月曜日6月22日 カンケイ(その2)


「とっとと歩けよ、ミシマさん待たせんな。俺も早くヤリタイんだから」
 勝手な事をほざく阿部に、凛太郎はドンと肩を突かれた。痛い、とか阿部に対する怒りとか、そんな事より、一歩歩く度に湧き出してくる粘液が気になって仕方が無い。じんじんと身体が熱くなって、熱い吐息を何度も吐き出してしまう。頭もぼーっとしていた。なんだかナメクジみたいに粘液を滴らせながら歩いている気がしてしまい、何度も足元を見てしまっていた。
(ん、歩くだけで響いて……)
 放課後。凛太郎は阿部に引きずられるように作業棟へ来た。既に隣室では大きな音でドラムやベースの音が響いている。音がしている間は叫び声も聞こえない、土曜日誰かが言っていたのを、遥か昔の話を思い出したように、凛太郎の頭に響いていた。
「ミシマさん、連れてきましたよ。ほら、入れよ」
 阿部が愛想笑いを浮かべながら、暗い部屋の中に入っていく。凛太郎の腕を掴み、強引に引き入れていた。
「山口ぃ、今日もヤラセテくれんだよな。俺達たっぷり溜まってんだから」
 ヤラセテあげている訳ではない。無理やりヤラレテるだけだ。そんな違いも解らないのかと、思わず言いたかったけれど、彼らにはどうでも言い事なのだ。ただヤレればいいだけだから。
「阿部、ちゃんとローション使ってきたんか?」
 ミシマがへらへらと笑っている阿部に対して凄む。ミシマの暴力が怖いのか、阿部は笑顔を真顔に変えて返事をしていた。
「あ、はい。ちゃんと二時間目から仕込んでありますから。昼も確かめましたから。ドロドロですって」
「あ……」
 俯いて無反応な凛太郎お尻側から手を差し入れる。ショーツに滲み出ている愛液を指に塗してそれをミシマに見せ付ける。
 既に、二時間目の休み時間と昼休みに、ローションを塗られていた。昼休みなどは修一が去った後、昼御飯も食べずに体育館のトイレに連れ込まれ、凛太郎はそこでずっと阿部に弄られていた。イク事はなかったけれど、その寸前近くまで持ち上げられ、嬲り続けられたのだ。
「へぇ、そうか。どれ、俺もスケベな山口のま○こ触ってみっか」
 黙っているのをいい事に、ミシマがスカートに手を差し入れる。凛太郎の表情を伺うように正面から見据えながら。
「あっだめっ」
 ショーツを引き下ろすと、溜まった粘液がネットリとクロッチに滴ってきた。エロい事この上ない姿と、そこから立ち上る馥郁とした女の香りに、ミシマは口の端を上げる。
「ふ、んぅん」
 肉のボタンを収めている鞘をくりくりと押し込んでくる。ローションのせいで敏感になっている凛太郎は、それだけで身体を震わせていた。ぎゅっと目を瞑り快美感が過ぎるのを我慢する。
 凛太郎の反応に満足したのか、ミシマはその手を離していた。「はぁぁぁ……」とその場に崩れ落ち膝を着く凛太郎を目を細めて見つめる。
「いんじゃね? 俺も早くやりてーよ」
 奥からヨシノが声を掛けた。
 凛太郎が空ろな目で三人を見上げる。皆一様に股間を膨らませて、今か今かと待っている。まるで待てと言われた犬のように、涎を垂らしていそうだった。
「今日は阿部からだろ。早くしろよ。大原の奴ぁ、道場行ってるからいいけどな」
