PPZ-4086――

それは身体から魂を切り離す薬。
幽体離脱と言う現象を利用し、他人の身体に憑依する。
憑依した身体を思いのままに操る…
その薬を手にした忠雄は、好きな女性の身体へ憑依し、女性の快感を楽しむのだ。
 
 
 
 
 
 

必殺の薬「PPZ―4086(修学旅行にて)」…第4話
 
 
 
 
 

北海道に着いて初めての見学。
観光バスの中、黄色い制服を着たバスガイド『野原 晃恵(のはら あきえ)』に乗り移り、
携帯電話のバイブレーション機能を利用して彼女の身体で女性の快感を堪能した忠雄。
みんながいる手前、黄色い制服の中に隠れている彼女の身体を見る事は出来なかったが、
その綺麗な声やスリルを十分に楽しんだ忠雄は、他の生徒達と一緒に1日目の見学を終える事となる。
見学の際に、康司や他の生徒達に気付かれないよう、薬をポケットに忍ばせていたのだが
タイミングよく使える機会が無かったので渋々諦めた。
 

忠雄:「自分の身体の置き場には困るよ……」
 
 

そしてまたバスに乗り、今日宿泊するホテルに到着したのだ――
 
 

「自分のカバンを間違えるなよっ!」
 

先生がバスのそばで大きな声を出している。
忠雄は親友の康司と共に、バスの側面についている荷物の保管場所から自分のカバンを取り出すと
他の生徒達と一緒にホテルの中に入った。
やけに広くて明るいロビー。
床や柱に大理石をふんだんに使っているところを見ると、宿泊料も結構高そうだ。
高校生のくせにこんなところに泊まれるなんて……
 

康司:「すごく綺麗だよな。俺、こんなホテルに泊まるの初めてだよ」

忠雄:「僕だって初めてさ。高そうなホテルだよね」

康司:「部屋もきっと綺麗なんだろうな」

忠雄:「うん」
 

二人は他の生徒達と共にロビーの一角に集まった。
そして、先生のくどい話を聞いた後、夕食まではそれぞれ決められた部屋で過ごすことになった。
ホテル内は適当に見て回っても構わないらしい。
忠雄と康司は同じクラスの男子生徒二人と共に、エレベーターに乗り込む順番を待って
6階にある605号室に向かった。
康司が部屋のキーを預かっているので先頭を歩く。
 

康司:「なあ、どんな部屋だろうな?すごく綺麗んじゃないか?」

忠雄:「四人部屋だから結構狭かったりして」

「おい、ベッドが二つしかなかったらジャンケンして二人だけベッドを使うようにしようぜ。
 添い寝なんてゴメンだからさ」

康司:「そりゃいいな。よし、そうしようぜ!」
 

4人はワイワイと楽しそうにしゃべりながら部屋の前に到着すると、康司がドアノブにキーを差し込んだ。
カチャッというカギが開いた音がした後、少し重たいドアを開ける。
 

康司:「うわっ。こりゃすごいや」

忠雄:「へぇ〜。こんな感じなんだ」

「おい見ろよ。ベッドも四つあるぜ」

「ほんとだ。これなら一人ずつベッドで寝れるぜ。それにしても……すげぇフカフカだよ。俺んちのベッドと
 比べものにならないな」
 

結構広い洋室。
10畳ほどの広さで、目の前は一面のガラス張り。
そのガラス戸の向こうには別のホテルが見えるが、そのホテルの横には綺麗な町並みが見えていた。

部屋の両脇にはシングルベッドが2つずつ並んでおり、小さなテレビが1つ置いてある。
部屋の端には小さな冷蔵庫が申し訳無さそうに置かれていたが、もちろんその中には何も入っていない。

4人はそれぞれお気に入りの場所のベッドに倒れこむと、その上で嬉しそうにはしゃいでいた。
 

「うあぁ〜。もうこのまま寝ちまいたいよ」

康司:「お前、腹減ってないのか?」

「あ、減ってるわ。やっぱ後で寝るか」

康司:「おお。それよりさ、今からホテルの中を探検しようぜ」

「お、いいねぇ」

康司:「忠雄も来るだろ?」

忠雄:「行くよ。でもジャージに着替えないと」

「あ、そうだよな。邪魔くせ〜なぁ〜」
 

それぞれカバンの中から紺色のジャージを取り出し、おもむろに着替え始める。
早くホテル内を見てみたいから、みんな急いで着替えている。
 

康司:「よし、じゃあ行くか!」

忠雄:「うん。ねえ、初めに1階のロビーに行こうよ」

康司:「どうして?そこって通って来たところだろ」

忠雄:「土産コーナーがあったんだ。ちょっと見とこうよ」

康司:「そんなの後でもいいじゃないか」

忠雄:「先に見たいんだよ」

康司:「う〜。なあ、どうする?」
 

康司が他の二人に意見を求めると、二人とも別に『どっちでも――』という回答が帰ってきた。
 

康司:「しゃあなねえな。それじゃあロビーに行くか。でもすぐに別の場所に行くからな」

忠雄:「うん」
 

こうして4人はエレベーターに乗ると、1階のロビー横にある土産コーナーに向かった。
忠雄はキョロキョロと周りを見渡し、目ぼしい女性をチェックしている。
密かにジャージのポケットには「PPZ-4086」を忍ばせているのだ。
みんなで土産コーナーに入り、色々な食べ物やキーホルダーなどを眺める。
しかし忠雄は、ロビーにいるひとりのベルガールに視線を注いでいた。
赤いベレー帽に赤いジャケット。
衿元には黒いリボンをつけている。
そして、膝小僧が少し見えるくらいの黒いタイトスカートを穿き、白いストッキングに包まれた
二本の足の先には黒光りしている皮製の靴を履いていた。
そんなベルガールの制服姿が似合うその女性は、身長が160センチくらいだろうか?
きっと髪は長いのだろう。
黒くて艶のある長い髪を赤い帽子の中に束ねてしまっているようだ。
そして薄化粧で淡いピンクの口紅が清潔さを感じさせる。
パッチリとした瞳が印象的な「美人系お姉さん」だ。
歳は20代前半に見える。22、3歳くらいだろうか。

彼女はお客さんのカバンを両腕に抱えながら、先ほど忠雄達が乗ってきたエレベーターに案内
しているようだった。
笑顔を絶やさない彼女を見て、ポケットの薬をギュッと握り締める。
 

忠雄:「よし、あの人に決めた!」
 

忠雄はそう呟くと、彼女とお客さんが乗ったエレベーターが8階で止まったのを確認した後、
そのまま別のエレベーターに乗って同じ階へと移動した。
そして、8階にある男子トイレの個室に入るとすぐに様式便器に座り、ポケットに持っていた
「PPZ-4086」を一気に飲み干して深い眠りについたのだ――
 
 
 
 
 
 
 
 

必殺の薬「PPZ-4086(修学旅行にて)第4話」…おわり
 
 
 
 
 

あとがき
この話も久しぶりです(^^;
それにしては、み……短い(苦笑
次はベルガールの彼女に乗り移って楽しい事、しちゃいます。
ベルガールってホテルによって制服が大きく変わりますね。
インターネットで調べたのですが、その中で可愛らしいと思った制服をモデルに
書いてみました。
皆さんの頭の中にイメージが思い浮かべば良いのですが……

それでは最後まで読んで下さった皆様、ありがとうございました。
Tiraでした。
 
 
 
 
 
 
  inserted by FC2 system