ。」

由梨はごん蔵の前に女すわりした。

ごん蔵「ええか、よう見とけよ。」

ごん蔵はそうゆうて、いっつもやってるように座布団の上で座禅を組み
精神を集中させてん。

そしたら、ごん蔵の身体からフッと魂が抜け出たんや。

ごん蔵「わっはっはっは!どうや由梨。完璧やろ。」

でも由梨は目の前にあるごん蔵の身体をじっと見てるだけやねん。
やっぱり魂は見えへんから由梨には分からへんみたいや。
ごん蔵はとりあえず自分の身体に戻る事にしてん。

ごん蔵「今の分かったか?」

由梨「ぜんぜん分からへんかったわ。」

ごん蔵「何でやねん。わしの魂が抜け出とったやろ。」

由梨「そやから全然見えんかったって。」

ごん蔵「嘘やん。ほしたらどうやったらわしが幽体離脱した事分かるねん。」

由梨「そしたらな、うちに乗り移ってみたらどうや?
      ようあるやん。幽霊が人に乗り移るって話。きっとうちの意識が
      無くなるやろから、そこのインスタントカメラでうちを撮ってぇな。
      それやったらごん蔵が幽体離脱したって分かるやん。」

ごん蔵「なるほど。おまえなかなか賢いなあ。いっぺんやってみるわ。」

そうゆってごん蔵は、また幽体離脱したんや。
ほんでそのあと由梨に近づいて、そっと由梨の身体に入り込んでみてん。

由梨の身体に悪寒が走ったんやけど、それがごん蔵が身体に入り込んだことやって
分からんかったみたいや。
それにごん蔵も、由梨の身体に入り込んだんはええけど、全然身体を動かす事が出来へんかってん。

しゃーないからごん蔵は由梨の身体から抜け出てもとの身体に戻ったんや。

ごん蔵「あかんわ。全然おまえの身体動かすこと出来へん。」

由梨「そうなん。なんか悪寒走ったけど、もしかしたらそのときごん蔵がうちの身体に入ったんやろか。」

ごん蔵「そうかもしれへん。そやけど、身体を動かされへんかったらしゃーないなあ。」

由梨「あれちゃうん。ほら、ごん蔵の精神が弱かったからちゃうかなあ。」

ごん蔵「わからんわ。もっと集中せなあかんねやろか。」

由梨「きっとそうやわ。頑張って修行してみーな。うまい事いくかもしれへんで。」

ごん蔵「そやけどめっちゃしんどいねんで。これ。」

由梨「そこまで出来たんやったらもうちょっとやん。もしうちの身体動かす事出来たら
      そんときは好きな事してええよ。」

ごん蔵「ほんまか!」

由梨「出来たらの話やん。だから頑張ってみー。」

ごん蔵「おお、わしなんかやる気出て来たで。」

由梨「スケベやなぁごん蔵は。うち今日はこれで帰るわ。」

由梨は笑いながら部屋を出てった。

ごん蔵「よっしゃ、もうちょっと頑張ってみよか。」

ごん蔵はもっと集中力を高めれるように修行を始めたんや・・・・
 
 
 
 

おっさん修行中や!(前編)・・・おわり
 
 
 
 
 

あとがき

大阪、そして私の出身地である神戸方面の方でないと、この作品を読むのは難しい、いや、無理でしょう(笑)。
方言を多用しました。
脱字だと思う方、違うんです。こういう話し方をするのです。
自分が話している言葉を書くのって、結構難しかったりします。
やっぱり普通に書いたほうがよかったかなあ・・・

だから、いつものように「標準語」の作品にしてくれ〜っという方がいらっしゃいましたら
メールを下さい。
翻訳?して別途アップする事にします。

それでは最後まで読んでくださった皆様、ありがとうございました。

Tiraより













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