 三人とも、凛太郎を女の子とも、人とも思っていない。ただ柔らかく人の形をした、自分達の欲望をいつでも搾り取るだけの穴としか見ていなかった。
(あ、また、犯されるっ。やだよぉ)
 ミシマが品の欠片もない、笑っているのかよく解らない表情を作って阿部に促す。阿部は待ってましたとばかり凛太郎に圧し掛かっていった。膝まで下ろされていたショーツを足から抜き取ると、足首を持って広げてしまう。凛太郎も無意味だと解っていながら軽い抵抗はしていた。
 床に仰臥させられ、阿部が足の間に入ってくる。愛撫など全くなくズボンとパンツを下ろしていた。
「山口、今日は俺が最初だからな。嬉しいだろ、告白した相手とヤレて」
 言いながら、腰を前に突き出し、欲望に膨れ上がったペニスを、凛太郎のぐちゅぐちゅになった秘唇へと近づけていった。ぴとっと二人の性器がくっ付く。
「や、阿部君、僕の事好きなら止めてよ。お願いだから」
 ミシマに聞こえない声で、凛太郎が懇願する。レイプされてアソコが減らないなんて事はない。粘膜が擦れて痛くなるのは減っている証拠だ。それに精神だって疲弊するのだ。せめて一人でも少なくなれば身体と心の負担が軽くなる。しかしそれを聞き入れる阿部では無かった。
「はぁ? なに言ってるんだ、よ!」
「! やっは、ひぃん」
 グイッと一気に置くまで凛太郎に進入してくる阿部。その一撃に凛太郎は阿部が自分を突き破ってしまったような錯覚に陥っていた。都合三回、男の出入りを許し、今日はローションでずっとドロドロにされているけれど、そんな事で粘膜の炎症が治っている訳では無かった。ミチッとした肉の棒の感触は、再び凛太郎に男への嫌悪感を植えつけていた。
「おおっ、やっぱお前いいっ。すっげー気持ちいいっ。はああ……」
「やっ、あっ、ぃっ」
 奥まで行った阿部のペニスが、抜けるぎりぎりまで引き出され、そのまままた奥へと消えていく。その度に凛太郎は痛みに声を漏らしていた。阿部はそれを感じている声と勘違いしていた。
「ほら、山口。俺がお前の中にいんだぞ。ぎゅーっと締めてくれよ、ほらっほらっ」
 制服を脱がされていない凛太郎の身体を抱きしめながら、阿部が耳元で囁いてくる。その声に凛太郎はぞっとしていた。
(う、気持ち、悪っ、いぃ)
 眉根を寄せて、痛みを堪える凛太郎の姿に、阿部は性的に興奮度が増してきていた。凛太郎の表情を痛みでは無く、感じていると誤解していたから。凛太郎が受け入れている自分の分身で感じまくっている。そう思うと、早くもイキそうになってしまっていた。
「山口っ、すげっいいよ! もうイクっ」
「やっ、膣内(なか)でっ、やめっ、赤ちゃん、やだよぉ」
 犯されて、妊娠してしまうなんて、男でも女でも許容できるものではない。凛太郎はパニックになりながら阿部の身体を押し戻そうとしていた。すると、阿部の動きが緩やかになった。
「なんだよ。そんな簡単に出来るかって。大体土曜にさんざん中出ししただろ。今更言うなよ」
 半分呆れたように阿部が言うが、凛太郎は泣きながら哀願していた。
「お願いっ、危ない日だからっ、ほんとにっ、やめてよっ」
 生理終了から十五日程度が経っている。もう排卵日に入っている。今膣内(なか)で出されたら限りなくその可能性は高くなる。
「好きな男に妊娠させられるんだ、別にいいだろ」
 言うなり、阿部は猛然とラストスパートに入っていた。
「やだぁっ! 赤ちゃんっ欲しくないっ。お前のなんかいらないぃ」
 ぼろぼろと涙を流しながら阿部の肩を押し上げようとするが、体重を預けられている為に動かない。身体を動かしている内に、体内にいる阿部を締め付けてしまっていた。
 感極まった阿部が凛太郎にキスしようと、顔を近づけていった。その行動を凛太郎は寸前で察知する。
「やっだっ。キスっやだっ!」
 身体は許してもキスだけはなんて、逆かも知れない。しかし修一が触れた所で、穢れていないのは唇しか無かった。凛太郎はどうしても、キスだけはしたく無かった。
 付き込まれながら、凛太郎は阿部の顎を両手で押し戻す。と、阿部の身体がエビゾリのような滑稽な姿になっていた。
「見ろよ、あのカッコ。わらかしてくれるよな」
 傍で見ていたヨシノがミシマに言う。その言葉に阿部が過剰に反応していた。しかしその矛先は凛太郎だったけれど。
 ぴたっと阿部がその動きを止める。凛太郎は膣内(なか)でイかないでくれるのかと安堵していた。
「山口、どっちかにしろよ。キスしたら中出ししない。キスしないなら中出しだ。どっちがいい? 答えない時は中出しな」
 深々と固くいきり立ったペニスを凛太郎に突き刺しながら、二者択一を迫ってきた。修一だけの唇にキスされるのもイヤだし、かと言って妊娠なんてもっとイヤだ。しかし瞬時には答えられない。
「ごお、よん……」
「あっ、んっやあ」
 阿部がカウントを採りながら再び抽送を始めた。ゆっくりしたその動きに、思わず凛太郎の腰が戦慄いてしまい声を上げていた。
「さん、にぃ、いち、z」
「きすっ、する、んぅ、から……」
(ああ……修ちゃん、ごめん、もう、なくなっちゃったよ……)
 修一が触れた所も、触れていない所も、全て陵辱者に上書きされてしまう。そんな屈辱も妊娠への恐怖には勝てなかった。
「ようし。じゃ、お前から言ったんだから、お前からキスして来いよ」
 組み伏せられている凛太郎が上の阿部にキスするには、阿部の首に腕を回さないといけない。正に自分からという格好を凛太郎にさせたいのだ。凛太郎はゆるゆると出入りしているペニスの感触を感じながら、阿部の首に縋り付くようにした。
「……ん」
 目を瞑って息を留めて唇に触れるだけのキス。それに焦れたのか阿部は唇を離さないように自分も凛太郎の身体を抱き留め、激しく腰を動かし始めた。
「! んぅうっん」
 息を止めるのも限界がある。阿部の唇が凛太郎の唇に覆い被さり舌先で唇をこじ開けようと試みる。しかし凛太郎も抵抗して口を開く事は無かった。と、阿部は片腕だけで凛太郎を抱き締めると、右手を股間の方へ伸ばして行く。その先には包皮に包まれた愛欲の肉芽があった。そこを指先で刺激してやる。
「ふあっ。あ?! ん〜〜っ」
 ピンクの膨らみへの刺激で、凛太郎の口から声が漏れ出した。その機会を逃さず阿部が舌を差し入れてくる。れろれろと動き回る舌は、まるで軟体動物が口の中を這い回っているように感じた。
 大量の唾液を阿部が流し込んでくる。その間も腰の動きは徐々に速くなって、下半身からの快感を貪っていた。凛太郎は上の口も下の口も同時に蹂躙され、逃げ場がない。
(キス、やっぱりやだあ。男とキスなんて、うっ?)
 ぐぐっと阿部の肉槍が固くなった気がした。イキかかっているのではと思い、目蓋をを開いて阿部に目で問おうとした。目の前の阿部の目は、苦しそうな表情の中で、笑っている。その笑いが意味する所は……。
(うそ、中で出さないって)
「おおえいえっああぁっ! ああ?!」
 必死で声に出そうとするが、口を塞がれて言葉にならない。
 阿部の身体がびくびくと痙攣し、凛太郎が一番奥のところで何かが流れ込むのを感じたのは、懇願の言葉を言った時。そして絶望の吐息は殆ど間髪入れず、それと一緒に凛太郎の口から漏れていた。
 阿部を正面から睨みながら、凛太郎の大きな目からは止め処なく涙が溢れていた。阿部が唇を話すと、唾液が流れて凛太郎の頬を伝わって落ちていく。
「あ〜、すげぇ気持ち良かったぁ。やっぱ中出しですよね」
 ミシマの方を向き聞いている。ミシマも一言「そうだな」と言った。
「……しないって、言ったのに……だからキスしたのに」
 早く出て行けというように阿部から身を引き剥がそうとした。
 阿部はまだ萎んでいない肉杭をゆっくり動かしその放出感を楽しんでいる。そこで凛太郎のから変化が起こっていた。杭が出入りすると緩やかではあったけれど快感が身体にもたらされてきた。
(なんで、感じて?)
 阿部がペニスを抜こうとした時、凛太郎の意志に反してきゅっと締めてしまう。その締める感覚が阿部を有頂天にさせた。
「山口、お前くわえ込んで離したくないってか。ははっもう一発出してやろうか」
「ぅんっ」
 萎えかけたペニスをもう一度突っ込むと凛太郎が小さく喘ぎ声を上げてしまう。なぜ感じてしまったのか凛太郎は混乱してしまった。
(犯されてこんな風に感じるなんて)
「阿部ぇ、お前だけ楽しんでんじゃねーよ」
「す、すみません」
 ミシマが唸るような声を発すると阿部は直ぐに凛太郎の上からどく。ぬるっと肉杭が出ていくと、泡になった愛液と精液がトロリと流れ出していた。垂れ流れ出る粘液がお尻へ回っていく。その不快感に凛太郎はぞくっと震えていた。
 凛太郎が上体を起こすと入れ替わりにミシマがのし掛かってくる。
「山口ぃ、俺が感じさせてやるからなあ」
 ミシマの生理的に受け付けない顔を間近にして、凛太郎は腕でミシマを拒絶する。けれど、体重を預けられると、途端に身動きが出来なくなる。悔しさにまた涙が流れていた。ミシマがズボンもパンツも脱ぎ、くいっと亀頭だけを凛太郎の開ききった肉華へ埋めてくる。
「……もう、膣内(なか)では」
 震える声で告げるけれど、ミシマは自分の発言でそれを遮った。
「ほれ、大好きなち○ぽだぞ。好きなだけ喰わせてやっからなっ」
「ひっあ、やっ」
 ぐいぐいと抽送を繰り返し、奥までずっぷりと太い肉塊を凛太郎の中心へと潜らせて行く。その圧倒的な質感に凛太郎の身体は陶然としてしまった。きゅっとミシマを締め付けてしまう。
(かっ感じて、ないっ。違うっ感じてないっ)
 それがローションのもたらした快感であっても、凛太郎には許容できるモノではない。自分は犯されて陵辱されているのに、感じる筈がないのに。
 ぎゅっと唇を噛み締め、阿部が進入した時には少ししか感じていなかった快楽の波を耐えようとしていた。
「お前、感じてんだろ? な、正直に言ってみろよ」
 ミシマが凛太郎の反応を見ながら、相好を崩して尋ねてくる。
「ちっちがっ、感じってっあ、なっ、ああっやっいっ」
 浅いところを数回突くと、ぐっと子宮口近くまで肉塊を突く。そのままグリグリと先端で奥を嬲りながら、恥骨で凛太郎の快感を紡ぎだすボタンを刺激してくる。凛太郎はその刺激に思わず声を上げてしまった。
(いやだぁ、こんな風に感じたくない〜)
 ぬるぅっとミシマの太いそれが出て行くと、腰がぞくぞくしてしまう。感じたくないのに感じてしまう身体。修一とのエッチの時には殆どいなくなっていた男の部分が、凛太郎の心の奥から持ち上がってきた。
「山口ぃ、コレ見ろ」
 ミシマが凛太郎の顎を持って自分の正面を向かせる。短く早い呼吸を繰り返している凛太郎が、潤んだ目で見返す。キラっと光るミシマの首元に、安っぽい金のチェーンで繋がれた銀の犬がいた。
「あっ、かえ、ん、してっ」
 突きこまれる度に声が飛ぶ。凛太郎がミシマの首元に右手を伸ばし掴もうとするが、ミシマはそれを許さなかった。反対に手首を掴まれ床に押し付けられていた。
「お前、感じてないんだよな。じゃあよ、これから、俺がイクまで、一度も喘がなかったら、返してやってもいいぜ。どうよ」
 言いながらも、腰を浅く深く捻るように振っている。
 本当にミシマが約束を守るかと言えば、その可能性は1%にも満たないだろう。けれど、修一に買って貰った大事な銀の犬。今となっては凛太郎にとって唯一とも言える修一との繋がりなのだ。どうしても取り返したかった。
(喘がないって、声、出さなければ……その位なら)
 声を上げなければいいと思っていたし、出来るとも思っていた。蕩けるような快感にはまだ至っていないつもりだし、犯されていると思えばそんな事にはならないと思っていた。しかし凛太郎は見誤っていた。媚薬入りのローションは、着実に凛太郎の粘膜から吸収され、身体中を駆け巡っている。セックスで徐々に熱くなっている身体は大量の酸素を必要として、心臓の鼓動を早めていた。そして媚薬の成分を身体中に送り込んでいたのだ。
 普通では考えられない程敏感になり始めた凛太郎の身体。その兆候は既にあった。阿部がイッた後の快感。痛みがまだあるとは言え、そう感じてしまっている。そして今、ミシマに進入されていても、感じている。
 肉の出入りに翻弄されそうになりながら、凛太郎は一もにもなく頷いていた。そして自由になる左手で口元を押さえる。声が出ないように。
 その様子を横から見ていたヨシノが笑いながら言う。
「凛ちゃんてばかじゃねーか? 声出そうだって教えてるだろ、手で押さえてたら」
(声出ないようにしてるだけだっ、感じてない! 前もって、あっん!)
「!」
 ブラウスの下から不意にミシマの手が乳房を襲っていた。ブラジャーの上からだと言うのに、撫でられた瞬間、声が出そうになってしまった。
「ん〜? 今声出さなかったか?」
 阿部がわざとらしく、凛太郎の顔近くで囁いてくる。凛太郎は睨みつけながら首を振った。
「お前ら、手伝えよ」
「!!」
 ミシマが凛太郎の左腿の後ろに右腕を入れ、左腕で背中を抱える。ぐっと力を入れるとそのまま立ち上がっていた。
(うああっ、刺さっ、て、ひっ)
 右足のつま先が床に着くか着かないかの不安定な体勢は、ミシマの槍を凛太郎自身の体重で膣の奥深くにくわえ込ませてしまう。「ぐぅう」っと刺さるような感覚に、思わず凛太郎の手がミシマの袖を掴んで身体を上へと引き上げようとした。
 それに構わずミシマは背中に回していた左腕を、凛太郎の右腿の下に潜らせ、床から足を上げさせてしまう。「ずぶ」っと音がしたような錯覚が凛太郎を襲う。その圧倒的な質感が既に敏感になった凛太郎の神経を支配していった。
(あっあっアァ! ダッめっ、すご、い)
 喉からミシマの肉塊が競りあがってくるんじゃないかという感覚。そしてその刺激が、次第に甘美な魔力を携え、凛太郎の身体を溶かしていく。ミシマの袖から腕を離して、首へを腕を回していた。そうしなければ後頭部から床へ落ちそうだった。
「おおっ、すげぇ。ぴったり嵌ってんぞ。相性ばっちりだな。気持ちいいわぁ。こいつもいいって顔してるよなぁ」
 ヨシノと阿部に向かって、目配せをする。ヨシノが凛太郎の背後に回り、阿部は横へ移動していた。
「……ミシマのちん○がびっちり凛ちゃんのま○こに埋まってるぞ。気持ちいいだろ、なぁ?」
(ひゃっ、そこっさわっちゃ、だめっやだ!)
 ヨシノの指が愛液を溢れさせている結合部へ触れたかと思うと、そのヌルつく指先を会陰部へ、そして後ろの穴へと動かしていく。微妙なタッチは凛太郎に焦燥にも似た新たな悦楽を与えていた。阿部はブラウスを胸元まで上げてしまうと、グッとブラジャーを引き下げ、両の乳房を搾り出してしまう。柔らかな感触にくらくらしながら揉みしだき、くりくりと乳首を弄っていた。その間もごりごりと、最奥を先端で小刻みにノックされると、凛太郎は喉を反らし、迫り来る愉悦に身体を震わせていた。
「山口ぃ、ケツが好きだからって、そんなに締めんなよ。イっちまうだろ」
(おしり、すきじゃないっ。締めたから?……! はやく、はやくっ! イッてよっ、イッちゃえよっ)
 膣が締まったからミシマがイキそうになっている。凛太郎はその言葉をそう解釈した。だとすれば、力いっぱい締めれば、声を出す前にイク筈。快感に身体も心も捩れてきている。もしかすると次の瞬間にも、声が出てしまうかも知れない。そんな自分自身の状態を、凛太郎もやっと理解していた。だから早くイッて欲しいのだ。今すぐ。そうすれば、凛太郎が快感に咽ぶ前に銀の犬を返して貰える。ただソコでイクという事は、また膣内射精に及ぶという事に凛太郎の考えは回らなかった。
 凛太郎は蕩けてしまっているような下半身に力を入れて、身体を貫くミシマを締め上げる。ミシマをイかせる為だけに。しかし同時にそうする事で、凛太郎自身の快楽の振り子も大きく振れてしまった。
「うっほっ、すっげ締まる! こいつ本気にしてるわ。山口ぃ、俺がまだイクわけねーだろ」
 言うと、そのまま大きく腰を使ってくる。両手で凛太郎の身体を抱え上げながら、抜ける寸前まで引き出し、子宮口を叩くまで腰を凛太郎に密着させる。堪らない快感が凛太郎を包んでしまう。
(ひっやっん、どうしてっ? イかないのっ? あ、やっいい!)
「はっあ、ん……あ?!」
 三人の男に身体を弄ばれ、せめられ、感度の上がった身体は正直にその快楽に対しての反応を凛太郎の中枢神経へ知らせていた。そして、その信号に理性が耐え切れなかった。声が赤い唇から出てしまった。
「へへっ、やっぱこいつ好きモンだよな。ヤラれて喘いでんだからよ」
 いやらしい笑みをこぼしながら、凛太郎の顔を見据えるミシマに、凛太郎は上気した顔を真っ赤に染めた。その態度こそが感じている証拠になるにもかかわらず。
「ちっちがっ、うン、やっ、気持ち、ないっ! イキそうじゃ、ないっ」
 突かれる度に、凛太郎の快感ゲージが上昇していく。犯され、輪姦されているのに、快楽を享受してしまう身体。淫乱じゃないと言っても、誰も信用してくれないだろう。
「なんだよ、凛ちゃんイキそうなんだ。じゃ手伝わないとな」
「ひっ、そこっちがっ、やめっきたな、い!」
 ヨシノが凛太郎の背後に跪くと、剥き出しになったお尻の穴を「ベロリ」と舐め上げていた。そのまま舌先を尖らせ、皺の一つ一つを丁寧に舐めていく。背徳の感情と、未知の快楽に、凛太郎は嵐の中の小船のように大きく揺らされていた。
「やめ、もうっ。や、だめっああっ、んでっ? こんなのっイカないっイキたくないっやだっ、イカセないでっ! はっ、あぅっ、あっああっン――――!!」
 半狂乱で首を振り、下半身から湧き上がってくる堪えようもない欲求に凛太郎は必死で抗った。しかし一度「喘がない」という自らの決まり事を破ってしまった事で、押し寄せた喜悦の波に飲み込まれてしまった。
 これまで以上に強くミシマを締め上げ、襞の一枚一枚がざわざわと蠢く。顔も見たくない筈のミシマに力いっぱいしがみ付き、足でも身体を締め上げていた。それが終わると、「びくっびくっ」と身体とその粘膜が痙攣を始める。誰の目にも、凛太郎が絶頂に達した事が解った。
 ぴくぴくと小さく痙攣し自分のペニスを締め付ける感触に酔いしれながら、ミシマが凛太郎の耳元で言う。
「……感じてねーだの、イキたくねーだの騒いでもよ、お前は俺で感じて、イッタんだよ。わかるだろ? お前はよ、俺達にこうされたかったんだろ?、諸積じゃなくて。普通ローション使ってもイカねぇぞ。なぁ?」
 周囲を見回し同意を募ると、ヨシノも阿部もニヤつきながら頷いている。実際にはこれまでミシマの毒牙にかかった女達は、このローションでヨガり狂っていた。しかしそれを凛太郎に伝える必要は無い。言葉で嬲って、凛太郎の抵抗する意志を砕ければいいのだから。凛太郎は荒い息遣いのまま絶頂の余韻の中で、その声を苦々しく聞いていた。
「違う、そんな事無い。絶対ちが、あ、や、待っ」
 イッた直後で敏感な身体を三人の男が蹂躙していく。揉み、撫で、そして突く。その嵐に凛太郎の性感は再び高みへと持ち上げられていった。
「俺がイクまで何回イクだろな、このスケベなま○こは」
 卑猥な言葉を口にしながら、荒々しく太い肉竿を突きこんでいく。痛みは既に快楽の下へ順位を下げている。柔らかくなった膣肉がミシマの肉塊を包み込んで離さない。
 大層な事を言っていたミシマだったが、目の前の美少女が頬を朱に染め、必死に何かを耐えようとするそのエロティックな表情と、柔らかく扱き上げ精を搾り取ろうとする襞穴に陶然とし、爆発を何とか踏ん張っている状態だった。
「やだっもうっ、あっはぅ、んやあっ」
(やだっ、イクっ、ひどいっこんなのっ、いっちゃう、修ちゃん、僕ちがっ、あっあああ!)
 堰を切ったように訪れる、思考を根こそぎ持っていってしまう快美感。ミシマにイかさせるなんてイヤだといくら頭で思っても、身体が正反対の動きを見せていた。首に回した腕できつくしがみ付く。
 しかしそれはミシマも同じだった。強烈な絞りが下半身を襲いゾクっと臀部に電気が走る。
「おお、いいっ、イクぞ、出すぞっ、山口ぃっ、たっぷり味わえよお!」
 ミシマがいきなりぶちゅっと凛太郎の口を吸い、ヤニ臭い舌で凛太郎の可憐な唇を割っていく。イク寸前で口を半開きにしていた凛太郎は容易にミシマを受け入れてしまった。暴れまくる舌とペニスに、凛太郎はまた達してしまう。
(あっや、また、いくうぅ……)
 ひくひくと収縮と弛緩を繰り返す凛太郎の身体。口内を犯す舌を噛まないように、唇を離す。途端に大きな声が漏れだした。
「あ―っ、いくっやだっぃっく、んー!」
 その声に合わせたかのように、ぶるっとミシマの身体が震え、「びゅくびゅく」と陵辱の証を凛太郎の膣内に流し込んでいく。何度も何度も痙攣しながら、大量の白濁した粘液を、狭い肉坑に叩き込んでいた。
 凛太郎とミシマの見せた痴態に、他の二人は喉を鳴らして見ていた。勿論股間を勃起させて。
「っはーっ、こいつ、やっぱサイコーだわ。必死にしがみ付くとこなんて俺に惚れてるよなぁ」
 その言葉にぼーっとしていた凛太郎が、はっとして首に回した手を離した。しかし下から貫かれている身体は離れる事は出来ない。性器を介して繋がったままだ。
 凛太郎はミシマと視線を合わせず下を向いた。妊娠が怖いとか、犯された悲しさとかそんな事より、今の凛太郎は修一以外の男を受け入れイッてしまった自分が許せなかった。自分の情け無さと無力さにまた涙が頬を伝わっていった。

 結局三人に開放されたのは、全員が三回ずつ凛太郎を使ってからだった。外は既に暗くなって、隣でがなり立てていた音楽も無くなっていた。
 ぽっかりと開ききったソコから流し込まれた三人分の精液が漏れ出していた。乱暴に扱われた割にはローションが効いているのか痛みは無かった。その代わり、狂わされた。大声で嬌声を上げ、陵辱者にしがみ付き、涙を流しながらイキまくった。
 ミシマの言葉が凛太郎を苛む。「俺達にこうされたかった」。そんな事は断じてない。そう思っている。しかし果たしてそうなのか、自信が持てないのも事実だった。大事な人が心の中にいるのに、違う男に犯されてイク、そんな事があっていい筈がないと、凛太郎は考えていた。百パーセント、ローションのせいだけれど、イッてしまったことと修一への罪悪感でそのせいには出来ないでいた。
 土曜日と同じように一人残された凛太郎は、自分の後始末をしていた。どの位の量の精液が自分に流し込まされたのか、ティッシュペーパーで拭いながら呆然とそれを眺めていた。自分の身体の中から後から後から途切れ区ことなく排出される白い粘液。
(こんな事されてたら、いつか、その内……)
 誰とも解らない赤ちゃんが出来る。もしそうなったらどう対処していいのか解らない。誰にも言えないのだ。その孤独と恐怖に怯えながら、凛太郎はまた泣き出していた。そうしても解決する筈も無いのに……。

 * * * * * * * * *

 ミシマ達三人は、三日と空けずに凛太郎を犯し続けていた。修一の他は親しい友人もいない凛太郎は、格好の餌食でしかない。ローションを使い、ヨガる凛太郎を見ては嘲笑し、嬲る。次第に凛太郎は表情を失っていった。輝くような笑顔も、もう無くなっていた。
 教室では誰にも声を掛けられない。修一を呼び出して阿部との仲を見せ付けた、そういう評価が凛太郎について回っていたから、殆ど無視されているようなものだった。唯一、時々菊地が声を掛ける程度だった。
(昔に戻っちゃったな……)
 アトピーの肌を揶揄されたり、汚いモノのように見られ避けられていたあの頃。その凛太郎のトラウマとも言うべき時代と同じような状況になっていた。
 孤独は、人の心を荒ませていく。「もう、どうでもいい」なんて言いたい位だし、学校に来たくないとも思っていた。しかし凛太郎が今だ学校へ登校し続け、精神を保たせていたのは壁を隔てた隣のクラスに修一がいるからだ。どんな形でも近くにいるのだから、それで良かった。穢れた自分を見せる事は出来ないけれど、近くにいるとなれば元気が出てくるのだ。
 週明けの六月二十九日から期末テストだったけれど、結果は中間よりも散々だった。いつも放課後の図書室で自習している凛太郎だったから、暇さえあれば暗い部屋へ呼び出されては勉強する時間が無かった。家に帰り勉強しようとしても、やる気も出てこない。授業はと言えば、ローションを塗られているから集中力を欠いた状態だった。
 そしてもう一つ。重大な事が凛太郎の身に起こった事で、勉強などする心の余裕が無かった事も、関係していた。


(「日曜日7月5日 陰陽の判定」へ)


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